紅葉の季節である。
よくチェックしているウェザーニュースの紅葉情報トップ画面でも、見頃マークが日に日に増えてきて、秋真っ盛りがひしひしと伝わってくる。
富士箱根、奥多摩、鎌倉等々、東京近郊のメッカと呼ばれる地域では、天候にさえ恵まれれば、11月末頃まで毎週末、大勢の観光客が押し寄せることになる。
そう、私の大好きな伊豆半島もこれからが本番。例年だと今月の半ばから色づきが始まり、天城の渓流沿いでは、水の流れと紅葉が作り出す、年に一度の“色彩ショー”が繰り広げられる。
なかでも“滑沢渓谷”は知る人ぞ知る紅葉撮影のグッドポイント。国道から目と鼻の先ほどのエリアなのに、深山ムードに浸れ、景観の多様性も十二分に期待できるので、じっくりと腰を据えて撮影に臨めるのだ。
狩野川と滑沢川が合流する周辺では、一枚岩の上を滑る水の流れに艶やかな赤と黄色が相俟って、思わずシャッターを押し込む指に力が入ってしまうほど。
一般的に伊豆と聞いて最初に頭に浮かぶのは温泉と海あたりだと思うが、なかなかどうして山や渓流も大きな魅力を放っている。寧ろ、南北50km、東西に20kmほどのエリアに、これほど多岐に渡る要素が網羅されているのは希有なことではないだろうか。
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あれから一年
写真は神戸南京町の広場である。
陽が落ちて一杯飲みに出かけようと中華街へ向かって歩いていたら、突如賑やかな無数の赤い提灯が目に飛び込んできたのだ。
六甲山での紅葉撮りと、神戸~西宮散策から既に一年が経ったとはまったく驚きだ。
神戸空港からポートライナーで三宮へ出て、JRに乗り換え、隣町の元町へ降り立った時の空気感は今でもはっきりと憶えている。
一泊二日の強行スケジュールだったが、初の六甲歩きとデニーズ時代最後の職場を訪れることができて、それは心に残るいい旅となった。
ふと今年の紅葉はどこを狙おうかと考え始めたら、いつの間にか気持ちだけが勝手に神戸へと飛んでしまったようだ。
六甲ガーデンテラスから眺める神戸港、深山ムード満点の紅葉谷、そして艶やかな紅葉と真っ赤なお湯が印象的だった有馬温泉。リピートしたいポイントはいくらでも思い浮かんでくる。
阪神電鉄・武庫川駅で下車し、当時住まいとしていたマンションへ向かった。
地震で崩壊したことは既に知人より聞かされていたので、心の準備はできていたが、改めてその地に立った時、記憶の一部が欠損している光景は何とも重く心にのし掛かかり、暫し体を動かすことができなかった。
兵庫県南部を襲った阪神淡路大震災は、西宮から東京の実家へ戻ってちょうど7年が経った冬に発生した。
六甲山散策の後に立ち寄った有馬温泉は、とてもユニークなアートの町でもあった。
さわやか ハンバーグ
沼津に住む甥っ子や義理の妹が口を揃えてほめる“さわやかのハンバーグ”。
「さわやかって、店の名前?」
「そうみたい」
やや胡散臭いが、皆が美味しいというなら本当に美味しいのだろう。
女房には娘のコメントがとどめを刺したらしい。
「あやがすごく美味しかったって」
ついこの間、会社の同僚と遠州灘を旅行した時、そのさわやかに立ち寄って噂のハンバーグを食したそうだ。
「今度行ってみない」
「ああ、いいね」
こんな話はすぐにまとまる。
9月19日(金)。
さわやかのハンバーグを食べる目的ただひとつの為に、東名高速を走り富士市までやってきた。
インターチェンジを降りると、ものの10分ほどで到着。驚くことに午後一時を回っているのにウェイティングシートは満席である。
「こっちこっち」
甥っ子達も到着した。
午後一時に現地で待ち合わせをしたのだ。
暫く待つとテーブルへ案内され、さっそくメニューを広げる。
ランチタイムなので、看板メニューの“250gげんこつハンバーグランチ”が税込み1,058円とリーズナブル。もちろんランチセットなのでライスとスープが付いている。
迷うことなくこれを注文し、待つこと10分。
鉄板の上でジュージューと音を立てる拳骨状の真ん丸いハンバーグが運ばれてきた。
テーブルに置くと、ウェイターが慣れた手つきで半分にカット。まだ赤い色が残る断面を鉄板に押しつけ更にジュー!!!
もうもうと白い煙が立ちこめて、何とも香ばしい匂いが鼻腔を刺激する。
「凄いね、ハンバーグと言うより肉だね」
粗挽きを越えた超粗挽きの挽肉は、普通のハンバーグにはない確かな歯ごたえがある。
牛肉100%とのことだが、つなぎもしっかりとしていて、ジューシーで肉の味が濃く、評判の高さは頷けた。
この味とサービスならリピーターも少なくないはずである。
一般的なレストランでは、昼休みが終わる頃にウェイティングを見ることはできない。
さわやかから女房の実家へ向かう途中、県道22号を走ってみた。見渡す限りの稲作地帯は、色づき始めた稲穂で秋へとまっしぐらだ。その田園の北には広大な裾野をもつ愛鷹山がそびえ、南には千本松原が駿河湾に沿って長い帯を見せていた。
よく知ったつもりの沼津でも、目先を変えて動けば“お初の絶景”を見つけることができるのだ。