人波・a-nation

味スタ

8月29日(土)~30日(日)の二日間。職場の目の前、味の素スタジアムでは、エイベックスグループが主催する“a-nation”が行なわれた。さすがに恒例のビッグイベントだけあって、雨模様にもかかわらず、集客一日5万人と、恐ろしい人波が静かな町“飛田給”を埋め尽くした。
飛田給駅前には、セブンイレブン、ローソン、ローソン100、スリーエフ、マクドナルド、オリジン弁当、庄や、バーミヤンと並んでいるが、どこも活況を博し、午後に飲み物と甘いパンでも買いに行こうと馴染みのローソン100へ寄ってみたら、レジにできた行列は店内を一周していた。
おにぎりやパン等は既にSold Out間近で、しょうがなく残りものを買うことにした

「お客さんいっぱいじゃない!儲かっちゃうね!」
「駄目っすよ、オーナーはいいかもしれないけど、俺たち従業員は関係ないっすもん」

とは、頑張り屋の店長。
まっ、確かにそうだ。

30日(日)の夕方に、弊社の常連さんであるタクシードライバーが来店したので聞いてみた。

「昨日は儲かったんじゃないですか?!」
「だめだめ、土曜はお客さん少なかったよ」

意外な答えである。

「お客に聞いたんだけどさ、何やら“ただ券”配ってたらしいよ」
「えっ、ほんとに?! そりゃ驚きだな~」

a-nationもそろそろ潮時か?!
調べれば出演者の半分以上は一度も見たことも聞いたこともないアーティストばかりで、一部の熱狂的なファン達によって成り立っている感は否めない。
但、買い物の不便さはあるとしても、コンサートやJリーグを行うたびに飛田給の街が活況を帯びることは嫌いではない。
人波は不思議と気分を高揚させ、マンネリ化した毎日に小さな抑揚をつけてくれる。
それに普段見ることのできない人種を観察できるのも、結構な楽しみなのだ。

調布市・小型機墜落事故

墜落事故

7月26日(日)。調布市で起きた小型飛行機墜落事故。警察の捜査が進むほどに、航空会社そして調布飛行場等々のずさんな運営管理が露わになるという、憤慨この上ない内部事情に世の中の厳しい目線が集まっている。

調布飛行場は職場の目と鼻の先にある。この日、ショールームでお客さんと談話していると、突如味の素スタジアムの東側に黒い煙が立ち上がり、その尋常でない様に、何らかの事故ではないかと直感した。

「あの煙、味スタの広場から上がってるぞ」
「カートがクラッシュか?!」

味パンダ広場ではフォーミュラバトルというカートスクールが定期的に開校されているので、最初はそこで何らかの事故が起きたと思ったのだ。
ところが数分も経たないうちに夥しい数の消防車が集結し始め、これはカートレベルなどではなく、明らかにもっと大規模な事故によるものだろうと、先ずは手元にあるPCでYaHooニュースを開いてみたのだ。
そこのトップに掲載されていたのが今回の惨事である。

墜落の原因は分からない。しかし、調布飛行場では禁止されている筈の遊覧飛行が、パイロットの訓練と称して日常茶飯事で行なわれていたこと、提出されていたフライトスケジュールでは必要としない多量の航空燃料を積んでいたこと、当該機を含め全ての保有機に対して慢性的な整備不足があったこと等々、〝果たして運営管理は存在したのか?!〟と疑ってしまうような、どす黒い要素が次々と明らかになってきたのだ。これはどうみても起こるべくして起きた【過失】と言わざるを得ない。

〝これまでなかったのだからこれからもない〟

もしもこんな身勝手きわまりない風潮があったとしたら、これは紛れもない犯罪だ。
日常生活の頭上を飛び交う航空機と道路を走る車とでは、危険を考える上での尺度があまりに異なる。道路にはガードレール、防護壁、更には民家との間に壁がある。一方、空へ向けては風雨を凌ぐだけの屋根しかなく、大きな質量へ対しての防御力はあまりにも小さい。

〝機械は壊れる〟

これ、真理。
私もオートバイ業界に30年近く従事している経験上、機械というものに対し、様々な角度から接し考えてきたつもりだが、世界で最も生産クオリティーが高いといわれるホンダのバイクでさえも、壊れる時は壊れるのだ。
だからこそ、日頃の車体管理が何より大切であり、壊れる前に先手を打てる環境作りこそが安全運行の基本になる。

事故後、プライベート飛行は禁止されたというが、今でも定期便運行は従来通りに行っている。
近隣住民の恐怖心と複雑な胸の内は十二分に分かるところであり、関係各所には〝機械は壊れる〟という考え方、そして眼下にはノーガードの市民生活があるとの現実を再度噛みしめていただき、真摯な運営管理の構築を心から願うものである。

西久保公園

西久保公園

二日間の連休は生憎の空模様となってしまったので、ここは休養に徹することにした。なぜかこの頃疲れが抜けることがなく食欲や気力も衰退気味だ。単なる疲労の蓄積なのか、はたまたどこか内臓でも悪いのか、何れも定かでないが、これまでに経験したことのない体調であることに間違いはなさそうだ。
この朝も少々怠さが残っていたが、NHKの連続テレビ小説「まれ」は見逃せないので、8時前には起床しTVの前に陣取った。世界一のパティシエを目指し、横浜で厳しい修業にトライするうら若き女性の物語にはついつい見入ってしまう。
朝食後、一旦は朝刊を広げてみたが何となく気乗りがせず、近所の西久保公園に咲くアジサイでも眺めに行こうかと、V2を片手に家を出てみた。

この西久保公園、実は旭化成の社宅跡地であり、遙か昔、私が小学校へ入学する頃は立派な建物が何棟も並び、企業規模の大きさを誇示するかのような雰囲気があったことを覚えている。
そしてここへ来ると、胸にチクリとくる“事件”を思い出すことがある。

小学校入学後、最初にできた友達“瀬戸くん”はこの社宅に住んでいた。
ある日彼の家に遊びにいった時のことだ。

「いいもの見せてあげる」
「なに」

差し出されたものは、虫籠に入った小さな蛇だった。
焦げ茶でテカリを発するきれいな体表が印象的で、見た瞬間から釘付けになってしまった。

「凄いね!」
「お父さんが捕まえたんだ」

そんな大昔でも、近所で蛇を見ることは珍しかった。トカゲやヤモリは屡々目にすることができたが、蛇は探して探せるものではなかった。
小さい蛇は篭の中で動き回り、どこかに隙間があれば脱出を試みそうな雰囲気を感じ取れた。
観察を続けるうちに、なぜかふとある思いが閃いた。
篭の中でなければどの様な動きを示すのだろうかと、、、

「篭から出してみない」
「やだよ、逃げられちゃう」
「こんなに小さいし、僕たち二人が囲んでいれば大丈夫だよ」

最初は頑なに拒否していた瀬戸くんだったが、徐々に私のアイデアに頷くようになり、終いには社宅の庭に放ってみることにも同意した。
私と瀬戸くんが向かい合ってしゃがみこみ、その真ん中に篭を置いてそっと蓋を開ければいくら蛇でも逃げ通せることはないのだ。

「大丈夫かな」
「こうして囲っているから平気だよ」

緊張が走る指先で、ゆっくりと蓋を開けた。
とその時である。
小さな蛇はそれまで一度も見たことない俊敏な動きを見せ、あっと言う間に近くの生け垣の中へ姿を消したのである。

「うわー、どうしよう」
「探そう!」

いくら俊敏だって今の今だ、それほど遠くへ行けるわけもない。
急いで生け垣を両手でかき分け蛇の行方を追ったが、呆然とする我々をよそに、既に蛇は完全に気配を消していた。
それは一瞬の出来事だった。
気が付けば、傍で肩をふるわせ、しゃくり泣きをする瀬戸くんの声だけが、いつまでもいつまでも頭の中を回っていたのである。