つるつる温泉・大多摩湯めぐり

 女房とめぐる日帰り温泉第三弾は『つるつる温泉』。
 これで大多摩湯めぐりスタンプラリーは、残すところ、“のめこい湯”、“もえぎの湯”、“小菅の湯”の三か所で、五日市方面の温泉は今回が最後となる。
 実は大昔に一度利用した際、印象があまりいいものでなかったので、その後は気にも留めてはいなかったが、現在のつるつる温泉は果たして如何に。
 
 四月七日(金)。朝からどんよりと雲がかかり、いつ降り出してもおかしくない空模様。こんな日に山歩きをする人は少ないはずなので、下山後に立ち寄るハイカーの多いつるつる温泉は、きっと空いている。
 武蔵五日市駅前を右折すると、
「今日はこっちなんだ」
 女房が周囲を見回している。
「よくわかったじゃん」
 三回も続けて同じルートを走ってくれば、さすがの女房も道を覚えたらしい。これまでに行った数馬の湯と瀬音の湯は武蔵五日市駅前を左折する。 
 秋川街道のつるつる温泉入口の交差点を左折すると、いきなり周囲は山間となる。左側を流れる平井川に沿って道は延びるが、この川は中流域でもヤマメが生息する清流なのだ。

 860円(2023/4/16から960円)×二名を払って浴場へ向かった。
 男湯には自分を含め八名が入っていたが、内湯、露天と全体的に広く、余裕をもって湯に浸かれた。湯温は好みのぬるめで、おそらく40℃ほどか。
 泉質は 無色澄明無味無臭のアルカリ性単純温泉とうたってはいるが、口に触れるとかなり塩っ辛い。殺菌のための塩素が多めに入っている証拠だ。キャッチである『ひとたびお湯につかれば、その名の通りお肌がつるつるします!!』は、ちょっと違う感じがする。ただ、広々とした浴槽は文句なしにリラックスでき、個人的には及第点をあげたい。

「おなかすいたね」
 施設内に食堂は二か所ある。我々は名称に釣られて“パノラマ食堂”へ入ってみた。
「天丼にしようかな」
「また天丼かよ。ここ、山ん中だぜ」
「じゃ、釜めし」
「俺もそれにする」
 すかさずコールボタンを押すと、ピンポ~ンの音が鳴り響いた。
 ところがだ、待てど暮らせど注文を取りに来ない。ちょっと苛つきもう一度ボタンを押す。
 ワンタイミングをはさみ、四十路前後と思しき女性スタッフが、重い足取りで近づいてきた。
「山菜釜めしと五目釜めし、お願いします」
「三十分ほどかかりますが」
「いいですよ」
 伝票に記入しているときも含めて、極めて不愛想である。その後、しっかりと三十分かかって注文の品が運ばれてきた。

「釜が熱いので注意してください」
 相変わらず不愛想だったが、気を取りなおして釜の蓋を取ると、ふわぁ~っといい香りが立ち込めた。米も立っていて良い炊け具合だ。セットにはみそ汁のほかに小サラダと刺身こんにゃくがついている。
「おいしい」
 女房の一声だ。
 具材とだしのうまみが御飯にほど良くしみこんでいて、味の濃さもちょうどいい。不愛想なスタッフでやや評価が落ち始めていたが、これで一気に逆転となりそう。
 二十年前も、そして今回も、ちょびっと引っかかるつるつる温泉であるが、女房によれば、温泉入浴だけだったら、今までで一番良かったとのことである。ちなみに私は数馬の湯が最も肌に合った。


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