東大楼・女房とランチ

 地元ってのは、意外や知ってるようで、実は知らないことの方が多い。
「いつも行ってる眼科の前に、行列ができるラーメン屋があるのよ」
「その眼科って、おれも行ってるとこ?」
「そうよ。いつも眼科健診受けてるじゃない」
 てな感じで、時々女房が聞いてくるが、いくら頭をひねっても分からないことがほとんど。
「えっ、あったかな……」
「行ってみる?」

 女房とはちょくちょくランチへ行く。どうせなら地元の店がいいと、互いに情報を出し合っているが、情報提供量は圧倒的に女房の方が上だ。
 それでもたまには、
「スイングホールの真ん前にある中華屋、知ってる?」
「ロータリーのとこでしょ、なんかあったね」
「東大楼っていうんだけど、評判いいみたいよ」

 距離にもよるが、店へ向かう際はたいがい徒歩だ。夫婦共々ウォーキングを日課にしているから、それほど苦にはならないが、まあ、往復5Kmをひとつの目安にしている。

「すみません、ただいま満席なので少々お待ちください」
 フロアで孤軍奮闘しているのは、小柄な若い娘さんだ。恐らくアルバイトだろう。
 待つこと十分。一番奥のテーブルへ案内されると、私は回鍋肉定食、女房は炒飯、それと餃子を一皿注文した。厨房ではオーナーと思しき年配ご夫婦が忙しく動き回っている。
 料理が運ばれてくると、先ずはその香りにニンマリ。甜面醤のコクのある甘さが想像できてしまう。女房がいきなり餃子を口に放り込んだので、私も箸をのばす。野菜のうま味が広がる、餃子の王道的味わいだ。回鍋肉もキャベツの火のとおりがちょうどよく、御飯が進んだ。
「おいしかった。つぎは天津飯定食かな」
「おれは麺だな」
 またひとついい店を見つけたようだ。
「ごちそうさん」
「ありがとうございました、またよろしくお願いします!」

東大楼
東京都武蔵野市境2-2-3


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