5月30日(月)付けの読売新聞に、昨今の熊事情を紹介する記事が載っていた。
私も含め、山歩きや山菜採りなどを楽しんでいる方々にとって、熊は脅威なる存在の筆頭であるが、5月に入ってから全国各地で相次ぐ目撃情報が入ってきているというから心配になる。しかも複数の死傷者が出ていて不安は膨らむ一方だ。特に5月21日(土)、22日(日)に秋田県内でタケノコ狩りの為に山へ入った男性二人が死亡しているのが見つかった際、その外傷から、いずれもツキノワグマに襲われたものと断定されたのはショッキングだ。
岩手県で40年以上狩猟を続け、何度もツキノワグマに出くわした経験を持つ、大日本猟友会会長の佐々木洋平さんは、
「子供を連れた熊は特に警戒心が強く、猟師でも手に負えない時がある」
と警鐘を鳴らす。
ツキノワグマの体長は1.0m~1.5mほどだが、一般人が襲われたらひとたまりもないとのことだ。
熊の被害数は年ごとに大きく異なる。
日本ツキノワグマ研究所理事長の米田一彦さんによれば、熊のエサとなるブナの実(ドングリ)が、昨秋まれに見る豊作で、母熊の栄養状態が良く、今年は熊が親子で活発に移動するケースが多いとみられる。
米田さんは、
「夏から秋以降、成長した小熊が人を襲う恐れもある」と指摘した。
環境省や自治体は、入山時に対策を怠らないよう呼びかけている。
長野県軽井沢町で熊の追い払いなどを行うNPO法人ピッキオの田中純平さんは、
「普通なら熊が人間を避ける。鈴をつけるなどして自分の存在を知らせることが有効」と語った。
一方、紀伊半島や四国など五つの地域ではツキノワグマが減少傾向にあり、環境省のレッドリストで地域的に絶滅する恐れがありと言われている。特に四国のツキノワグマの生息数は10頭~数10頭と推測され、世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどが保護のために正確な生息数調査を行っている最中だ。
島根県では熊の食害対策で、柿園が自治体などに連携して、熊が近づけない防除柵の設置などに取り組んでいる。
WWFジャパンの担当者は、
「人口減少や高齢化で、里山の田畑の管理が行き届かなくなり、山から下りてきた熊との遭遇が増えている」と指摘して、互いの領域を侵さないような共存策を考えたいと話している。
北海道に住む国内最大の陸生動物・ヒグマの動きも活発化している。
北海道庁によると、2006年度に511件だった目撃数は、2015年度に1,200件に膨らんだ。毎年のように人が襲われ、1989年~2015年の間に14人が死亡、20人が負傷した。
山の幸を求めて山奥に入った際に遭遇することが多く、事故の38%が山菜狩りの盛んな4~5月に、35%はキノコ狩りのシーズンである9~10月に集中している。
北海道庁は昨年12月、ヒグマの2012年度の推定生息数を10,600頭と発表したが、これは1990年度と比較して約1.8倍の増加になり、近年では市街地や幹線道路でも多々その姿を目撃するという。
多数のヒグマが生息する知床半島で自然ガイドをしている若月識さんは、昨年7月に地元の国道で人の乗った乗用車にヒグマがのしかかり、車体を揺らすというのを目撃した。体長1.6mの母熊で、付近には2頭の小熊がいたとのことだ。その後、乗用車が走り出すと3頭は森の中へと消えた。
15年間のガイド生活で始めて見る光景だったようだが、一部終始を目の当たりにした若月さんによると、乗用車の方からヒグマに近付いたように見えたという。
若月さんは、
「共存していく為に、人間はヒグマにプレッシャーを与える距離まで近付いてはならない」と語った。
6月にもなると山々の新緑は更に色濃くなり、開花する植物も一気に増えていく。
そう、待ちに待った夏山シーズンの到来なのだ。
しかし前述にある通り、山奥へ分け入ることは野生動植物の領域に足を踏み入れることであり、縄張りへの侵犯とも捉えることができる。
これを念頭に置き、周到な準備と真摯な気持ちをもって“おじゃま”しようではないか。
※以上は、5月30日読売新聞の記事より抜粋し記述した。