春爛漫

菜の花畑

朝夕の寒さの中にも、少しづつ空気の柔らかさを感じるようになったこの頃。毎度のことだが、桜開花情報が気になってくる。
昨年の今頃は思いもよらない厄介事に翻弄されてしまい、カメラを持って出掛ける気分には到底なれなかったから、今年はその分も含めて楽しんでやるつもりだ。

思い起こせば数年前。気持ちの良い陽気を追い続けるうちに、気が付けば南伊豆まで足を伸ばしてしまったことがある。
最初は伊豆高原辺りでぶらつくつもりだったが、車のウィンドーから流れこむ爽やかな空気が「もっと南へ行こう!」と誘ってきたのだ。
目的はなくとも行けるところまで行って、大海原を見ながら思いっきり深呼吸ができればそれも良しと思った。

「おおっ、こりゃ凄い」

下田を越えて更に車を走らせると、マーガレットライン入口の交差点脇に広がる“菜の花畑”が見えてきた。目映い黄色の絨毯の脇にはピンクの花弁を持つ河津桜が立ち並び、このコントラストが実に見事だった。
これぞ春爛漫。そこに佇めば体中に春色が染み込んでいくようだ。

黄昏のひと時

ピーナッツ

私は無類の酒好きである。
高校生の頃からやり始めた晩酌習慣によるものか、アルコールのない晩飯はちょっと考えられず、一日の終わりにはほろ酔いがもたらす微睡みがあって当たり前という認識さえ持っている。
アルコールなら何でもウェルカムだが、一番は日本酒、その次は焼酎か。以前はウィスキーを好んだが、この頃では飲み心地がきつく感じるようになり遠ざかっている。
安月給も多少は関係しているが、何故か昔より高価な酒には興味が沸かず、専ら庶民レベルを探しては試し飲みというのが好きなやり方だ。一升1,000円前後で好みを見つけたときなど、単純に嬉しくなり、大概5~6回は続けて買ってしまう。焼酎も甲類にポッカレモンを垂らしただけのシンプルな飲み方が好きで、彼此10年以上は続けている。本格焼酎なら“いいちこ”が良い。

休みの日。夕刊が届くとキッチンでつまみを漁る。
豆好きなので、皮付きピーナッツ、ミックスナッツ、柿ピーは常時欠かさない。この頃では甘くて香ばしくて止まらなくなる、ストライクイーグルの“ハニーローストピーナッツ”もよく仲間入りする。
適量を小皿に盛ったら、小さなグラスに氷を一個、それに焼酎を注げば、あとは限りなく寛げる黄昏のひと時を待つのみ。
夕刊のページをめくっては、ポリッ、そしてチビッ。
これをゆっくりとゆっくりと繰り返す。
そのうちに何とも言えない幸せが体中に満ちてくるのだ。

まだまだ寒い

rikkyou-

用事のない休日、夕方が近づくと無性にカメラを持って出掛けたくなる。
特にきれいな夕焼け空が望めそうなら尚更だ。武蔵境の緑道を歩けば陽光が斜に入り、木々の枝を茜色に染め、そこから作り出される立体感がレンズを誘う。
そう、この頃の楽しみは、“お散歩スナップ”。
見慣れた地元の町並みも、天候、光、季節等の条件が加われば、時として新たな形として生まれ変わり、その行程は興味深い。
先達て、定番の撮影ポイントである三鷹の陸橋へ行ってみたら、階段を上がったところに人集りができていた。近付いてみるとどうやら沈む夕陽の見物らしい。
空気が澄んだ日、この陸橋からは富士山を臨むことができ、時として太陽はその背後へと沈む。そう、チャンスと撮影テクニックさえあれば“ダイヤモンド富士”をゲットできる場所なのだ。
陸橋の北端では60歳代中程と思しき男性が、望遠レンズを装着したNikonのフィルム一眼レフカメラを三脚へ乗せ、不動の姿勢で沈み行く夕陽を見つめている。光輝く一瞬を狙っているのだろう。一応、私もカメラを向けてみたが、お散歩スナップ用の10-30㎜では到底その様子は捉えようがない。
夕陽の赤みが更に増してくると、一点を見つめている見物人達の顔が光り出した。空かさず彼らのサイドへ回り込み、2枚、3枚と撮っていく。
それにしてもなんて平和な一時なのだろう。ここでこうしてカメラを操作していることに感謝しなければとしみじみ思ってしまう。
んっ?!
いきなり鼻水が垂れてきた。
気が付けば結構気温が下がっている。日中は穏やかでも日が落ちればさすがに2月だ。油断をすれば風邪をひいてしまうだろう。そろそろ退散のタイミングである。
そう、一風呂浴びたら冷酒でもやりましょうか。