膝の具合 Part 5

 健康に気を使ったり、体を鍛えてる人はさぞかし多いことだろう。そんな人達の気持ちはよくわかる。私自身、快調な心と体を維持することは、決して大袈裟ではなく、人生を歩むうえで最も優先すべきことだと思っているからだ。ただ、活力に満ちた日々を追い求めれば、それが消滅したときの失望は大きい。求める気持ちが強すぎれば強すぎるほど、トラブルが生じた際の精神的ダメージは計り知れない。
 現に張り切りすぎてトレーニングがオーバーロードになり、それによって膝や腰などを壊してしまう人は少なくない。特に私のような高齢者は要注意。若いころと違い、ある程度を越えて痛めてしまうと元には戻らず、その時点でアウトである。
 今年の春ごろだが、実際、危なかった。
 ジョギングが可能になると一気にテンションは上がり、少しずつだが距離を伸ばしていった。そんなある日、よくなりつつあった右膝に再び痛みが出てしまったのだ。
 気持ちだけが先行し、限度以上の負担をかけていたのだろう。結局症状を鎮めるまで、二週間以上のジョギング休止が必要になった。
 誰に“年寄りの冷や水”と言われても一向にかまわないが、肝に銘じるべきことは己のコンディションを掌握すること。これさえ念頭におけば、七十代でも楽しみながら体を鍛えられるのだ。

膝の具合 Part 4

 話は2024年2月頃。

 月が替わると寒さも増し、関節や筋にとってより厳しい季節を迎えた。ところが嬉しいことに右膝の痛みは確実に軽減しつつあり、特に力の入れ方にさえ注意していれば一般的な登山でもそれほど支障をきたすことはなくなった。
 そんなわけで二月の中旬。西伊豆まで足をのばし、まずは高通山へ登り、その日は南伊豆の“らいずや”に一泊、翌日には長九郎山登山と二日連続で山へ入ってみた。それぞれの登り始めには多少の痛みが出たものの、その後は問題なく歩き終え、日々行っている膝のケアに間違いはないと確信した。

 気はますます上向き、毎日のウォーキングにより一層の力が入った。少し前までは走り出すと痛みが出たが、厚底シューズと継続のおかげか、おおよそ100mごとにウォークとジョグを切り替えつつ、ついに5.4Kmコースをクリアできるようになった。そこで上り調子に便乗し、連続で1Kmのジョグにトライした。
「いける!」
 息は切れたが痛みは無し。ただ、脚力がまだ足りないので走りに安定感を欠き、ふらつきやつまづきが出てどうにもリズムがつかめない。再三、姿勢、腕の振り方、脚の出し方等々を確認しても、すぐに走りがバラバラになってしまう。こうなると疲れを余計に感じてしまう。
 正しい走り方は様々な文献やwebからそれなりに勉強していたので、安定した走りを実現するには最低限の脚力が必要なことはよくわかっていた。よってまずは脚力をつけることを当面の目標とし、余計なことは考えずに毎日走りに走った。

膝の具合 Part 3

 一月も残すところ数日。
 徐々に体が軽くなってくると、ウォーキングの義務感は薄らぎ、楽しみさえ覚えるようになった。相変わらず階段の上り下りでは痛みが出ていたものの、その程度は徐々に低減しつつあり、ゆっくりだが回復へと向かっていることは間違いなさそうだ。

 こうなると試したくなるのが人情。一般的な山はまだ無理なので、菜の花畑が満開となっている、神奈川県二宮町の吾妻山公園を歩いてみることにした。公園の象徴である吾妻山は標高136m、登山口から二十分余りで山頂に立てる。
 市営駐車場へPOLOを置き、二宮駅を目指して歩いた。ずっと歩道なので痛みは全く出ず、膝が悪いことを忘れてしまう。登山口は三つあったが、国道沿いにある梅沢口から入ってみた。
「痛っ!」
 丸太の階段に右足を置き、普通に力を入れたらやはり痛い。致し方なく膝の真上に体重を乗せ、一段一段丁寧に足を運んだ。この歩き方だと痛みは小さく抑えられる。わかってはいるが、まともな登山を行うにはまだまだ日数が必要だ。

 とある日。路面からの衝撃を少しでも減らすことができれば膝のリアクションも変わってくるのではと、マラソンイベントでも主流になりつつある厚底シューズに着目してみた。webでその特徴を調べていくと、何気に今の自分に合っているような気がし、さっそく商品を検索した。するとヤフオクに『美品・アシックス GEL-NIMBUS 24 サイズが合わなかったので出品 使用歴ジョギング2回』というおあつらえ品を見つけ即落札。届いたその日に試し履きをすると、このような履き心地の靴だったのだと、なんとも新鮮な感覚に驚いた。使い始めはソールの柔らかさに不安定さが伴ったが、馴染んでくるとやはり膝に優しい。歩幅を極端に小さくしたジョギングを試してみたら、ほとんど痛みが出ず感激。これ以降、GEL-NIMBUSはなくてはならないアイテムとなった。