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よろこぶリチャード・なぎさ橋珈琲逗子店

 リチャードを散歩へ連れて行こうと玄関を出ると、時々右手にあるカーポートへ突き進むことがある。なぜなら、彼は車に乗るのが好きだから。

「逗子行ったのいつだったっけ」
「あれね、もう五年前だよ」
 逗子海岸沿いにある“なぎさ橋珈琲逗子店”には、海沿いにたくさんのテラス席があり、ペット同伴もOK。食事の後は逗子海岸で散歩と、犬連れにはとても都合のいいレストランだ。

 第三京浜、横新、横横と、二時間のドライブを経て車から降りると、リチャードはリードをグングン引っ張って歩き出した。この場所を覚えているのかいないのか?! いずれにしても尻尾フリフリで嬉しそうだ。生活圏を遠く離れ、周囲に漂う匂いがいつもと違うから興奮しているのかもしれない。これは人間だって同じ。たとえ絶景が見られなくても、美味しいものにありつけなくても、普段と異なる空気を感じられれば、それだけで旅は楽しい。

 時計を見れば午前十時。まだモーニングタイムである。
「それじゃ、フレンチトーストモーニングを二つ」
 私も女房もフレンチトーストが大好物。バターをこれでもかと塗りたくり、メープルを容赦なくかける。口の中は至福の甘さが広がり、なんとも言えない幸福感に包まれる。それだけではない。そんな口の中に苦みの効いたブレンドコーヒーを流し込めば、饅頭と緑茶の深い関係が理解できるというもの。
 リチャードがフレンチトーストの小さなかけらを美味しそうに食べている。犬だってわかるのだ。

 空は晴れ渡り、水平線には夏を思わせるような雲をバックに江の島が浮かぶ。実に気持ちのいい眺めだ。リチャードは砂浜の散歩が好きなようで、休むことなく歩き続ける。気温は20℃を若干下回るくらいだが、陽光が強く、シャツ一枚でも汗をかく。
「りーちゃん、前に来た時よりよろこんでるみたいだね」
「また来よう」

バイク屋時代49 不協和音

 HD調布には営業マンが三名いる。いつも元気はつらつ新木くん、クールでシャイな浅見くん、そして紅一点の会田さん。皆年齢も近く、仲がいい。
 朝からあまり電話もならず、来客もない。開店前のルーティンである、店内外の清掃とバイク磨きを終えると、各自コーヒーを自前のマグカップへ注ぎ、商談カウンターへと集まる。
「新木くんさ、昨日はメカとやりあったの?」
 浅見くんが心配そうに聞いている。
「やりあったりはしないけど、いつものことだよ、なんかさ、気分悪いんだよね」
 何気に耳に届いたやりとりが気になった。
「小笠原さんってさ、確かに気難しくて細かくて苦手なタイプだけど、いちおうお客さんじゃない。それを適当にあしらえとか、できないものはできないってはっきり言えよとかさ、それってどうなのかな…」
「そうゆうの、うちって多いよな」

ドゥカティ Diavel
2011年発売  1200cc 水冷L型ツイン 最高出力 112馬力 (日本仕様)

 883Rに乗る小笠原さんは、恰幅のいい大柄な還暦ライダー。見た目とは裏腹にとても神経質で細かい人である。何かにつけ小言が始まるが、いつも相手になるのは、彼の担当営業である新木くんだった。
「金払ってんだからさ、取引先にはもっと厳しく対応しなきゃダメだよぉ」
 愛車のカスタムペイントを行うことになり、前後フェンダーとタンクを取り外して、塗装業者へ依頼したのだが、戻ってきたパーツを確認すると、リアフェンダーにねじれのような歪みが生じていると言い張るのだ。しかも塗装前は絶対になかったと断言、憤慨している。
「いやぁ~、小笠原さん、そうはおっしゃっても、塗装屋でフェンダーをひん曲げることなんてありえないですよ」
「じゃあ、なんで歪んでるのよ!」
 かなり険悪なムードになってきた。ここは立場上、乗り込まなければならない。
「小笠原さん、リアフェンダーですけど、部品単体で観察すると、残念ながら新品でも完全左右対称なんてものはないんですよ」
「なに言ってんの、そんなことないだろぉー」
「そんなことあるんです。ちなみに、国産メーカーのフェンダーだったらそんなことないと思いますが」
 つまりだ、ハーレーの品質基準からいえば、リアフェンダーは少しぐらい歪があっても、シートレールに装着すればまっすぐになるから、それでよしなのだ。米国と日本とでは、物作りに対する考え方に大きな相違があるのは事実。
「じゃ、装着して見せてくれよ」
「メカの手が空いてないので、今すぐは無理ですが、明日以降でしたらお見せできます」
 不満たらたらの様相で引き上げた小笠原さんであったが、後日来店した際に、かっこよくカスタムペイントが仕上がった愛車を目の当たりにして、ぶつぶつ言いながらも、なんとか納得してくれた。

2011年モデル ハーレーダビッドソン XR1200X

 今回の一件は、俺がしゃしゃり出るまでもなく、担当したメカが同じように説明すれば、お客さんの納得度も高いだろうし、営業マンとの信頼の絆も構築できるはず。それをなぜかメカと営業はそれぞれ相手方に問題を丸投げする傾向が見られるのだ。
 ふと思うことがあり、この一件を直接社長に報告した。
「おさまってよかったじゃない。小笠原さん、細かすぎだよ」
 予想していた返答である。
「結果はそうなりましたけど、担当メカが自らお客さんの声を聞こうという意気込みがあれば、浅見くんもこれほど悩むこともなかったと思いますよ。フェンダーの歪の件だって、営業やってまだ数カ月の浅見くんじゃわからないし、一人で解決できるものじゃない」
「だから部長がフォローしてくれたんじゃないの?」
「社長、伺いますが、うちのメカは、苦手なお客さんには直接タッチせず、ただ整備作業だけをして、なにかが起これば営業マンへ丸投げしてますが、それでいいんですか?!」
「全部が全部そうじゃないだろ」
 自分を推してくれる親しいお客さんなら、作業中でも手を休めてべらべらとお喋りを続けるのに、苦手意識のあるお客さんとなると、すべて営業マンに任せてしまう現況。入社十年越えのメカに対して、浅見くんレベルの営業マンが文句を言えるはずもない。俺が思うに、最も根の深い問題は、この状況を社長や店長は知っているのに、なんの指導もアドバイスも行ってないことなのだ。
 大崎社長は以前から言っている。
「うちはスタッフの自主性を重んじる」と。
 しかし実際には単なる放任であるのに、それを「自主性」と言い換えているだけである。

2011年モデル ハーレーダビッドソン FLTRU Road Glide Ultra

 大崎社長は営業のプロだ。若い頃は東京日産でコミッション営業をやっていて、トップ売上げを何度も果たした凄腕である。笑顔を絶やさない商談は非常に巧みであり、お客さんは社長との会話が進むほどに、購入後のバイクライフを胸の内に膨らませ、気がつけばサインしているのだ。
「ありがとうございます!」
 はたから見ていて凄いと感じることはこれだけではない。こうしてギャルソンメンバーとなったお客さんをとことん大事にする。店に遊びに来ればホストに徹し、回を増せば会話の内容もバイク談義からプライベートなことにまで発展していく。だから社長のお客さんのリピート率はダントツに高い。営業マンが商品に大きな付加価値をつけて売る最良の例と言っていい。
 さて、一匹狼ならば抜群の成果を上げる大崎社長だが、実は彼、組織の中に組み入れられて仕事をした経験がほとんどない。そのせいだろう、組織の在り方、教育、指示伝達、信賞必罰等々へ対する社長独自の考え方を聞いたことがない。恐らくだが、持ってないのだ。
 この影響であろうか、全店において組織のタガが緩み始め、調布、東村山、そして沖縄は、それぞれ独自なカラーを持って独り歩きをし始めていた。なにかがおかしいと大崎社長が感じ始めたころには、多くのスタッフが不満や疑問を持つようになり、最悪の結末である離職へと進んでいった。痛手だったのは、優秀な営業マン達が現況に鑑みて先を読み、このままいてもメリットなしと判断、次から次へとモト・ギャルソンを去っていったのだ。残ったのは歳がいった家族持ち。辞めても転職がおぼつかない面々である。
 ちなみに過去二年間のうちに、調布の瀬古くん、三波くんが去り、実はこの先一年で、新木くん、浅見くんの二人も辞めてしまったのだ。彼らがHD調布へもたらした売上げは大きく、その貢献度は計り知れない。さらにHD東村山の営業マン橋澤くんも時を同じくして退職し、広告代理店への再就職が決まった。
 こんな状況だから、売上も徐々に厳しいものとなり、財政的な体面を保つため、俺の首も風前の灯火となっていたのだ。

体調不良 その5

 待ち焦がれた十一月七日。ついに最終診断が言い渡された。
「血液検査の結果からみると、ほぼ正常です」
 おお、よかった。深刻な病気が見つかったらどうしようかと、実は蚤の心臓が悲鳴を上げていたのだ。
「晩酌の蓄積ではないでしょうか」
 そうくると思ったので、新たな資料を持参していた。熱が出る前日に行った健康診断の結果である。
「先生、これ見てください。肝臓の数値はすべて正常です」
 資料を手に取り、しげしげと目を走らせている。
「なるほど、そうすると一過性のものだったんですね。何某かのウィルスが入って、肝臓が働いたんでしょう。しかしこれからはお酒を控えめにして、かならず週二日の休肝日を取ってください」
 とりあえず生涯断酒の危機は去ったわけだ。なんと幸せなことか。
「慢性の症状があるかも調べましたが、こっちも大丈夫ですね」
 “検査詳細情報”と記した見慣れない表の説明が始まった。
 まずアルコールの関与が疑われるLD、AST、ALT、総ピルビリン、γGDPであるが、γGDPがまだ若干高いのを除いて、ほかは異常なしとのこと。今回は94で、ドクターKでの検査では170以上もあったから、下降傾向と言っていいのかもしれない。ちなみに上限値は64。当分の間不摂生には注意しなければ。
 その他を上げると、甲状腺の異常が関与するFT4は0.88で、上限値は1.48。肝細胞がんを疑うPIVKA-Ⅱは13.3。上限値は40。そして自己免疫性肝疾患も調べたがこれも白であった。
「エコーの結果も問題ありませんでしたが、若干脂肪肝気味なので、やはり飲酒には注意を払った方がいいでしょう」
「肝に銘じます。ひとまず安心しました」
 やはり五十年間にも及ぶ途切れのない晩酌は、体に相当なダメージを与えていたのだ。なにも考えず、ただ習慣に任せて飲み続けたつけが回ってきたのだ。

 一か月+αも続いた微熱騒動はこうして幕を閉じた。

真鶴周遊ウォーキングコース

 突然、海を見たくなった。
 潮騒、海鳥、磯の香…
 沼津育ちにとっては、体に染みついた望郷の要素。やはりたまに海辺に立たないと、なにか物足りなさを感じ、心の潤いが薄れていくような気がしてくる。

 真鶴半島は前々から気になっていた。自宅からやや遠いが、カメラを提げてハイキングするにはもってこいのロケーションに思えたからだ。半島と称しても、規模からいえばちょっと大きな岬。そしてwebサイトで調べると、“真鶴周遊ウォーキングコース”なるものを見つけ、読み進めると、散策をしながらのスナップにはちょうどよさそうなのだ。

 十一月四日(火)。真鶴駅までは、まず三鷹から中央線で東京へ。そこから上野東京ラインの熱海行へ乗り換えれば、一時間半ほどで到着する。途中、電車の車窓からは相模湾が見渡せ、それだけで心が躍った。やっぱり海はいい。

 駅前を走るR135を横断。まずは荒井城址公園を目指す。
 住宅街の中を網の目のように伸びる道はどこも坂がきつい。公園へは上り坂が続き、気温はそれほど高くないのに、背中に汗をかき始めたのでウィンドブレーカーを脱いだ。セーターだけになると、網目を通る風が心地いい。
 誰もいない静かな公園には一部紅葉も見られたが、春の桜が有名だと、園内整備を行っていた高齢の男性が教えてくれた。彼が乗ってきた軽トラを見ると、どうやらシルバー人材センターの方らしい。

 公園からはしばらく下りが続き、そのうちにバス通りへ出た。住宅の合間からは所々で相模湾が見渡せ、誠に羨ましい。ふと西宮に住んでいた頃の芦屋を思い出した。六甲山裾野の斜面には高級住宅が立ち並び、どこの家からも大阪湾を見下ろせ、夕方になると神戸から大阪へ広がる夜景が加わり、それはそれはすばらしい眺めなのだ。

 二つの美術館を過ぎ、間もなくして前方に交差点が見えた。すると左手のちょっとした森の中から四~五名の年配者たちが現れた。皆さんそろって双眼鏡を持っている。バードウォッチングだろう。これまで単純な舗装路ばかりだったので、彼らが出てきた森の中へと入ってみると、よく整備された登山道ってな感じだ。最初は急な上りで、その後だらだらと下っていくと、前方にちょっと変わった小屋が目に入った。近くまで来ると、なるほど、野鳥の観察小屋である。さきほどの方たちが利用していたのだろう。

 再び周回路に出る。右手岬方面と案内板が出ていたので、向かっていくと正面に休憩施設である“ケープ真鶴”が見えた。ここはパスして、左脇の遊歩道へ入り、海岸へと向かう急な階段を降りていく。この階段、間違いなく帰りは厳しいものになるだろう。
 途中から三ツ石が見え、大海原が広がる。風もそれほどなく、日差しが強いので暑いくらいだ。遠く右の岩場では磯釣りに勤しむ人たちが見える。今は引き潮なのだろう、三ツ石まで歩いて行けそうだ。
「こんにちは、いい天気ですね」
「ほんとですね、汗かいちゃいました」
 私と同年代と思しき男性が声をかけてきた。笑顔の絶えない優しそうな人だが、二言三言話すと、待ってましたとばかりに、マシンガンお喋りが始まった。
「ここへはよく来るんですか?」
「以前は登山が好きで、たいがいなところは登りましたよ。アルプスは制覇したし、八甲田山もよかったな~、でも歳取っちゃったからね。あっ、ここですか? 六~七回は来たかな、駅からね、時計回りで歩いたもんですよ、でもこれが最後かな~」
「お住まいはお近くです? 私は東京から来ました」
「東京じゃないですよ。相模原です」
「いやいや、東京は私…」
「ああ、ちょっとだけど東京にも住んでたな。タクシーの運ちゃんをやってた頃はよかった。バブルでね、銀座なんて客がザクザクですよ。ぼくの知り合いで個人タクシーやってたやつなんて、年収1000万ですよ。休む暇もないほど次から次に客がね~、東芝で半導体もやってました。リーダーでね、はは、懐かしいな。その頃にマンション買ったんですよ。今じゃ隣にタワマン建っちゃって、億ですよ億。相模原で一番高い建物ですね」
「へぇ~~」
「でも、だめだな。帰りはバスかな。そこの公園でおにぎり食べてます、年金暮らしだから」
「そうですか、それじゃ」
「カメラやるんですね、下でも年配夫婦がパシャパシャ撮ってましたよ、あはは、どうもどうも、ありがとうございました」
 世の中、いろんな人がいる。

 ゴロゴロ岩の海岸に出ると、視界が広がり開放感抜群である。さっきの男性のおにぎりが連想したのか、何枚か撮るうちに腹が減ってきた。時計を見るとちょうどお昼を過ぎたところだ。
 帰りのルートは東海岸へ出て、大昔スクーバダイビングで潜った琴ヶ浜を通る。案の定、ロードサイドの飲食店は軒並み海鮮である。ただ今日は刺身っていう気分じゃなかったので、スルーしてこのまま進み、駅前に出ればラーメン屋でもあるのではとピッチを上げた。

 最後の坂を上り、大きな右カーブを曲がりきると真鶴駅である。R135との交差点右角にピザ屋がある。窓から店内を覗くと、午後一時を回っていたせいか、それほど客は入ってない。ドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
「一人だけど」
「カウンターへどうぞ」
 がたいのいい顎鬚の男性がマスターなのだろうか。もう一人年配の女性もいる。もしかしたら親子かもしれない。
「おすすめは?」
「干物を使ってる、この“あじとうずわのマリナーラ”と“さばみりんとリコッタチーズ”でハーフ&ハーフなんていかがですか」
「じゃ、それで」
「お飲み物は?」
「ジンジャエール」
 しかし干物のピザとは珍しい。地場の食材を利用したわけだ。もともとアンチョビのピザは大好物なので楽しみである。

真鶴ピザ食堂KENNY

 ジンジャエールを半分ほど飲み終えるころ、焼き立てが目の前に置かれた。なんといっても香りがいい。ずばり干物の網焼きである。ピザそのものの食感もよく、とてもおいしくいただけた。それにアップダウンを伴う10km強の道のりを経て、もう腹ペコはピークに達していたのだ。それと25cmのピザをストレスなく平らげたのも、断酒のおかげがあるのかもしれない。

かつや・女房とランチ

かつやの“2個たまカツ丼”

 いまだ決着を見ない“微熱騒動”。あおりを受けて今年の秋はインドア生活を余儀なくされている。秋のベストシーズンに一度も山へ入ってないのは恐らく初めて。もっともこの頃では奥多摩でも熊被害が出ているようなので、いい機会だと解釈し、少しの間控えようと思っている。とは言え、大谷翔平の野球中継と読書ばかりではストレスがたまる。友人を誘って昼呑みができれば一番いいのだが、十一月七日の検査結果を確認するまではアルコールご法度である。
 アルコールと言えば、十月五日から完全に断っているので、そろそろ一か月近くになる。これだけ長く断酒をするのは、飲み始めた高校二年生の頃以来だ。

 アルコールはやはり害があるのかもしれない。体の深部まで染み渡ったウィスキーや日本酒が徐々に抜け始めると、確かな変化が現れる。
 わかりやすいところでは、胃腸の調子が上向いた。特に昼食時と夕飯時にはこれまでにない空腹感を覚え、胃がキュルキュルと音を立てて催促する。もちろん食すればこれまで以上に美味くいただける。睡眠の質も上がったように思う。毎晩ぐっすりと眠れ、夢も殆ど思い出せないほどだ。

 肝臓の数値の悪さが一時的なものであれば、再びアルコールを楽しむ生活に戻りたいが、毎日の晩酌は慎み、飲酒量も厚労省が発表した「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を厳守し、楽しいひと時を長く続けられるよう肝に銘じたい。

生活習慣病のリスクを高める飲酒量より

「あ~~、腹減った」
 すると、女房がスマホを見ながらつぶやいた、
「かつや、行こうよ」 
 かつやは昼前からウェイティングが続くが、ここのいいところは回転が早くてすぐに席が空くこと。
「はい、二名様、テーブル席へどうぞ」
 早速メニューを広げると、
「おっ、これいいね、“2個たまカツ丼”」
「あたしはヒレカツ丼。でもパパ、朝からこれで卵三個目だよ」
「いいじゃん、べつに三個ぐらい」
 かつやも丸亀製麺同様、メニューの開発を怠らない。そんなこともリピーターの多さにつながっているのだ。
「おまたせしました」
 なるほど、カツが見えないくらい卵がのっている。しかもつゆだくだ。カツ丼でも親子丼でも、つゆだくの方が好みなのだ。
 ん~~、おいしくいただけた。ごちそうさまでした。