会陰ヘルニア・その後

10月8日(水)午後。ロックが無事我が家へ戻ってきた。
痛々しい手術痕を見ると、大きな苦痛に耐えてきたことが容易に想像でき、胸が痛む。
しかし翌朝の排便時、するするっと何の抵抗もなく形の良いウンチが出てきたときには、ほっとするやら嬉しいやら。
快便できれば飯はうまい。これは犬も人間も同じこと。
下っ腹がパンパンになって四六時中残便感に苛まれたら、食欲など出る筈もない。
久々に見たロックの豪快な食いっぷりは、快調になった何よりの証だ。

下記は、手術にかかった全ての医療費の合計である。

診療項目(内容)単価数量金額
再診5001500
入院(5㎏以下)3,000721,000
静脈・皮下・筋肉注射7002215,400
静脈カテーテル留置(血管確保)1,50011,500
入院時点滴9,00019,000
全身麻酔37,000137,000
手術料(両面会陰ヘルニア整復)120,0001120,000
材料費44,000144,000
血液一般検査・CBC1,50023,000
血液生化学検査500147,000
血液電解質検査50021,000
CRP検査1,00022,000
内服薬1,99511,995
263,395
税その他21,071
合計284,466

胃カメラ 武蔵野陽和会病院

Print10月9日(木)9時。人生二度目となる胃の内視鏡検査を行った。
初めての検査は2007年の4月だったから、早いもので、あれから既に7年が経っていることになる。
検査は今回も市内にある武蔵野陽和会病院でお世話になった。いつも変らないスムーズな対応と、先生方の高い技術のおかげで、呆気にとられるほどスムーズに終了。
陽和会の先生方が突出して技術が高いとなれば話は別だが、<胃カメラ=苦しい>という一般論は、そろそろ考え直す頃かもしれない。我が国の医療技術は日々進化しているのだ。

「これ飲んで下さい」

ドクターが小さな紙コップをさしだした。
検査の段取りは先回とほぼ同じだが、麻酔薬の入ったアイスキャンディーを舐める前に、胃内粘液の溶解除去をおこなう薬(プロナーゼMS、ガスコンドロップ)を飲むことになったようだ。これで胃の内壁がクリアに観察できるらしい。
私だけかもしれないが、この薬、飲むとなぜかボーッとしてきて気持ちが落ち着く。

数分後、アイスキャンディーを舐める。
先回より麻酔の効きが圧倒的に良く、舐め終わった頃には唾を飲むにも抵抗を感じた。
麻酔が確実に効いていることが実感され、更に気分が落ち着いてきた。やはり二度目となると大まかな流れが分かっているので気分的には楽である。
アイスキャンディーの中身はキシロカインゼリーとキシロカインビスカスだ。

「木代さん、入って下さい」

お呼びがかかった。
処置室に入ると7年前の記憶が蘇ってきて、やや緊張が走る。
先ほど紙コップをさしだしたドクターは、どうやら助手の方らしく、実際に行なうのは右脇のディスクに座っている先生で、ベッドに横になるとすぐ傍に来て色々な説明をし始めた。
ネームバッチを拝見すると“黒田先生”とある。陽和会のホームページを見た時、内視鏡室のスタッフ写真に載っていた外科医長だ。これは何とも心強い。

「注射しますね、ちょっとチクッとします」

ドルミカム注射液2.0mL。鎮静剤である。
先回が2.5mLだからか、体が熱くなってこない。しかし頭は充分ボーッとしてきた。
この精神状態ならば、“矢でも鉄砲でも持ってこい”でいけそうだ。

「少々苦いですが、麻酔薬を喉へスプレーします」

最後の麻酔薬はキシロカインポンプスプレー。
これが実に強力な効き目を発揮する。
言ったとおり、喉の奥へ強い苦味が走った。

「前掛けを着けますので、唾は全部口から吐き出して下さい」

麻酔は順調に効き出した。既に唾は飲み込めないほどに喉回りが麻痺してきている。

「苦しくなったら溜息をつくように、ハ~ッと息を吐いて下さい」

マウスピースがきた。さあ、内視鏡の挿入である。
そう思ってモニターを見上げると、なんと既に食道内壁が映し出されている。さすが外科医長、慣れたもんだ。

「このポリープは完全な良性ですね」

良かった。生検が必要ですなんて言われたら目の前真っ暗だ。

「特に問題ではないですが、噴門がちょっと緩いですかね」

この頃の内視鏡は、進行方向の後ろ側もちゃんと見渡すことができるのだ。
しかし“緩み”は気になるところ。これも加齢のせいなのだろうか。次回来院した時に詳しく聞いてみようと思う。

「はい、終了です。お疲れさまでした」

お見事。
この鮮やかな流れなら、定期的に行なって胃の健康に万全を期すことに抵抗感はない。
立ち上がろうとすると、鎮静剤が効いていて足元が怪しい。
休憩室で暫く横になってから帰宅することにしよう。

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会陰ヘルニア

rock切れのいいブラックタンが自慢のミニチュアダックス〝ロック〟。
今月14歳の誕生日を迎える我が家の息子だ。
寂しがり屋の甘えん坊だが、元気だけは溢れんばかり。この歳になるまで1~2度の怪我はあったものの、病気らしい病気には罹ったことがない。
そのロックが今大ピンチに堕ちいている。
数ヶ月前にかかりつけの獣医から指摘された“会陰ヘルニア”。それが最近になって急速に悪化してきたのだ。
この会陰ヘルニアという病気は非常に厄介なもので、根治するには手術しかなく、放っておけば排便排尿困難となってしまう。
ダックスやコーギーに屡々見られる病状で、歳を重ね、お尻回りの筋肉が弱ってくると、細くなった筋肉と筋肉の間に隙間ができるようになり、そこへ大腸や膀胱がはみ出てしまうのだ。(hernia)
あるべき場所ではないから、腸や尿道は蛇行してしまい、排出する際に大きな抵抗を生んでしまう。
この病気の原因は今でも特定できていないそうだが、雄の老犬、特に去勢を行なっていない場合に顕著で、うちのロックはずばりこれに当てはまる。
どうやら筋肉の隙間は老化だけではなく、男性ホルモンの作用も影響しているようだ。よって手術は腸や膀胱を元の位置に戻し、筋肉の隙間にメッシュを縫いつけて二度とはみ出さないようにしてから、去勢も同時に行なうという大変な作業になる。

10月1日(水)、手術決行。
ロックがいつもお世話になっているのは【井の頭通り動物病院】の鈴木先生だ。日頃からとても分かり易い治療説明をいただけ、安心感は絶大だ。
手術は設備の整った都内の病院へ移動して行なわれ、執刀は鈴木先生並びに応援の先生とのこと。
手術は午後11:30に無事終了。
女房のスマホに“覚醒しました”とメールが飛び込んできた。

10月3日(金)、午後。
井の頭通り動物病院へ戻ってきたロックの様子を見に出かけた。
鈴木先生の開口一番、

「けっこう酷い状態でした」

隙間から飛び出した腸はとぐろを巻き、まともに便が通過できる状態ではなかったそうだ。
ロックも既に高齢犬。今回の手術は体力的に最後のチャンスだったかもしれない。
この後順調に回復していけば、来週半ばに退院できるとのことだが、生気のない表情と前足に刺さっている点滴を見れば、心底気の毒に思われ、一抹の不安は拭えない。
一日でも早くビンビンに尻尾を振る姿を見たいものだ。

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