東大楼・女房とランチ

 地元ってのは、意外や知ってるようで、実は知らないことの方が多い。
「いつも行ってる眼科の前に、行列ができるラーメン屋があるのよ」
「その眼科って、おれも行ってるとこ?」
「そうよ。いつも眼科健診受けてるじゃない」
 てな感じで、時々女房が聞いてくるが、いくら頭をひねっても分からないことがほとんど。
「えっ、あったかな……」
「行ってみる?」

 女房とはちょくちょくランチへ行く。どうせなら地元の店がいいと、互いに情報を出し合っているが、情報提供量は圧倒的に女房の方が上だ。
 それでもたまには、
「スイングホールの真ん前にある中華屋、知ってる?」
「ロータリーのとこでしょ、なんかあったね」
「東大楼っていうんだけど、評判いいみたいよ」

 距離にもよるが、店へ向かう際はたいがい徒歩だ。夫婦共々ウォーキングを日課にしているから、それほど苦にはならないが、まあ、往復5Kmをひとつの目安にしている。

「すみません、ただいま満席なので少々お待ちください」
 フロアで孤軍奮闘しているのは、小柄な若い娘さんだ。恐らくアルバイトだろう。
 待つこと十分。一番奥のテーブルへ案内されると、私は回鍋肉定食、女房は炒飯、それと餃子を一皿注文した。厨房ではオーナーと思しき年配ご夫婦が忙しく動き回っている。
 料理が運ばれてくると、先ずはその香りにニンマリ。甜面醤のコクのある甘さが想像できてしまう。女房がいきなり餃子を口に放り込んだので、私も箸をのばす。野菜のうま味が広がる、餃子の王道的味わいだ。回鍋肉もキャベツの火のとおりがちょうどよく、御飯が進んだ。
「おいしかった。つぎは天津飯定食かな」
「おれは麺だな」
 またひとついい店を見つけたようだ。
「ごちそうさん」
「ありがとうございました、またよろしくお願いします!」

東大楼
東京都武蔵野市境2-2-3

近所で読書

 二月五日(月)。寒空に小雪が混じれば、外出も億劫になる。こんな時は暖かい部屋で、コーヒーを飲みながらの読書がいい。

 自宅から歩いて一分もかからないところに、“むさしの森珈琲”がある。ここにはカウンター席が設けられていて、読書やパソコンの作業にはうってつけだ。西久保日記の執筆でもちょくちょく利用している。
 ノートPC(レノボ・X1 Carbon)と、もうすぐ読み終える文庫本を脇に抱え、傘はささずにパーカーのフードを被って、やや速足で向かった。
 店内に入れば、そこは春。ランチのピークはすでに終わる時間帯だが、ほぼ満席。ただカウンターだけは、いつもひとつやふたつは空いている。
「バターチキンカレーとブレンドコーヒーで」
「かしこまりました」
 たいがいこの組み合わせになる。
 コーヒーが運ばれると、先ずはひと口すすった。
 文庫本を開くと、数行追っただけでたちまち文中の世界へと没入。
 ジェノサイド(著者:高野和明)、久々に出会った面白すぎる小説だ。

ガタ

項目基準値単位結果
尿潜血(-)(+)
血圧収縮期129以下mmHg146
拡張期84以下mmHg86
肝機能AST(GOT)30以下IU/I42
ALT(GPT)30以下IU/I33

 年に一度の生活習慣病検診。ひと月かかって結果が届いた。内容は相も変わらずと言ったところで、とりあえず一安心。ただ、これとは別に、加齢に伴う体調の不安定さは、悲しいかな多々自覚できるようになってきた。

 この加齢に伴う体調の不安定さだが、私の解釈では、これこそが“ガタ”なのだ。
 人間も機械も寿命があり、経年に伴い必ずガタが出始める。ただ、人間には自然治癒能力があるので、体力があるうちは、ガタが出ても己の力で修復できる。ところが六十代も後半に入ると、この治癒力が徐々に低下し、治療の助けを借りなければ、元に戻すのが困難になってくるのだ。
 最近の顕著な例は膝痛。五年前に今熊神社遥拝殿~市道山をピストンした際、右膝初となる痛みが出た。歩行距離14Km、標準タイム七時間半と、データだけでは驚くほどの行程には思えないが、実際はアップダウンの嵐で、足腰への負担は想像以上だった。
 幸いなことに、その後はほとんどぶり返しもなく、山歩きも快調に楽しんできた。ところが昨年の十一月、階段の上り下りでズキッと刺すような痛みが走り、二か月たった今も一向に良くなる兆しが見えない。整形外科でレントゲンを撮ってもらった際は、
「それほど軟骨が潰れているような感じではありませんね」
 との診断で、湿布を処方されただけ。ではこの痛みは?
「大腿筋の先端周辺に炎症があるかもしれません。あんまり痛むようだったら、ステロイドの注射もありますが」
 原因の本元は、間違いなく五年前のピストンによるダメージだと思っている。
「いやそこまでは。しばらく様子を見て、芳しくなかったらまた来ます」
 ガタが関係しているなら、湿布だけで治るとはとても思えない。
「ウォーキングやってるんですが、続けても大丈夫ですかね?」
「やらないよりはやった方がいいんですよ。もちろん痛みがひどい時は駄目ですが」
 ガタは薬では治らない。酷いガタには外科的治療が必要だが、そこまでじゃなかったら、筋力アップとストレッチで、ある程度まで回復すると信じている。ウォーキングに対して医師の言った“やらないよりはやった方がいいんですよ”は、その考え方だ。
 では現在、どのような改善策を講じているのか列記したい。

 先ずは自転車通勤の代替策として始めたウォーキング。コースは毎度同じで距離は5.3Km。開始から二週間ほどは、徐々にペースアップしながら、膝のあんばいを観察した。
 平地を歩くだけなら一切痛みは出ないが、段差には注意が必要。そもそも階段の上り下りに出る痛みなので、それに近いシチュエーションには目を配らなければない。
 やり始めてすぐに感じたことだが、代謝改善には効果のありそうなウォーキングも、脚全体の筋力向上にはさほどの結果は望めそうになく、そこでジョギングを考えた。ただしウォーキングと比べて膝への負担が数倍上がるので、ペースは歩くほどのレベルから始めることにした。実際に行ってみると、これがなかなか難しい。調子に乗って僅かでも歩幅を広げるとズキッとくるし、1Km弱走ると、鈍い痛みが出てきてしまった。
 最近注目されているスロージョギングも試したが、靴底を擦るように進む独特な方法なので、つま先をひっかけることが多々あり、そのたびにズキッときて、あんばいはよくない。確かに膝への負担は少ないが、今の症状には向かないようだ。
 ローペースのジョギングで、膝への負担を減らすにはどうすればいいか。考えた挙句、クッションソールが流行の、ランニングシューズを使ってみることにした。ただ、本格的なものは価格も二万円に届く勢いなので、先ずは一万円以内の入門用と称するものを見繕った。入手したのはアシックス製である。
 使ってみると膝への負担が明らかに低減。歩幅とペースさえ気をつけていれば、なんとかジョギングで行けるのではと、ちょっと嬉しくなってきた。
 最近ではコース5.3Kmの内、ウォーキングで2Km、残りをローペースのジョギングという割合で毎日行っている。これで膝を支える筋肉がついてくれば言うことなしだ。
 もうひとつはストレッチ。メインは大腿四頭筋を伸ばすことで、一日五回は必ず行っている。その他ハムストリングスも同様に五回行い、とにかく膝まわりの筋肉をほぐすことを心掛けている。実際にストレッチ後は、驚くほど膝まわりが軽くなる。
 三月からの山歩きに備えて、何とか脚のガタを低減できればと、奮闘中の毎日である。