大岳山~鋸尾根

5月29日(木)。
電車を待つ鳩ノ巣のベンチで地図を広げる。
私はいつも山地図の使うエリアだけをスキャンして持ち歩くようにしているが、こうすると拡大印刷ができるので老眼もちには使い勝手がいい。更には元の地図もきれいに保てるので一石二鳥なのだ。
今回は久々に御岳山ケーブルカーを使って、大岳山~鋸山~JR奥多摩駅というルートを選んでみた。ゆっくり歩けばトータルで6時間を越えるコースであり、テン泊前の調整にはお誂え向きといえる。

昨今の登山ブームにはめざましいものがあるが、JR御嶽の駅前から出るケーブルカー行きのバスでも、朝の通勤ラッシュと見間違うばかりの活況ぶりを見た。ざっと数えても60名以上は乗り込んでいるようだし、殆ど全員が大きなリュックを背負っているのだから、その過密さは通勤ラッシュ以上かもしれない。それと注目すべきは女性ハイカーが多かったこと。今回は若い子達も4~5人見かけ、過密な車中に花を添えていた。
“ケーブルカー下”に到着すると、そこから更に麓の滝本駅まで200メートルほどの軽い登りを歩く。
改札ではマイカーで訪れた人達と合流し、長蛇の列となった。

滝本駅から終点の御嶽山駅まで、標高差423m、平均斜度22度26分を6分間で走行するケーブルカーはプチスリリングも味わえる。車窓から見える麓の景色を見つめていると、

ー もしもワイヤーが切れたら、完全に終りだな、、、

垂直に近い傾斜に身を置けば、恐らく誰でも余計な想像が沸き上がってくるものだ。

ケーブルカーからはき出されたハイカー達は、それぞれの行き先へと散っていった。

意外だったのは、私と同じ方向へ足を向ける人が極めて少ないことだ。大岳山、日の出山、ロックガーデン等々、御岳山界隈の人気スポットへは先ず御嶽神社へ進まなければならない。多くの人達は、近場の富士峰公園か大塚山方面へ向かったのだろうか。

御嶽神社のきつい石段を登り、途中左へ折れて大岳山を目指した。
大岳山は標高1,266.5mとそれほど高い山とは言えないが、多様な登山ルートを備えた奥多摩の名峰とも呼ばれ、初心者からベテランまでが楽しめる山として著名なのだ。

この日は何故か気味が悪いほど体調が良く、連続する登り坂に差し掛かっても歩行速度が殆ど落ちず、休憩も5分ほど取れば力が戻ってくるという素晴らしいものだった。
確かな要因は分からないが、昨年の夏から使い出したトレポが予想以上の効果を出しているのかもしれない。ステップにはあまり役立たないが、だらだらとした長い坂には滅法威力を発揮し、明らかに脚力をフォローしていることが体感できる。
大岳神社前で一服した後も、余力を感じつつ頂上直下の急坂を登り切った。

「急に雲が出てきたな」
「午後には雨が降るってさ」

隣で寛いでいる男性3人組の会話である。
そうなのだ。尾根を歩いていた時は木々の間から青空も見ることができたが、今、頂上から南西の方角を望むと、大きな黒い雲がせり出してきていて、日差しを遮り、吹く風も幾分強くなってきた。
雨が降ってくるのも時間の問題だろう。
ウェザーニュースの奥多摩エリアは、15:00からが雨と出ていたから、雲の進行が早まっているのだ。
その時、遠雷が耳に入った。

― のんびりはできないな。

この先、鋸山を経て奥多摩駅までは相当な距離を残す。膝にダメージの掛かる下りがメインになるので、大凡4時間は見なければならない。
ここでゆっくりと昼食を取ろうと思ったが、土砂降りになればこの先タフなコースになることは間違いないので、おにぎりをひとつ口に入れると、早々に出発することにした。
ところがこんな状況の中、後から上がってきた30代後半と思しき単独女性は、ストーブやコッヘル、そして食材を広げ、これから腰の据わったランチに取り掛かろうとしている。隣の3人組も撤収の準備をしているのに、何とも微妙な選択である。その風貌、装備からはベテランとも見受けられるが、、、

大岳山は頂上部が尖っているので、下り始めは急坂の連続になる。決して難しくはないが、これが雨でぬかるんでいたら滑りやすく注意が必要だ。
一気に高度を下げて尾根道に入った。

本来はとても快適な道だが、ここにきてついに雨が降り始め、気温も更に落ちてきた。
樹林帯なので直接雨に打たれることはないが、時間を追うごとにレインを出そうかと思案するほど降りは強くなってきた。
辺りはますます暗くなり、足元を注意しながらの山歩きがひたすら続いた。

とその時、
突如背後で物音が。

― うぉ、く、熊か?!

「すんませ~ん、お先です」

何とトレランである。しかも間を入れて二人続いた。
そう言えば、ここから御前山へ続く尾根筋はトレラン大会のお馴染みコースなのだ。雨風の音に遮られて、背後に迫るまで全く気が付かなかったが、それにしても凄い走りだ。幾ら背負う荷物が小さいからといって、あのスピードでアップダウンを駆け抜けるのは容易なことではない。
鋸山山頂へ到着、ここで長めの休憩を取った。

鋸尾根を半分ほど下ってきた辺りで天候は急に回復へと転じ始めた。
どんより空に青空も見え始め、周囲もぱっと明るくなり気温も急上昇。ザックからタオルを出して首へ巻き、今度は汗を拭き拭きの下山となる。

今回は不思議に膝の調子が良く、終始気持ちのいい山歩きができてほっとしている。
一生続くであろう腸脛靱帯炎との付き合い方に、新たな対策ノウハウを手に入れられ、またひとつ自信が湧いてきた思いだ。

次回はテン泊で、星空を肴に澤ノ井をぐびぐびとやろうかな。

体力維持

golf-hiji日頃のトレーニングは軽いダンベル運動しか行っていないのに、2ヶ月ほど前から左肘が痛むようになり、一向に治る気配がない。
まだ医者に診せていないので何とも言えないが、恐らくゴルフ肘に近い炎症が起きているものと思われる。
仕事や日常生活に影響するほどの痛みではないので、何となくそのままにしているが、やはり一度は医者に相談をした方が良さそうだ。
しかし、大きな負荷を掛けていたなら頷けもするが、たかが3㎏のダンベル運動ごときでダメージが蓄積するとは本当に情けない。やはり老化は着実に進み、関節や筋が弱くなってきているのだろう。
しかしトレーニングは絶対に欠かすことのできない健康管理の重要項目でもある。
何故なら、筋力の退化は加齢に乗じて加速するからだ。
昨年の秋頃、腰痛の為に約一ヶ月間トレーニングを休んだことがあるが、想像以上に筋力が低下してしまい、元の状態に戻すのに同じく1ヶ月を要した。
裏返せば、永続する日々のトレーニングを履行してこそ、自由に山歩きや撮影行へ出掛けられるというもの。
体力維持は何をするにも基本となるので、間違えの無いよう計画的に行っていきたい。

趣味とは

ひと昔、多くの中免ライダーは、限定解除ライダーに対して少なからずの憧れやコンプレックスを持っていた。乗ることのできるバイクに対して制限が入ることへのアレルギー反応といったところだろう。
足として使うことはもちろん、箱根で思いっきりスポーツランをするにも、2サイクル250ccモデルなら十二分にその役目を果たせるが、目の前を悠然と走るオーバーナナハンを見てしまうと、反射的に余計な想像が膨らんでいく。

ー スロットルを開けた時、どんな感じだろう。
ー リーンは重いのかな。
ー 高速道路は最高でしょ。

悩むは、限定解除に挑戦するか、はたまた中免に留まるか、、、
20回受験しても合格できない知人の話を聞けば、この選択に強いジレンマを覚えてしまう。

D610-1-11996年。そんな流れに大きな変化が生じた。
ハーレーダビッドソンを筆頭とする外国二輪車メーカーが、日本の難関且つ不可解な二輪車限定解除試験の在り方に改善を求め、ついには公認自動車教習所でのカリキュラムを踏めば、誰でも大型二輪免許証を手に入れることが可能になったのだ。
制限のない自由なバイク選びは市場の活況へと繋がり、我々の業界は大いに潤ったものである。

このケースにやや近いのが、昨今のカメラ事情。
初めてデジイチを手に入れようとすれば、一般的にキヤノンならEOS Kiss、はたまたニコンならD3300あたりをチョイスするだろう。初心者向けモデルと言っても、メーカー技術の粋を集めた最新型は、一昔前のプロ機を完全に凌駕するカメラ性能を持ち合わせる。よって撮影の際やプリントアウト後のクオリティーに関して何ら不満が出ることはなく、もちろん本格的な作品作りにも没頭できる。しかしだ、趣味とは恐ろしいもので、それが完全に理解しているにも関わらず、

ー フルサイズって、どんな感じなんだろう。
ー ぼけの美しさでそんなに差が出るものだろうか。
ー 風景写真ならフルサイズって言うもんな。

デジイチの世界に明るくなってくると、終いにはこんな煩悩に悩まされることになる。
手持ちの性能に満足しつつも、道具だけはより最高のものを欲するのが人情。これはカメラの世界にのみならず、趣味と称するものには往々にして当てはまる傾向だ。

黙々とwebサイトでD610のことを調べ上げている自分が怖い…。

写真好きな中年男の独り言