バックアップ騒動の続きである。
ファイルの整理が進んでいくと、北海道の道南へ家族で旅行したときの写真がたくさん出てきた。懐かしさのあまり、一枚一枚をかみしめながら目を通していった。今からちょうど二十年前の夏のことである。
脳裏には北の大地の空気感、音、光、そして匂いまでもが克明に蘇り、胸を締め付けた。
「盆休みに北海道へ行かないか」
「いいわね。おいしいものいっぱい食べたい!」
二泊三日の慌しい日程だったが、小樽一泊、函館一泊の家族旅は、北海道を“他にはない別格の地”という印象を強く焼き付けた。
主目的は家族サービスに偽りはなかったが、Nikon・D100を年頭に入手してから、自分でも驚くばかりの写欲が膨らんでいて、被写体天国と決め込んだ北の大地・北海道で撮影ができると思うと、仕事をしていても妙に落ち着きがなくなり、出発までまだ一か月もあるというのに、予備のCFカードやバッテリー等々も用意しなきゃと、新宿のヨドバシカメラへ馳せ参じ、PLフィルター、携帯用のフィルターケース、雲台のクイックシュー、風景撮影の攻略本等々、余計と思われる品々も大量に買い込んでしまう始末。まっ、それだけ期待が大きく膨らんでいたってことだ。