ひと月ほど前のことだが、突如写真が撮りたくなり、レインボーブリッジの夜景でも狙おうと中央線に飛び乗ったことがある。陽が落ちるのは早く、田町で下車すると見る見るうちに周囲が暗くなっていくので、最後はほとんど小走り状態。プロムナードに到着したときは、冬だというのにけっこうな汗をかいていた。ただ、これが楽しかった。都会で撮影をすることはめったになかったから、三脚をセットするにも、カメラの設定を確認するにも、なにもかも新鮮に感じたのだ。
一月二十六日(木)。ということで、今度は新橋にあるカレッタ汐留「SKY VIEW」へ行ってみることにした。
“東京の夜景”と検索して出てくるさまざまな場所の中でも、なかなかの評判だ。アクセスはとても簡単で、新橋駅は汐留地下改札を出て、そのまままっすぐ五分も歩けばカレッタ汐留の地下二階にぶち当たる。SKY VIEWは四十六階にあるので、直通エレベーターに乗りこむ。素晴らしいスピードで上昇するエレベーターから望む景色も素晴らしく、いやおうなしに期待感が膨らんでいく。
到着すると先客がいた。SKY VIEWは四つの窓と一つのテーブルしかない小さなエリア。単に眺めるだけなら問題ないが、三脚を立ててしっかりと撮影となると、場所の確保が必要だ。窓は四つ。つまりカメラマンの定員は四名のみ。先客は三名だったので、一番左側を陣取ることができた。ラッキーである。
レインボーブリッジ方面の眺めは夜景でなくても十分絵になる。被写体としてしっかりと見渡せば、東京はなんて美しいところだと、誰しもため息が出るはずだ。徐々に陽が落ちてくる様子を眺めていると、ふと思った。スマホにDIANA KRALLの<LIVE IN PARIS>を入れてくればよかったと。たぶん、まじめに泣けてくるだろう。
今回の機材は先回と同様、SONYのα6000+Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSSのベストコンビ。もちろん三脚はSLIKのエアリーS100である。20L以下の小さなバックパックに撮影機材がすべて収まるのだから嬉しくなる。当然ながら機動性はこの上ない。
ちなみに、撮影機材等々、観察したお隣さんたちのことを少々。
右端は二十代後半の男性。ずっと窓辺に膝立ちのままだ。カメラはα6000のような四角でコンパクトなミラーレスだが、メーカーや機種は不明。右から二番目はおそらく三十代と思しき女性。カメラはNikonのZである。その隣も女性なのだが、間違いなくこの二人は姉妹。顔がそっくりだし、もしかすると双子かもしれない。ともにZを使っていて、私が帰るころもまだまだ真剣にバックモニターとにらめっこをしていた。やけに気合いが入っている。
きっと彼も彼女たちも、人口の光が織りなす東京の美しさに、魅了されているに違いない。