狭い坂道を上がっていくと、なにやら人の顔を捩った一見アート風のパネルが目に付いた。よく見ると自然な笑いを誘うwitが感じられる。しかも、そのまま歩を進めていくと、違うデザインの“顔”に遭遇し、これが暫し連続した。有馬温泉まできてこんな“顔”を追いかけ、無心になって撮影をするとは、予想ができない展開になった。
地元の方と思しき男性が歩いてきたので、“顔”のことを訊いてみたら、
「これだけじゃないよ、ほら、あれもそうなんだ」
なるほど、目の前の樹木には“怪しい三角柱”がたくさんぶら下がっているし、左側の畑の脇にはドでかい“球体のモニュメント”が置かれており、更にはその正面の家の壁には短冊のような“白いひらひら”が配置されている。
わけが分からないが、微妙に惹かれるところもあり、興味も沸いてくる。
「いちおう芸術作品ってことらしいね」
うんうん、そうだろう、そんな感じだ。それにしてもどの様な理由で有馬温泉の、しかもこの様な裏通りに飾り付けをしたのだろうか。
ところが時間の経過と共に、このモニュメント群が周囲に溶け込んでいるように思えてくるから不思議だ。これはアートをアートとして認めた時に起きる感覚に他ならない。
こんなことを考えているとじわじわ写欲が湧いてきて、暫し“顔”を相手の悪戦苦闘が始まったのである。