赤ぼっこ

JR青梅線・青梅駅

 四月十九日(金)。関東は早朝から広範囲で快晴との天気予報が出たので、先週に引き続き山歩きを楽しんできた。
 行き先は“赤ぼっこ”。名称が面白ので、以前から気になっていたのだ。ちなみに名称の由来は、関東大震災の際、このあたりの山々のいたるところで大崩落があり、赤土がむき出しになったため、その名がついたと言われている。標高は409mと低山の部類ではあるが、スタートのJR青梅駅からゴールであるJR宮ノ平駅までの総距離は9km弱ほどあり、ルートの殆どが青梅市と日の出町の境界線に沿う“長淵山ハイキングコース”にあたるので、十分な山深さが期待できた。ちょうど昨年のGWに、多摩川の北側に広がる“青梅丘陵ハイキングコース”をフルに辿ってみて、ハイキングコースとは言え、けっこうな山歩きになったことが頭に残っていたのだ。

 青梅駅から秋川街道を十五分ほど下っていくと右手に鬱蒼とした森が現れ、間もなくすると長淵天祖神社の鳥居が目に入る。ここが登山口である。いきなり百五十段を超える石段が待ちかまえ、右膝を庇いつつ一段々々ゆっくりと上がっていく。社殿の右わきからは本格的な山道となり、一歩足を踏み入れると街の雑踏はきれいにシャットアウト。東屋を過ぎるとミヤマツツジがいたるところに開花していて、新緑の淡い緑と相俟り、単調になりがちな山道に色を添えてくれた。
 歩き始めて三十分、年配男性がカメラを構え、木々へ向かって何やら撮影中だ。


「こんにちは。何かいるんですか?」
「野鳥をね」
 固有名は失念したが、野鳥仲間から珍しい鳥の目撃情報が入ったので来てみたとのこと。つられて上方へ視線を向けたが、埋め尽くした枝葉の中から小さな鳥を見つけるのは容易でない。

 旧二ツ塚峠を折れ、馬引沢峠に到着。あと一息で赤ぼっこ。それにしてもこのハイキングコース、人の気配がほとんど感じられない。本日出会った人は先ほどのバードウォッチャーただ一人である。

 小さいながらも繰り返しアップダウンが巡ってくるのがしんどく思え始めたころ、赤ぼっこの道標が目に入る。右へ折れると、いたいたハイカーが。年配男性二名、若い男性三名の五名で全員単独。各々休憩中だ。ベンチが一つ空いていたが、遮蔽物がなく強風が吹き荒れていたので、ここは撮影のみとし、先へと駒を進めた。それにしても眼下には青梅の市街が新緑に萌える山々に囲まれている様子がよく見え、赤ぼっこが人気のスポットと言われるのは頷ける。とにかく広々とした眺めに圧倒される景勝ポイントなのだ。
 山地図によると、これに続き<多摩川と青梅市街の眺望がすばらしい>とのコメントが添えられる“天狗岩”がある。
 天狗岩の道標からは一旦下って、その先にある岩場を越えると、なるほどここも市街地方面を見下ろせる岩の先端に出る。確かに眺めはいいが、赤ぼっこと同方向なので新鮮味はない。座って休憩できそうだったので、ここで昼食とした。

 相変わらず右膝はいまいちの状態。上りも下りも負担がかからないよう意識する必要がある。不用意に脚を運ぶと痛みが走り、気が抜けない。

 愛宕山への道標以降は下山路となり、民家が見えてくると間もなく吉野街道へ出た。ここからゴールのJR宮ノ平駅までは舗装路歩きになる。途中、和田橋から多摩川を見下ろすと、いつも以上に澄んだ川の流れが山歩きの疲れを癒してくれた。

総歩行距離:8.8Km
所要時間:四時間二十分


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