若い頃・デニーズ時代 79

市役所、警察署、保健所と回ってきたが、西宮市は官公庁が駅前エリアに集中しているので、短時間で用事を済ませることができた。
興味深かったのは市役所。入り口を抜けロビーに入ると、正面の壁にはずらりと日本酒の樽が展示してあり、ここが日本一の酒処【灘酒】の本拠地であることがよく分かった。私は大の酒好きなので、剣菱、菊正宗と聞いただけで涎が出てきてしまった。
次に出向いたのは警察署。担当の方から飲食店に於ける最近の暴力団がらみの事件について色々と情報を聞いていると、突然ドアが開き、二人のごッつい男が並んで入ってきた。見ると手錠で繋がれているではないか。
一瞬考える。「どっちが刑事?」。御両人、それだけ人相が極めて悪い。互いに無表情のまま事務所を通り抜けると、入口とは反対側にあるドアを開き入っていった。
気が付けば、ついつい見入っていた。

「お店の東隣に土建屋があるんですがね、そこの経営者は山健組系の暴力団なんですわ」

そしてこのストレートな説明で目線が戻る。
ここの警官、我々をビビらせて楽しんでいるのか?!

「隣ですか、、、そうですか、、、なんか注意することあります?」

DMが神妙な顔つきで尋ねると、

「特にないですが、何かあったら連絡ください」

でた、でたでた。警察官の決まり文句。ブスッとやられたら連絡できないだろうに。
何かが起こらないようにするのが警察の仕事。しかし彼らが動き出すのはいつだって何かがあってからなのだ。
一応名刺交換をして西宮警察署を後にしたが、頼りにできるかどうかは怪しいところ。

「あれっ、お久しぶり!」
「今回はあんまり長くいられませんけど、よろしくお願いします」

店に戻ると本部トレーニングの三角冴子女史が新人MDのトレーニングにかかりっきりだった。
立川錦町オープンの際でもずいぶんとお世話になり感謝々々である。
UM時代の彼女は色々と悩みも多かったようだが、本部付のトレーニングへと部署が移ってからは生き生きとした仕事ぶりを発揮している。
西宮中前田での仕事は急遽決まったとのこと。

「みんな覚えがいいんで、あと3~4日も頑張れば何とかやれそうね」

黒縁の眼鏡をかけた高校生と思しき小柄なMDが真剣な眼差しでテーブルのワックスがけを行っている。

「いつもありがとうございます。三角さんが来てくれれば鬼に金棒ですよ」
「そんなことないけど、辻井さんが頑張ってるから安心よ」
「え? 辻井ってUMITの?」
「そう。彼、教え方がとても上手なの」
「へ~」
「というか、彼ってなかなかの二枚目じゃない、だから女の子達からの受けが良くて、みんな素直に従っているっていう感じかな」
「彼、独身ですよ、あぶないなぁ~」

確かに辻井はハンサムである。スレンダーで背も高く、一見クールな印象を受けるが、笑うと八重歯が見えて180度イメージが変わる。大概の女性はこの笑顔にやられてしまうだろう。
一方、もう一人の相棒である宗川UMITはその正反対ともいえるキャラ。小太りで背が低く、ちょっとブルドックのような厳めしい風貌を持つ。辻井より半年間だが先輩になるので、なにかと彼に対して、あれやっとけ、これ先にかたずけろと、顎で使う傾向があるが、輪を大事にし、誰に対しても分け隔てない対応をするところは信頼感ありだ。
その宗川は食器備品等々の棚卸中。オープニングリストとの照らし合わせである。

「どうだい、進んでるかい」
「単純作業なんで疲れましたよ」
「谷岡と一緒に一服すれば」

LCの谷岡は汗だくになってグリル板磨きをやっている。彼は堺市出身なので、KHの指導等々には大阪弁がガンガン飛び交う。やや神経質な面もあるが、明るくて面倒見がいいから、LCには向いているかもしれない。

「そんならお言葉に甘えて一服もらいます」
「ふみちゃん、一緒に一服しよ」

ふみちゃんとは女性KHの中村史子。20代後半の独身だ。ややがっしりとした体つきで、如何にも体力がありそう。動きは機敏で仕事の覚えも良く、谷岡は既に頼りにしているようだ。
先日も彼が既存店である池田店に連れて行って、ランチの実戦を体験させたのだが、3名体制でのフライヤー前なら八割方こなせたという。
因みにオープンの際のヘルプメンバーは、その殆どが池田店と神戸住吉店から来てもらえるとのことだ。

新年を迎え、開店日が目前と迫ったある日。関西事務所の鈴木さんから電話があり、以前約束していた神戸巡りへ行こうと誘われた。開店したら当分息抜きはできないので即お願いした。

「おはようございます」

ノック音で振り返ると、鈴木さんが事務所の前に立っているではないか。
さっそく連れだってバックから出ると、眼の前にはIYグループの社用車が停車していた。珍しげに見ていると、

「やっぱり軽はいいですよ。小回り抜群だから」

乗り込むと鈴木さんの肩に触れそうである。山手幹線へ出て西へ進んだ。

「まずは高級住宅街の芦屋でも見学しましょうか」
「芦屋は東京でも知名度ありますよ」
「一昨年かな、芦屋の六麓荘ってところで、お嬢様誘拐事件があって、マスコミが町中の様子を全国ネットで報道したから知ってる人も多いんじゃないですかね」
「しかし六麓荘って聞くと、傾いたアパートを連想しますね」
「いやいや、アパートじゃなくて地名です。しかも金持ち揃いの芦屋の中でもぴか一のエリアで、ダイエーの中内社長も住んでるとか」

六甲山へ向かって広がる丘陵地帯が芦屋の高級住宅街なのだが、最近では海側の一部エリアにも高級化の波が押し寄せているという。聞くところによれば、丘陵地帯へ住もうと思ってもただの金持ちでは町会からNGが出るらしい。由緒と名声がなければ許可が下りないというから驚いてしまう。

「あそこにスーパーありますよね、あれ、いかりスーパーって言って、芦屋の奥様の御用達ですよ」

なるほど、建物の壁に錨のモニュメントが張り付けてある。
駐車場を見渡すと、ずらりと高級車のベンツやBMWが並んでいる。私の地元にある三浦屋もこんな感じだ。

「さすがにいい車ばかりですね」
「でもね、BMWでも3シリーズだと、芦屋のカローラって呼ばれちゃうらしいですよ」

坂を上がっていくと、なるほど唸るばかり。どの家も敷地は広く、デザイン料だけでも相当するだろうと思われる豪華で洒落た邸宅ばかりなのだ。家の向きによっては、テラスや庭から大阪湾が一望できる素晴らしいロケーションを持っている。

「街中見て、何か気が付きませんか」

鈴木さんがちょっとにやつきながら問いてきた。

「なんだろう、ゴージャスなところだとは思うけど、、、」
「電柱がないんですよ、ここは」

なるほど。だから整然とした感じがするのか、

「町の美観維持のために、電線は全て地下ケーブルにしたんです」

ところどころに見かける小さく細い電柱は電話線とのこと。ここの住人はそこまでして芦屋の威厳と品格を保っているのだ。まさに浮世とはかけ離れた別世界である。
ところがそこから数分走ってまたまたびっくり。

「ここが松下幸之助の家です」
「いや~~広いですね。芦屋の邸宅も凄いけど、ここは別格だ」
「その立派な門も、勝手口ですよ」

壁沿いを走るだけでその内側は見えないが、敷地の広さは優に1,000坪を超えるだろう。
東京に住んでいても、わざわざ田園調布や成城へ見学に出かけたことはないので、ゴージャスさの比較はできないが、関西のお金持ちの志向がちょっぴり分かったような気がした。

この後は、阪急、JR、阪神の関係式を実地検分した。
実は、西宮地区はJR中心の東京とはやや異なる街作りが見られる。
東京だったら鉄道の中心は当然JR。そして巨大都市は必ずJRの主要駅を中心に発展する。これに対し西宮地区はまさに正反対の様相を呈していたのだ。
引っ越してきた当初などは、JR西宮の駅前を車で2度も通ったのに、駅舎の存在に全く気がつかなかった。何故かJRとはとても思えないほど寂れていて、北を走る阪急、そして南を走る阪神と比較すると悲しくなるほど。恐らく関東と関西では町の生い立ちが根本的に異なるのだろう。

若い頃・デニーズ時代 78

荷造りもなんとか形にして、あとは引っ越し屋に託すのみ。
すっかり空っぽになった部屋を眺めていると、ちょっぴり切なくなった。無理もない。初の一人住まいだったし、短い期間だったが、沼津ではたくさんの良い思い出が作れたのだから。
地元東京の武蔵野市以外で、ずっと住んでもいいかなと一時でも思ったのはここだけだ。そんな気持ちになるのは子供の頃に過ごした4年間の体験と、何より漂う空気感が妙に肌に合うからだと思う。
遥か西の彼方まで続く千本浜と千本松原。賑やかな沼津港と大河・狩野川の流れ。雄大な富士山と伊豆半島の遠景。干物の香りに潮騒。そして出会えた多くの温かい人々。
何もかにも心に残る。

身の回り品だけをセリカXXに積み込み、私と麻美は沼津を後にした。

「どうなるかね」
「頑張るしかないさ」

故郷を離れ、未知の土地での生活を考えれば至極当たり前のことだが、やはり心なし麻美も元気がない。

東名高速は順調に流れた。西宮の新居までは沼津から大凡400km。休憩をしっかり取っても6時間あれば辿り着けるだろう。
名古屋を通過し、道はやがて名神高速へ。少々疲れも出てきたので、養老SAで休憩することにした。車を降りて周囲を見回すと、やはり関東系のナンバーはぐっと少なくなり、遠い地へ近付きつつあることを実感する。

「あれ、どこも屋根が黒いね」

そろそろ京都というあたりまで来た時だ。麻美の何気ないひとことに、左方へ目を走らせると、なるほど、見渡す限り殆どの建物が黒っぽい瓦屋根になっている。古都へ近づきつつあることが実感できる一瞬だ。西宮から京都は近いので、修学旅行以来となる旅を楽しめれば最高だ。

「この地図、しっかり見てて」
「わかった」

長かった高速道路も終わりに近づいてきた。インターを降りてからマンションまでの道順は何度も地図を見て確認していたが、なにせ未知の土地だから不安はある。
その新居、実はどの様な交通手段を使っても非常に便利なところに位置していた。
もうすぐ降りる西宮ICからだと距離にして3km、10分はかからない。電車だったら徒歩2分で阪神・武庫川駅がある。大阪空港を使うとなれば171号線を15km走れば空港駐車場に入れられる。

「とにかく国道2号線の北側なんだよね」

すぐ近くだとは分かっているが、住宅街に入ると道は急に狭くなり、目印となるような商店等々は殆ど見当たらない。

「あっ、左の先に公園が見えた」
「それだよ、それ。だぶんマンションはその突き当り右だ」

新居のすぐ近くに小さな公園があるのを地図で確認していた。
大家さんによれば、引っ越し荷物の搬入は既に終わっているとのことで、到着したらすぐに開梱してセットできるとのこと。但、手に入れなければならないのが家電。炊飯器と電子レンジ、それにアイロンは結婚のお祝いでいただいたものがあるが、冷蔵庫と洗濯機はすぐに必要だ。これも大家さんに相談すると、近所の家電販売店「ミドリ電化」を教えてくれた。

「これ片付けたらミドリ電化へ行こう。その後で夕飯だな」
「神戸屋でも行ってみる」
「いいね」

ミドリ電化は新しい職場となるデニーズ西宮中前田のすぐ近くだった。かなり大型の店舗で殆どの家電製品はここで手に入れることができそうだ。

「このくらいの大きさがあってもいいよね」

麻美が選んだ冷蔵庫は、背が高く冷凍室が大きい薄いグリーンのサンヨー製。

「家族が増えるんだからいいんじゃないの」

ずいぶんと先の話になるが、実はこの冷蔵庫、なんと30年間も使うことになったのだ。恐るべき耐久である。

神戸屋レストランはデニーズから北へ1km弱のところにあり、おまけにすかいらーくも近くに発見。こうしてみると今度の店は激戦区の真っ只中なのかもしれない。気を引き締めてかからないとしっぺ返しを食らいそうだ。

「すごい盛況ね」
「パンのレストランだけあって、なんとなく品のあるお客さんが多いな」

初めて入った神戸屋レストランは、御三家のどれとも異なるハイソな雰囲気に溢れ、これがそのまま神戸の印象に繋がりそうだ。それにしても平日のディナーだが、ほぼ満席である。
お代わりがいくらでもできるパンは、さすがに看板品。いろいろな種類を試食したがどれも頷ける味。栄喜堂のディナーロールも美味しいが、ここのパンはより嗜好性の高いもので、店のカラーが鮮明に出ている。

「パンが美味しいからついついいっぱい食べちゃったけど、これじゃ肝心の料理が入らなくなるね」
「俺も同じだよ」

おすすめメニューとのことで注文したビーフシチュー。さすがにワンランク上の味わいがある。しかもパンと一緒にいただけば、ソースの一滴も残さずに完食できるからいい。スプーンでカシャカシャやるよりよっぽどお上品。
それにしても、久しぶりの満腹である。

長距離に及ぶ引っ越し、セッティンク゛、買い物と、久々にぐったりとした我々は、早々にベッドへもぐりこみ、慣れない部屋にも関わらず、爆睡できたことは言うまでもない。
明日からは当面クンロク(9:00~18:00)で入り、先ずはDMと一緒に警察と保健所への挨拶周りだ。

若い頃・デニーズ時代 77

関西事務所は吹田市にある江坂駅から歩いてすぐの雑居ビルに入っていた。
ドアを開き足を踏み入れると、私と同年代と思しき男性が笑顔で迎えてくれた。鈴木さんという営業管理の方で、こじんまりした部屋にいるのは彼一人だけだった。事務所を開設したのはつい最近だろうか、開けていない段ボール箱が部屋の隅に2~3個並んでいるし、扉が半分ほど開いたスチール棚の中は空っぽだ。

3人でテーブルを囲み、開店スケジュール表を基に確認作業を行った。
最初に目が付いたのはメンバーリスト。相棒となるマネージャー2名は共にUMITで「宗川」と「辻井」。リードクックは“使える”と評判の高い「谷岡」という男。春本DMの「この3人だったら絶対に文句は出ない」との力強い口調に、何だか気持ちが楽になってきた。
アルバイトの募集も全体的に順調のようだ。但、平日のモーニング~ランチのMDがなかなか集まらないとのことだが、時間的にはまだ余裕があるので、その辺は今後に期待したい。
そして既に展開中のクローバー作戦(人海戦術により、最商圏内の一般住宅、職域を訪問して、デニーズ新店オープンを知らしめること)からは、興味深い事実が浮かび上がっていた。
尋ね歩くと、殆どの方がデニーズレストランを知らないと言う。西宮近辺でファミリーレストランと言ったら、一に“神戸屋レストラン”、そして“ロイヤルホスト”、“すかいらーく”らしい。

「デニーズ? ディズニーランドちゃいまんの?」

こんな反応が返ってきたのも一度だけではない。しかし関西は初進出だから、至極当たり前の話でもある。他社に追いつけ追い越せと、我々がこれから地道に頑張り続ければ、少しづつでも必ず知名度は上がってくる筈だ。

一通りの説明と質疑応答の後は、鈴木さんも交えての夕食となった。

「じゃ、カーニバルプラザへ行きましょうか」

このカーニバルプラザとやら、大阪ではちょいと有名らしく、非常にトレンディーな場所とのこと。事務所からは目と鼻の先にあり、実際に徒歩で5分もかからなかった。
到着して辺りを見回すと、大きな公園の中にレストランを中心としたその他アクティビティーが点在していて、東京でも見たことのない形態であり、確かに新鮮味はある。
春本DMは何度か利用したことがあるのだろう、慣れた感じで我々を案内してくれた。

「木代は江坂から電車で帰ってもらうから、ビール飲んでいいぜ。そうそう鈴木さんもやってくださいよ」
「じゃ、木代さん、お言葉に甘えましょうよ」
「ました~~♪」

話題は仕事半分、プライベート半分。なんだかんだ盛り上がった。

「鈴木さん、寮の方はどうなってます」

春本DMは、ビールが飲めない代わりにひたすら肉を頬張っている。

「ちょっと家賃が高かったけど、阪神西宮駅近くに3LDKのマンションを見つけました。リビングなんか15畳もありますよ」
「そりゃ豪華ですね」
「神戸住吉で一人、木代んとこが二人入る予定だ」

準備は確実に進行していた。宗川は既に引っ越しも終わり、昨日からクローバー作戦にも参加しているとのこと。辻川も新居の契約は完了しているようで、私と同じく残すところは引っ越しのみ。彼らは独身だから、その辺は身軽にちゃちゃっとやっつけられる。
明日沼津へ戻ってからは忙しくなりそうだ。一人で住んでいた頃は冷蔵庫すらなく、布団にちゃぶ台、着替えが少々ってなものだったが、所帯を持てば当然それは二人分以上になっていた。スケジュールも迫っているので、休みは朝から動いて一日でまとめる必要がある。

「それにしてもさ、中前田のオーナーさんは、なんだか凄そうな人だよ」
「どうしてですか」

春本さんが意味深な表情で話し始めた。
店舗の地鎮祭に立ち会った最中の出来事なのだが、気が付くと2台の黒塗りのベンツが近づいてきて、明らかにその筋とわかる男達5人が車から降りてきた。

「誰に許可とったん!!」

突然の出来事に春本さん並びに参加者は右往左往。ところがひとり動じないオーナーさんは、輩のリーダーと思しき男に歩み寄ると、ひとことふたこと何かを話し掛けた。すると摩訶不思議、何もなかったように男たちは立ち去ったそうだ。
一呼吸おいてから、春本さんがオーナーさんに何を言ったのか聞いてみると、

「仕事、やったんですわ」

興味をくすぐる一言。想像が膨れ上がった。
もうひとつ。実はオーナーさん、地鎮祭に“ひとり”では来なかった。オーナーさんは自らベンツを運転してきたが、そのあとからピタッと寄り添うようにグレーのアウディーがついてきていた。乗っていたのはひとりの男。
髪をきれいに後ろへ撫でつけ、薄い色の入った眼鏡をかけ、びしっとした黒のスーツを纏い、車を運転している時と同様に、降りてからも絶えずオーナーさんと同間隔を保ち続けていたのだ。

「あれさ、誰が見たって用心棒だよな」
「そんな感じですね」
「オーナーさんも結構怪しい人だったりして」

会話は他人ごとのように面白おかしく進んでいたが、その内容故に、どうしても高田馬場事件を思い出してしまう。
嫌な記憶だ。暴力団と聞くだけで虫唾が走り、今回も緊張感は避けられない。況して関西は本場っぽいイメージがあるから尚更だ。
開店準備の一環として西宮警察署へは挨拶に行くが、警察があまり頼りにならないことは高田馬場で痛いほどわかっていた。

「木代さん。引っ越しが終わったら、地域を少しでも知ってもらえるように、西宮、神戸界隈を半日くらい車で案内しますね」

酔いが回ったのか、頬に赤みが増してきた鈴木さんである。

「それはありがたいです。色々とすみません」
「関西、ガッチリやりましょう!」

さっ、来週からだ!!