逗子海岸・なぎさ橋珈琲店

「リーちゃん、海へ連れてってみない」

車が苦手だったロックは一度も遠出をしたことがなかった。それとは対照的にリチャードは車が好きだ。動き出すときょろきょろしていかにも興味津々といった表情をする。

「だったら逗子へ行こうよ。元デニーズ逗子店だったところ」
「そういえばあったね、逗子店って。今は何になってるの」
「なぎさ珈琲逗子店。すぐ脇が海岸だから散歩するにはちょうどいいよ」
「リーちゃん、海初めてだから喜ぶかもね」

滑るように走る横横。何を想うリチャードは、ひたすら遠く前方を凝視している。
1時間半のドライブだったが、酔うことも、粗相もなく、実にいい子なのだ。

「あら~、満車みたいよ」

時刻は12時10分前。人気の店とは聞いていたが、既に入り口はウェイティング客で溢れかえっていた。
ここはとにかく立地が抜群なのだ。田越川が逗子海岸へと注ぐ渚に建てられた南仏ムード満点の店舗には、もちろんガーデン席が設けられ、潮風を感じながらの食事が楽しめる。

「気持ちいいね」
「これで富士山が見えたらいうことないな」

夫婦はまったりモードに入っていたが、テーブルに繋がれたリチャードは落ち着きがない。ロックもそうだったが、おとなしくじっとしていることは、あまり得意ではないようだ。
10分と待たないうちに「なぎさバーガー」と「ロコモコプレート」が運ばれたきた。リチャードがしきりにおねだりをしてきたので、特製バンズをちぎってあげると、もっともっととうるさい。しかしこれは納得。久々にバランスの取れた美味しいハンバーガーなのだ。特にたっぷりと盛りつけたフレンチフライがサクサクッという触感で、いくらでも口へ運べてしまう。
眼前に広がる海にはウィンドサーフィンやSUPがたくさん出ていて、湘南海岸とは異なる穏やかで静かな逗子を演出していた。

食事の後はさっそく海岸へと繰り出した。
砂浜の感覚が気に入ったのか、リチャードは積極的に歩きまわる。それではと、波打ち際まで引っ張っていくと、さすがにいつもの及び腰が出た。波の音が嫌なのだ。でも、初めてのものへの興味は少なからずありと見た。
抜けるような青空と、ほど良い海風が散歩を特上の時間に変えてくれ、気が付けば1時間が過ぎようとしていた。


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