SONYのカメラ

 クリスマスイブの夕方、リチャードを連れて井の頭公園へ出掛けてみた。中古品だが、先日入手したSONYサイバーショット・RX100Ⅲの試し撮りが目的である。

 長年アウトドアでは主にNikon1・V2を愛用してきたが、登山となると、カメラがウェストベルトポケットに入ると非常に便利ということで、総合性能には目をつぶっても、すっぽりと収まるCOOLPIX・S8200を使っていた。ただ、どうしてもV2を使いたい場合は、UONNER のカメラホルスターを用いて、ショルダーハーネスに取り付けていたが、三点支持で登る岩場とかでは邪魔になることもあって、以前からコンデジサイズだが高性能なものを物色していたのだ。条件は二つ。ウェストベルトポケットまたは小型ポーチに入ること、そしてファインダーが装備されていること。S8200もそこそこの写りはするが、ファインダーがないため、光の入射角やシチュエーションによっては、どうあがいても構図を計れない場合がある。そもそもV2を手に入れた最大の理由はコンパクトなボディーながらファインダー付きという点であった。一時、初期型GRデジタルを使っていた時期もあったが、その厚い色合いは良かったものの、やはりファインダーがないことで何度も撮影チャンスを逃がすことがあり、結局手放すはめになった。

 RX100Ⅲは手の大きい人だったら使い辛いほど小さい。ところがS8200と殆ど同じ大きさのボディにファインダーは装備されているし、イメージセンサーもV2と同じくインチサイズを採用している本格モデルなのだ。ストラップで首から下げてみると、その重みはV2以下。ポップアップタイプのファインダーは、出しっぱなしでも全く邪魔にならない。

 操作系はα6000と概ねいっしょなので、使い始めから不自由なく撮影ができた。公園に到着すると既に街路灯が灯っていて、やわらかい光景が広がっている。それではと、テーマを夕暮れにして被写体を探し回った。ただ、リチャードにとっては久しぶりになる公園。新たな匂いに引きつけられ、クンクン、クンクンとなかなか歩が進まない。太陽が沈むのは早く、ちょっと焦る。
 いせや公園店の前を通ったとき、ちらっと店内を覗くと、若い女性二人がうまそうに焼き鳥を頬張っている。半分ほど減った生ビールのジョッキが妙にそそる。それにしても七井橋通りはいつきても賑やかだ。

 二〇〇二年にNikonD100を購入して以来、自他ともに認めるNikonファンで通してきた。Fマウントがもたらす写真ライフのメリット、手に馴染むボディ等々、ひとつの不安もなく快適そのもので使っている。腰を据え、三脚を用いてじっくり風景を切り取るときなど、D600+SIGMA24-105は最強の武器になる。カチッとくる解像感と絶妙なグラデーションは風景写真になくてはならない要素だ。

 カメラ業界は、長らくの間CanonとNikonの二大メーカーが牽引してきた。車業界でいえばトヨタと日産のような関係だろう。デジタル時代へ入ってからもCanon・EOSとNikon・Dシリーズのバトルは、良い意味での高性能化に加速をつけた。そして私も含めて多くのカメラファンは、この二大体制が永久に続くものだと思っていただろう。ところが二〇一三年にSONYが世界初のフルサイズミラーレスのα7を発売すると、緩やかに業界のバランスに変化が生じていったのだ。αには様々なシリーズがあるが、どれをとってもジャンルナンバーワンと言っていいほどの高い人気を博した。当初はいくら高性能でも使い慣れたNikonが一番と、それほど関心は沸かなかったが、APS-Cのイメージセンサーを搭載するα6000が発売されると、嫌でもその高い評価を目にするようになり、あんなちっちゃいカメラがD7000と同性能なのかと、興味が一気に膨れ上がった。
 その後、興味は物欲へと膨らんでいき、ついにはα6000を入手。Nikonファンなれど、ついつい頷いてしまう使い勝手と画質の良さに心酔。そしてついにNikon1・V2の役目が、SONY・RX100Ⅲへと交代しそうな雲行きになってきたのだ。


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