つるつる温泉・大多摩湯めぐり

 今年の花粉症は辛いものがある。だだ洩れの鼻水が夜になれば鼻づまりに変わり、口呼吸を余儀なくされて喉が痛みだす。体もだるく、花粉症とわかっていても、風邪に罹ったのではと疑いたくなるような症状がここ数日続いている。年寄りは花粉症になりにくいと聞くが、とんでもない、年々症状は悪化している。
「温泉に浸かってすきっとしようよ」
 鼻をかむ回数が増えてきた女房、目が赤く鼻声だ。
「いくか、花粉源に近い奥多摩の温泉へ」

パノラマ食堂・つるつる温泉

 三月六日(金)。ちょうど一年ぶりになる“つるつる温泉”へ行ってみた。温泉で疲れを癒し、帰宅したらリチャードの散歩、夕方からはWBC台湾戦を酒の肴に晩酌を楽しむ。ナイスな一日になりそうだ。

 ここの温泉は三度目になるが、露天風呂に入ったのは今回が初。それほど大きくない湯舟が二つだけなので、いつも満員だった。
 檜の湯船はほぼ正方形で、縁に頭を乗せて体を伸ばせば、つま先が体面の縁についてサイズのあんばいがいい。少しづつ動く雲を見ながらの入浴は身も心もリラックス。昼食までの一時間はあっという間だった。
 先回の“瀬音の湯”と同様、真まで温まった体はなかなか発汗が止まらない。
「ほんと温まるね」
「汗がすごくて、水分補給しないとやばいほどだよ」
 冷たいほうじ茶が体に染み渡った。
 女房は好物の天丼、私はとろろ定食を注文した。疲れがたまっていたのか、かき揚げの玉ねぎの甘みがとても美味しく感じた。

 お土産コーナーで、中村酒造の“千代鶴 特別純米 奥多摩”を見つけ即購入。晩酌にきりりと冷やしていただいたが、あきる野の清水を使っているからか、東京の酒は体に馴染み、シシャモをあてに酌が止まらない。
「おおっ、やったぁぁぁ!、大谷満塁ホーマーだ!!」

病院をはしごする

 スギ花粉の飛来が本格化してきた。鼻の不調は相も変わらずだが、今年はこれに目の強い痒みが加わり不快でしょうがない。先日、夜中に尿意で目が覚めたら恐ろしく目元が痒く、いけないとはわかっていたが我慢できずにごしごしと擦ってしまった。朝起きて手洗いの鏡を見ると充血が酷く、まるでドラキュラの目のようになっていた。この痒みはなかなか回復せず、鼻水も負けじと漏れっ放しで、最悪の一日となってしまた。こんな時、トラブルは続くもの…

 首から上に弱点の集中する私。鼻のてっぺんにできた“かさぶた”が、三月ほど前から徐々に盛り上がり始め、いつの間にかイボのようになってしまった。痛くも痒くもないが、箇所が箇所だけに、絶えず視界に入って鬱陶しい。これ以上大きくなるのは避けたいので、近所にある<武蔵野皮膚科クリニック>で診てもらった。
「イボの一種でしょうね。液体窒素で処置します」
 マイナス200℃近くもある液体を患部へ塗布、凍結させて原因ウィルスを死滅させるのだ。イボもかさぶたもウィルスの仕業のようで、こいつを殺さない限り、下から次から次へと盛り上がってくるらしい。
「目を瞑ってください。ちょっと痛いですよ」
 冷気が顔面に近づいてきたと感じた瞬間、刺すような痛みが患部に広がった。なるほど結構な痛みである。
「イツツ!」
「もうちょっとなんで辛抱してください」
 処置から約十日経ったら再度ドクターに診せて、完治または追加処置の判断をするという。このブログを書いている時点であまり変化はないので、恐らくまた凍結地獄を見ることになるだろう。

 昨年の十一月に眼科検診を受けた際、特段問題はなかったが、目の中心部の血流が悪いと指摘され、三か月ほど間を置いたのちに、精密な緑内障の検査を行うことになった。
 凍結地獄の翌週に<武蔵野眼科>で診てもらうと、幸いなことに網膜に異常はなく、緑内障の疑いは晴れた。
 今日もこれから<三鷹もろほし耳鼻咽喉科>へ花粉症の内服薬と痒み止めの目薬をもらいに行かねばならず、病院のはしごは続いている。

バイク屋時代60 ハーレーダビッドソン三鷹

 でっこみ引っ込みはあるものの、ここ一~二年ほどは、ハーレー部門もBFも比較的安定した収益を上げていた。ただ、懸念事項である従業員の定着度に関しては相変わらず不安定さが残り、営業もメカも優秀なスタッフの離職が相次ぎ、先々への不安は隠せない。そんな中、極めて厄介な問題が持ち上がった。HDJから契約更改に関して、思ってもみなかった条件を突き付けられたのだ。対象店舗はHD調布とHD東村山の二店。両店ともにHDJが求める店舗基準に達していないとのことで、準じた店舗を新たに用意しなければ契約更改はできないと一方的に言ってきたのだ。開いた口が塞がらないとはこのこと。脅し以外の何物でもなく、これではなんらやくざと変わらない。

「ふざけんじゃないよぉ、まったく」
 温厚な大崎社長もついつい言葉を荒げる。そもそもHDJが主張する基準とやらが、あまりにも現実とかけ離れていたのだ。結論から言えば、ショールーム並びに工場の基準をクリヤするには、現行の店舗では面積がまったく足りず、物理的に不可能。つまり、新たな店を作るしかない。しかも基準に準じれば一般的なカーディーラー並みの規模になる。果たして近郊に該当する物件があるかどうかの見当もつかない。仮に見つかったとしても開業までにどれほどの資金がかかるかと、考えるだけで暗澹となる。しかし、従わなければ正規ディーラーを下ろされ、事実上会社はTHE END。

エレクトリック LiveWire ライブワイヤー

「また借り入れが圧迫してくるな。最低でも3000万以上は必要だろう」
「でも仕方がないじゃないですか。それより早く物件を見つけないと」
 半年ほど前から、大崎社長の長女である山口信代が、下山専務の後釜としてモト・ギャルソン総務部で勤務していた。それまで勤めていた大手信販会社での経験と実績を買われたことと、下山専務も、自身の年齢と持病のことを考えていたのだろう、引退を仄めかし始めていた。
 信代が資金の管理をし始めると、徐々にだが財務状況が上向いてきた。就任後から徹底的な節約を推進し、HDJに対してもこれまでのような過度な忖度を改め、常に自社の財務状況と照らし合わせた上での仕入れ計画を推し進めるよう、大崎社長へ強く求めていた。この方針変更によって、仕入担当の武井くんとは絶えず水面下で火花を散らすことになった。

XG750 STREET750

「近隣でカーディーラー並みのテナントか…」
「そんなおあつらえ向き、あるんですかね」
 金がかかる云々の前に、新店舗の候補物件を探すことが早急の課題だった。
 
 と、ある日。
 チャプターメンバーのQさんが、12ヵ月点検が完了した愛車FLHRを受け取りに来ていた。
「先週は車の車検だったし、出費が連チャンしてきついよ」
「なに乗ってんです?」
「ジープ」
「東八のレクサスのはす向かいですか?」
「そうそう。でもね、近々に引っ越すらしいよ。マックの先の角だって」
 この会話を何気に聞いていた大崎社長が反応した。
「Qさん、ジープのディーラーの電話番号、今わかります?」
「ええ、わかりますけど」
 ここから大崎社長の怒涛の攻撃が始まった。 
 すぐにジープへ馳せ参じると、引っ越しのスケジュールを聞き、オーナーと賃貸についての話をしたい旨を伝えた。ここを借りることができれば、それこそドンピシャのおあつらえ向きだ。
 数日後にオーナーと会って詳しい話を聞くことができ、他にも賃貸希望が一件あるものの、現時点では具体的な契約までは進んでないとのこと。これ以上の物件はないと即断した社長は、
「ぜひうちで借りたいのですが、よろしくお願いします」
 仮契約へと持ち込むことができたのだ。

 店舗経費については、HD調布とHD東村山二店分とほぼ同額と試算した。つまりはスタートさせた暁には、二店分以上の売上が必須となる。いずれにしても新店舗計画をスタートさせなければ会社の明日はない。ただ、今回の騒動はいい機会でもあった。期日ははっきりしていなかったが、HD調布は貸主である共進倉庫から明け渡しを通告されていたのだ。HD調布の店舗が入る本社倉庫の大半を、スポーツ施設のゼビオに改装するとのことだ。HD東村山も店舗の老朽化で、大幅な加修が必要とされていた。

ハーレーダビッドソン三鷹 スタッフ

「第一段階としてはHD三鷹を無事にオープンさせること。同時に調布は中古ハーレーの専門店とし、東村山はオーナーさんへ返す」
「でも、いずれは調布も返さなきゃならないですよね」
「そう。だから中古車店の引っ越し先も頭に入れとかなきゃ」
 さきほどから信代の表情がきつくなっている。
「社長、三鷹から始まって中古車店まで、どれだけ費用がかかるんですか?」
「いっぱい」
「いっぱいじゃないですよ、もう… 七~八千万はいくんじゃないですか」
「そこまではどうかな」
「銀行の方は大丈夫なの?」
 金庫番としては心配事が大きすぎる。信代の尽力でだいぶ借金が減ってきた矢先だけに、このタイミングでまた多額の借り入れが発生するというのだから穏やかではいられない。
「なんとかなりますよ」
 大崎社長は六十八歳を迎えていたが、老齢とはいえバイタリティーは健全で、ビジネスへ対する積極的な姿勢は相も変わらずだった。ただ、かなり以前から「七十歳になったら引退する」と周囲に漏らしていたこともあり、HD三鷹は責任を以って準備するが、運営に関しては基本的に関与しないと全体会議で公言した。HD三鷹は新体制のリーダーであり、専務取締役に昇進した武井くんにまかせて、社長自身は高収益化を目指すハーレーの中古車専門店で指揮を執るとのこと。そしてこの大改革のあおりを受けて、ついにドゥカティ部門の存続はジャッジにかけられることになる。
 日本国内におけるドゥカティビジネスは縮小均衡になりつつあり、ご多分に漏れず桜上水のドゥカティ店も、収益ラインを維持するのが精いっぱいという状態が続いていた。

ドゥカティ 最新型のパニガーレ―とスクランブラー

「木代くん、ちょっと相談があるんだけど」
 大崎社長の“ちょっと相談”に、いいことのあったためしはない。
「BFでね、海藤くんと広田くんの面倒を見てくれないかな」
 海藤はHD調布のメカ、広田はHD東村山のメカである。HD三鷹は調布と東村山の合体なのだが、なぜか三鷹のメカニックメンバーに二人の名前は載っていない。
 HD三鷹は武井くんを長とした若いメンバーで構成した。その際重視したことがコミュニケーションと意思の疎通である。海藤と広田は共にキャリアが長く、メカとしてのスキルは十分なものを持っていたが、一匹狼的な行動が多く、これまでにも独断による周囲との摩擦が幾度も起きていて、これを懸念した武井くん、店長の阿木、工場長の麻生は、彼ら二人を三鷹メンバーから外した。
 つまりのこと二人は浮いてしまったのだ。個別に見ると仕事はできるし積極性も感じられるが、組織に放り込むと例外なく問題を起こし、汚点を残してきた。
「えっ!あの二人をBFのメカとして使うんですか?!」
「いいじゃない、BFもこれで社員三名体制ですよ。中古車をこれまでの倍売るんで、彼らの力が必要です」
「そりゃわかりますけど…」
 これまでBFは俺一人だったから、自由気ままにやってきた。しかしこれからは二名の部下を管理しなければならないし、おまけに海藤と広田である。せっかく黒字経営までこぎつけたのに、これからは二人分の給料を確保したうえで利益を上げなければならない。
 どうなることやら…

Future Train 未来列車 Vol.5

 二月二十二日(日)。年に一度のアマチュアダンスイベント【Future Train 未来列車 Vol.5】へ行ってきた。会場は先々回と同じで、武蔵小杉駅より徒歩数分の中原市民館である。

 女房が所属するフラチーム“レアフ アーヒヒ”は第二回から連続して参加している常連組。イベント自体は今回が五回目となる。いつも通りにカメラマンとして出向いたが、持参した機材はもちろんα7Ⅲ+Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS。いろいろな撮影条件で試したかったのでちょうどいい機会である。
 場所取りはうまくいき、最前列の中央やや左をゲット。右隣は同じチームで仲のいいYさんのご主人。
「どうですか、RAV4は」
「ジムニーからだから、でかくてまだ慣れないですよ」
 Yご夫婦はSUVがお好きである。

 開催の前に壇上からスタッフの挨拶があったので、フレーミングや露出のあんばいを見るために何枚か試し撮りを行った。案の定、最前列でもテレ端70mmはやや役不足。先回はD600にSIGMA24-105mmの組み合わせだったのでアップにも余裕があったのだ。そして読み込み時間の遅さはやはり気になるところである。はたしてSDカードのランクアップで解決できるのだろうか。
 それはさておき、今回はステージ演出で初っ端から軽いスモークを張っていたので、スポットライトとの絡みからライブ感がよく出て、光とダンサーの組み合わせに奮闘できて楽しかった。
 鑑賞したのは十チームほどだが、皆しっかりと練習を積んできていて感心させられる。振り付けや演出等々、見ごたえのあるチームもけっこうあった。
 頑張れレアフ アーヒヒ!

季節の呼吸

 春はもう目の前である。近所を流れる玉川上水沿いに、一本だけ立つ河津桜が今年も開花を始めた。自宅の門の前に咲く彼岸花もそうだが、植物は毎年狂うことなく季節を察知し、美しくも力強い開花を見せてくれる。この静かな力と沈黙の世界の神秘は、自然がもたらす究極の恵みではなかろうか。
 もう少しすると桜、ハナミズキ、そして紫陽花と続き、森が眩い新緑の時期を迎えれば、山々には高山植物が一斉に顔を出し、「山へ来いよ!」と言ってくる。
 私はこの“季節の呼吸”がたまらなく好きだ。

写真好きな中年男の独り言