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デニーズOld Boy’s ピッチ、はやっ!!

 三日間で1,230kmを走り、近江八幡の水郷、そして伊根の舟屋では撮影に奮起。古希の身にはさすがに堪えた。あれから一週間以上たつが、疲労は拭えず、腰に痛みも出てくる始末で、体調万全とは言い難い状況だ。
 六月下旬から七月にかけては、四国の剣山へ登ろうと計画している。今回の経験を踏まえると、車よりも公共交通を使った方が無難なのではと、ついつい弱気になる。ただ、登山口まで行くには車が断然便利だし、かさばる登山靴、トレポ等々の山道具一式は持っていかねばならず、車の積載性は捨てがたい。しかし徳島までは自宅から約690km。下北半島より近いとは言え、どんなものだろう。

 四月十五日(水)。いつものデニーズOBが集まった。立川北口の海坊主へ到着すると、すでに盛り上がっている。
「今回は飲み放題にしたんですよぉ」
 と、幹事のIさん。いい年寄りが集まって、若者の真似して大丈夫なのか。
「じゃ、おれは冷酒にしようかな」
 向かいに座るYさん、いつにもましてピッチが速い。案の定、一時間も経つと、ろれつが怪しくなってきた。
 まっ、皆楽しそうにやってるから、これはこれでOKだ。
 生中一杯、冷酒四合。けっこう回った。次回はカラオケも含めるとか。楽しみである。

春を彩るお馴染みの花たち

 この季節、起床は午前六時。ちょっと前だったら暗いし寒いし、なかなかベッドから抜け出せなかった。今は違う、実に気持ちがいいのだ。寝ている暇があるなら、早いとこリチャードを連れて散歩へ出かける。寒くも暑くもない、ベストな空気感を堪能できるのは、一年間にひと月もない。

 朝食を取った後は、庭の草むしりに勤しんだ。植物たちもしっかりと春を感じ、コンクリートの隙間からや、玉砂利を押し上げてと、一斉に顔を出し始めた。

 毎度のことだが、門の脇を飾るモッコウバラを筆頭に、我が家の庭で春を彩る、お馴染みの花たちにレンズを向けてみた。

バイク屋時代64 スポーツスター人気

 四名体制となったBFは様々な問題が勃発した。
 HD調布にいたころ、BFの仕事を任されたわけだが、手始めに不良在庫の整理からスタートし、ヤフオクを使っての中古電動アシスト自転車販売、そしてBDSやオークネットを使った仕入れを開始し、本格的な中古バイクの販売へと駒を進めていったが、実質のスタッフは俺一人だった。当初はあくまでも暫定的な施策だったので、倉庫やトラックの使用料など、本来かかるべき経費を計上しなかったこともあり、帳簿上は黒字を続けていた。ところが海藤くんと広田くんを引き受け、その後、のぶちゃんを代表に置いた組織に格上げしたため、人件費は一気に四倍となり、さらに府中店二階のBF展示スペース分の家賃を計上してみれば、見事に赤字転落。主な要因はメカの仕事がほとんど入ってこないことである。アフター等々は、メカ二人に個人的に付いているお客さん以外はHD三鷹で行っていたから無理もなかったが、二人の給与は歩合制、仕事がなければ実入りは大幅に減少する。どうしようもないが、彼らにしたら面白くない。
「歩合制にしてくれなんて言った覚えないですよ」
「もとの給料体系に戻してもらえないですか」
 と、うっぷんの溜まった二人は、それぞれ大崎社長へ詰め寄った。
「以前やった個人面談の時に言ってたよ。忘れちゃだめだな」
「記憶にないです」
 言った言わない問答である。
「いずれにしても府中店はスタートしたばかりだから、会社も借金抱えてきついんですよ。だから一日でも早く通常の仕事量に戻すことが先決だね」

 しかし、ただ待っていても仕事は増えない。そこで普段から疑問に感じていたことを話してみた。
「社長、三鷹の工場って仕事が溜まってるんでしょ? だったら仕事を下さいよ。こっちはベテラン二人なんだから」
「そうだね。武井くんに聞いてみる」
 理にかなっていると思って提言したが、三鷹店店長の阿木も工場長の麻生も、この意見には不満があるようで、
「うちのメカも、自分のお客さんのアフターは自分の手でやりたいみたいです。それをBFへ持っていったら今後の士気にかかわりますよ」
 と、突っぱねてきた。
 しかし現状はいっぱいいっぱいで、新規客の修理受付ができない状態が続いていた。だったらBFへ回すのは新規客分だけという条件で再度話を持ちかけると、渋々ではあるが承諾を得たのだ。ところが三鷹店は正規ディーラー、これに対し府中店は単なる中古車店。新規客の大半は正規ディーラーだからという安心感があるから頼みに来るわけで、一般店だったら他にもあるとの声が多く、そう簡単には事が運ばない。それでもオイル交換などのクイック作業を積極的に回してもらい、少しづつ仕事を増やしていったのだ。

 一方、営業の方は新たな展開が見え始めた。グーバイクの反応が俄然よくなり、内容をチェックすると、遠方からの問い合わせが増えている。ちなみにハーレーのみならず、この傾向はBFが扱うバイクにも表れていた。ただ、驚いたことに車両価格が300万円を超えるような高級中古車への問い合わせが、北海道や九州と、簡単には来店できないような超遠方から相次いでいるのだ。つまり実車を確認せずに商談へ入るパターンだ。お客さんに聞いてみると、なるほど理由があった。要するに田舎になればなるほど、中古車の流通在庫は少なくなり、地元で吟味などは到底できない。よって致し方なく通販を頼るだが、一番の心配事は販売店の信用。買ったはいいが、届いたバイクが目を覆うようなレベルでは困る。そこで正規ディーラーならばそれほど心配はなかろうという考えの下、物色を始めていたのだ。ただ、ハーレー正規ディーラーは中古車の在庫を多く持っていない。なぜならショールームに展示できる中古車の台数に制限があるからだ。しかも“HD認定中古車に限る”と言う縛りもある。よって、マフラーを交換したような不法改造車や、社外パーツ満載のカスタム車などは一切NGである。そんな中、モト・ギャルソンの営業指針は<中古車ハーレーの拡販>。つまりHDJからの縛りや制限などとは無縁の別会社、バイクフィールドにて府中店を立ち上げたのだ。
 府中店のショールームには、詰め込めば三十台のハーレーが展示可能である。スポーツスター、ダイナ、ソフテイル、ツーリングなど、ラインナップすべてが並ぶ。お客さんが来店した際も、選択肢がぐっと広がり、成約へのきっかけも作りやすくなる。さらに二階倉庫にも二十台ほどの在庫を持てば、グーバイクや、自社ウェブサイトでの訴求力は強いものになる。以前BDSへ行った時、千葉県下の輸入二輪車販売店ではダントツトップを走るG商会のS社長から面白い話を聞いた。

「ハーレーの中古車をビジネスレベルで売ろうとしたら、最低でも五十台の在庫が必要なんだよ。この数は長い経験でわかったことでね、五十台を大きく割ってくると必ずと言って売れなくなる」
 これはハーレーの各ファミリーの売れ筋を松竹梅で揃えると、おおよそ五十台近くなるということである。ただ、一般的にハーレーの台当たり仕入れ平均は百七十万円前後になるので、在庫金額は八千五百万円にものぼり、うちの財力では到底不可能である。よって在庫金額五千万円を目標とし、商品の偏りが出ないよう日々確認、一定の在庫日数を経たものはオークションで売り払い、新たなものを仕入れなおすという“リフレッシュ”に尽力した。
 ところがハーレーの世界にも売れ筋と死に筋があり、これが近年極端な傾向を見せ始め、リフレッシュもなかなかどうしてままならない。

 昨今、排ガス規制の問題を受けて、スポーツスターのエンジンが製造できなくなるという情報が頻繁に耳に入るようになり、ただでさえ人気モデルである、XL883N・アイアン、XL1200X・フォーティーエイトの二機種が、中古車市場で異常ともいえる引き合いが起きており、ファインカスタムを施した極上車などは、新車の仕切りを上回る高値で落札されるのだ。元々スポーツスターファミリーは製造台数が少なく、各ディーラーへの引き当て台数も微々たるものだったので、尚更中古車に注目が集まった。
 すると、買取業者はいつでもこの二機種に限り、高値で買い取るという情報が広まり、せっかく新車を購入したものの、あまり乗る機会に恵まれず、宝の持ち腐れを感じ始めたユーザーが売りに転じ始め、うちの既納客にもその傾向が表れ始めた。先日も三鷹店で新車を購入したお客さんが、府中店へ売りの相談で来店した。
「去年買ったフォーティーエイトなんですけど、あんまり乗らないんで売ろうかなって思ってるんです」
「そうですか。ちょっともったいない感じもするけど、決心がついているならぜひうちに売ってください」
「だいたいでいいので、買取値段を教えてほしいんですが」
「お客さんのフォーティーエイトの状態は、先ほど三鷹店の担当に問合せしました。それほど距離も進んでないし、車検も二年近く残ってますので、どうでしょう、180万円では?」
「190万円にはなりませんか」
「それはきついかな…」
 一瞬考えるそぶりを見せたお客さん、
「実はレッドバロンで見積もりをお願いしたところ、今なら190万円って回答があったんです」
 ネットには買取情報が溢れかえっている。相場状況を調べて「少しでも高く」と、あいみつに持っていくのは当然の流れだ。
 けっこうて厳しい金額ではあったが、当社の既納客であることと、立ちごけなしの極上品、Screamin’ EagleのサイレンサーとK&Hのカスタムシート付という内容だったので、買取は成立した。ちなみに五点評価以上のフォーティーエイトだと、つい最近のBDS落札実績を見ても185万円は下らない。実際にBDSで買うと、185万円に消費税と手数料が加算されるので、実際の支払額は200万円を超えてしまう。それでもフォーティーエイトなら一週間もかからずに売りさばけるので、ちょっと無理をしても買ってしまうのだ。尚、スポーツスター以外でも、ブレークアウトや最終型ツインカムエンジンのローライダーなどは同じような傾向にあった。

八幡堀~伊根の舟屋・桜巡り

 一穴主義ではないが、これまで桜開花の撮影と言えば、ほぼ伊豆と井の頭公園で済ましていた。ところが自由気ままな暮らしになったのをきっかけに、去年はぐっと足を伸ばして、松山~尾道そして広島記念公園と周ってみた。この二泊三日の旅がすばらしい経験となり、今更ながら写真撮影の面白さに沸き立った。そんなこともあって、今年も見聞を広げる意味も含めて、以前から気になっていた、滋賀県は近江八幡の水郷へレンズを向けてみようと計画した。
 日程は四月六日(月)から八日(水)までの二泊三日。
 初日は到着次第すぐに八幡堀で撮影。二日目は遥々琵琶湖まで出向くのだから、比良山地の最高峰である標高1214.4mの“武奈ヶ岳”へ登山。最終日は疲労運転を避けるため、朝食を取ったらすみやかに東京へ戻るというもの。予約した近江八幡のビジネスホテル“ホテルはちまん”までは自宅から430kmある。

 グーグルナビを頼りに新東名をひたすら西へ向かう。実は新東名、長泉沼津ICから先は未経験である。速度120kmエリアが延々と続く広々とした三車線はとても走りやすい。
 名神に入ると次は東海環状自動道へと進み大安ICで降りた。ここからは愛知川沿いのR421で近江八幡へと向かうのだが、ナビが指示したこの道、まさに棚から牡丹餅である。永源寺湖手前数キロから渓谷美が続き、左岸へ渡る橋の周囲には山桜が咲き誇っていて、幽玄な美しさを見せてくれたのだ。たまらずPOLOを停めて撮影を始めた。機材はもちろん<α7Ⅲ+Vario-Tessar T* FE 24-70mm>。

 広大な田園地帯を抜けて近江八幡の市街へ入る。ホテルに到着したのは十一時半過ぎ。チェックインは十六時だが、フロントに断って車だけ駐車させてもらう。折り畳み自転車をトランクから降ろして、小幡町通りをまっすぐ八幡堀へ向かう。目的地に近づくにつれ、観光客が目立ち始める。堀の遊歩道に自転車を止め、撮影ポイントを探し始めると、なるほど、人気の観光スポットなのだと痛感した。七~八名ほどの客を乗せた八幡堀巡りの和舟は、次から次へとやってくるし、いくつか架かる橋の上は、スマホを構えた大勢の観光客で溢れかえっている。水郷の風情満点の八幡堀界隈は、写真好きならずとも思わず記念に収めたくなるような情緒ある景観の連続なのだ。
 さて、腹が減ったので、ちょうど橋のたもとにあったカフェ『明治橋 あまな』でランチにした。

 ふと、琵琶湖が見たくなる。グーグルマップで調べると、自転車で十分行ける距離である。
 堀沿いの道をまっすぐ行って、浜街道を右に曲がれば、そのうちに湖畔が見えてくるはずだ。アップダウンの少ない田園の道は開放感があって気持ちがいい。ちょっとした小川の川縁が桜並木の遊歩道になっていて、対岸には菜の花と、春のおなじみが連なる長閑な眺めが広がっている。
 無心にシャッターを切っていると、いつの間にか風が出てきて、怪しい雲も広がり始めている。雨は降らないと思うが、肌寒くなってきたのでウィンドブレーカーを羽織った。
 琵琶湖の眺めは天候のせいか重々しいものだった。水平線や波もあって、どこへ視線を走らせても湖には見えない。湖畔の植生が海とは異なるせいか、なんとも形容しがたい不思議な景観をつくり出している。
 折り畳み自転車のサドルはとても陳腐。そのせいで尻が痛くなってきた。ある程度の距離を走る前提であれば、もう少しまともなものと交換する必要がありそうだ。

 駅前の居酒屋で一杯ひっかけてからチェックイン。風呂はユニットバスだが、ここのは湯船が大きくたっぷりとお湯が張れるのがいい。顎まで浸かって体の芯を温める。風呂上がりにはミネラルウォーターで水分補給。スマホを手に取り、駄目だとはわかっていたが、いちおう明日の天気をチェックした。
― 登山はあきらめるしかないか…
 明日の午前中を中心に、本州の広い範囲で気圧の谷の影響を受けるとのこと。武奈ヶ岳のピンポイント予報などは、天候雨、風速15メートル、山頂近くの気温が昼前後で3℃と、下手すれば遭難しかねない悪天候と出ていた。こんなこともあろうかと、代替え案は用意していた。京都は伊根町にある“伊根の舟屋”である。近江八幡から距離にして180km弱。朝食を取ってから出発すれば、ちょうど天候も回復する頃だろうと踏んだのだ。

 まずは名神に乗った。その後は京都縦貫自動車道で与謝天橋立ICまで行き、そこから一般道で丹後半島の海岸線をひた走る。途中、日本三景である天橋立の松並木が見渡せた。若狭湾の海の色はブルーグリーン。馴染みの駿河湾とは趣が異なるが、なんとも深みがあってついつい脇見運転をしてしまう。
 伊根の舟屋は人気スポットだ。平日なのにメインの駐車場には空きがほとんどなく、辛うじて停められたという感じだ。大型バスの転回場もあって、ひっきりなしに観光客を吐き出している。ほとんどの観光客は外人で、ヒジャブ姿の女性もかなり目立った。
 舟屋は、一階に舟を収納、二階は漁具置き場と、独特な形状が目を引くが、以前に津軽半島を旅した時も同じような舟屋を目にしたことがある。日本の木造船の文化だろうか。
 思惑どおり、到着するころには殆ど雨はあがり、陽こそ出なかったものの、まあまあの散策日和になった。だが一時間ほど経つと、徐々に風が強まり、おまけに空気が冷えてきた。いい頃合だと駐車場へ戻って車を出すと、とたんにぽつりぽつりときた。

 帰りはすべて一般道を利用した。若狭湾を眺めながら舞鶴、小浜と抜けてみたかったのだ。グーグルナビを行き先“ホテル はちまん”にセットすると、所要時間四時間半と表示された。174kmもあるのにずいぶんと時間がかからない。ちなみに自宅から沼津港を同様にセットすると、距離は124kmと短いのに所要時間は同じなのだ。すぐにすいすい行ける田舎の道を連想したが、全くその通りの快適なドライブに終始した。特に若狭湾沿いの道は、雨にやられながらも前後に車がつかない状態が長く続き、平均速度50~60kmで流せたのはラッキーだった。

 小浜からは一旦山間に入る。
「おおっ! 虹だ」
 いつの間にか雨は上がっていた。思わず近くにあったコンビニへとハンドルを切り、カメラを向けた。山の向こう側には琵琶湖が待っている。湖面が見えれば、湖西線、北陸本線、琵琶湖線と、鉄道に沿うように近江八幡へと進んでいくのだ。

 昨年そして今年と、桜巡りはたくさんの思い出を残し、視野も広げられたと自負している。
 成功してほくそ笑む。失敗して「次は!」と鞭を入れる。これはすべて行動あっての話であり、なにもしなければ単に時に身を委ねているだけだ。こうなると次のトライが楽しみでしかたがない。

バイク屋時代63 還暦を越えて

 2017年春。府中店の内外装の養生がもう少しで完了するというので、早々と引っ越しが始まった。
 狭い工場スペースには、道路側から順に、海藤、広田、大杉のピットが並び、それぞれの工具等々が配置されると、どう見ても窮屈そうである。この密な空間に、コミュニケーションのできない面々が入るのだから、先が思いやられる。
 中二階にある事務所の狭さもかなりなものだった。一段が恐ろしく丈のある階段を上がると、まずは来客用の丸テーブルが配置され、その奥が備品棚、そこから左へ事務机が三つ並び、一番奥が社長のディスクになった。総務スタッフの金村さん、のぶちゃん、そして社長が並ぶと、人いきれを感じる。閉所が苦手な人は、ここでの仕事は苦痛になるだろう。
 商談コーナーはちょうど事務所の真下になる。よってショールームの中ではここだけが天井付きで、何気に落ち着ける一角である。商談カウンターは調布からそのまま運んできたL字型のもので、やや窮屈だが、同時に二つの商談を行える。一番端は事務用として登録書類の作成などを行えるよう、脇には書類棚、小型プリンター、シュレッダーが並ぶ。最奥には横長の木製ディスクを置いて、顧客管理システムがインプットされたサーバーを設置した。
 ショールームは、元々倉庫だった荒い造りをうまく利用して、床のコンクリート打ちっ放しはそのままに、艶の出るコーティング処理を行うと、都会的な雰囲気が出て正解だった。ここにハーレーを並べると妙に映えるのだ。府中店はあくまでも中古車専門店なので、談話コーナーは最小に抑え、一台でも多くバイクを並べられるようレイアウトを考えた。
 二階へバイクを運ぶ際は、大型の業務用エレベーターを使う。重量の最大許容が1000kgなので、最も重いツーリングシリーズのウルトラでもへっちゃらだ。ただ、ウルトラはフルパニアケース装備で幅があるので、載せる際には慎重を期す必要があり、取り廻しになれたメカニックでないと難しい作業になる。二階は部品庫並びに預り車両の置き場が主な用途だが、ハーレー以外の下取車をここに並べてミニショールーム化し、これまで以上の販売増を狙った。それに伴いグーバイクのBF車両掲載台数枠も、三台から五台へと増やした。尚、西端にはスタッフのロッカーと休憩スペース、そして更衣室を設けた。
 店舗の北側にはトラックも置ける駐車場を完備。大崎社長とのぶちゃんの車は常駐とし、その他にも来客用として三台は駐車可能な広さを確保した。ただ、大家さんの話によると、ここに数人の若い輩がたむろすることがこれまで何回かあって、近所から苦情が出たことがあるらしく、念のために防犯カメラを設置した。新しい店にとってご近所さんとの良好な関係は、なによりも重要なことなのだ。

甲州街道側から見たモト・ギャルソン府中店

「なかなかいい店に出来上がったじゃない」
 大崎社長、ご満悦である。甲州街道側に巨大なハーレーの写真パネルを設置すると、中古バイクの店とは思えない高級感と専門店ムードが醸し出され、社長と同様、俺もこの店ならきっと売れると、オープンが楽しみになってきた。
「社長、それでも中古車はweb戦略が要になるんで、アップデートについては早急にマニュアル化しましょう」
 中古車はオンリーワンである。見つけた車両に価値観を覚えれば、どんなに遠方からでも問い合わせはやってくるものだ。そして従来のバイク雑誌掲載では、“在庫の鮮度”をアピールすることは到底不可能である。

 二〇一七年四月。府中店はめでたくオープンした。
 オープン後三か月は、認知が行き渡らず、やや目標を下回る成績だったが、三鷹店からの下取りが増えるにつれ、徐々に上向きになっていった。以前にも記したが、中古は売れ筋さえ手に入れば必ず売れるもの。逆を言えば、売れ筋の在庫不足が続けば閑古鳥が鳴く。
 ちなみにハーレー以外の売れ筋筆頭はやはり国産車。排気量を問わずなんでもよく売れる。ただし、下取で入荷したものに限った。人気故にオークションでは高くて買うことは難しく、仮に無理して落札してもお値打ちな販売価格は提示できない。

左から、ホンダ・レブル250、ヤマハ・セロー250、カワサキ・Ninja250

 人気の中心は250ccクラス。ホンダ・レブル、カワサキ・Ninja250、ヤマハ・セローは鉄板だ。このほか125ccクラスのスクーターも安定した人気があり、特にホンダ・PCX125、スズキ・アドレスV125は、グーバイクへアップしたとたんに問い合わせがあるほどだ。

ホンダ・PCX125とスズキ・アドレスV125

 二年前、俺もついに還暦を迎え、体力的にも気持ち的にもひとつの峠を越えたと自覚した。慣れた作業とは言え、ヘビー級のハーレーを押して歩くことは、次第にきつく思えるようになってきたし、お客さんとの結びつきも、共にバイクライフを楽しむ形から、杓子定規な顧客関係へと変わり、一抹の寂しさが否めない。最近では、もうひと踏ん張りしたら卒業かなと、ぼんやり考えることが多くなり、なんとなく人生の黄昏を感じるようになった。
 昨年はいろいろなことがあった。家族の一員として愛されたミニチュアダックスフントのロックが、十五歳を目前にして死んでしまい、心に空いた穴の大きさに愕然とした。そしてデジタル一眼の楽しさを教えてくれたニコン・D100が、愛用十三年目にして突如壊れてしまったのだ。相棒のたび重なる消失は、時の流れの速さを改めて気づかされると同時に、今後の生き方について考えるきっかけを与えてくれた。
 仕事はこれまで同様、生活の基幹であることに変わりはないが、プライベートのあり方を見直そうという意識が表れ始め、二年前より、この“西久保日記”で【デニーズ時代】の連載を開始した。そして約十年前から始めた山歩きも、この頃では多い時で毎週、少ない時でも最低月に一度は出かけるようになり、生活の比重を意識的に仕事とプライベートをイーブンにしようという思考が固まってきたのだ。