ひと昔、多くの中免ライダーは、限定解除ライダーに対して少なからずの憧れやコンプレックスを持っていた。乗ることのできるバイクに対して制限が入ることへのアレルギー反応といったところだろう。
足として使うことはもちろん、箱根で思いっきりスポーツランをするにも、2サイクル250ccモデルなら十二分にその役目を果たせるが、目の前を悠然と走るオーバーナナハンを見てしまうと、反射的に余計な想像が膨らんでいく。
ー スロットルを開けた時、どんな感じだろう。
ー リーンは重いのかな。
ー 高速道路は最高でしょ。
悩むは、限定解除に挑戦するか、はたまた中免に留まるか、、、
20回受験しても合格できない知人の話を聞けば、この選択に強いジレンマを覚えてしまう。
1996年。そんな流れに大きな変化が生じた。
ハーレーダビッドソンを筆頭とする外国二輪車メーカーが、日本の難関且つ不可解な二輪車限定解除試験の在り方に改善を求め、ついには公認自動車教習所でのカリキュラムを踏めば、誰でも大型二輪免許証を手に入れることが可能になったのだ。
制限のない自由なバイク選びは市場の活況へと繋がり、我々の業界は大いに潤ったものである。
このケースにやや近いのが、昨今のカメラ事情。
初めてデジイチを手に入れようとすれば、一般的にキヤノンならEOS Kiss、はたまたニコンならD3300あたりをチョイスするだろう。初心者向けモデルと言っても、メーカー技術の粋を集めた最新型は、一昔前のプロ機を完全に凌駕するカメラ性能を持ち合わせる。よって撮影の際やプリントアウト後のクオリティーに関して何ら不満が出ることはなく、もちろん本格的な作品作りにも没頭できる。しかしだ、趣味とは恐ろしいもので、それが完全に理解しているにも関わらず、
ー フルサイズって、どんな感じなんだろう。
ー ぼけの美しさでそんなに差が出るものだろうか。
ー 風景写真ならフルサイズって言うもんな。
デジイチの世界に明るくなってくると、終いにはこんな煩悩に悩まされることになる。
手持ちの性能に満足しつつも、道具だけはより最高のものを欲するのが人情。これはカメラの世界にのみならず、趣味と称するものには往々にして当てはまる傾向だ。
黙々とwebサイトでD610のことを調べ上げている自分が怖い…。