コーヒーショップスタイルレストラン

 自宅近所のジョナサン武蔵野西久保店が6月6日で閉店する。もっとも完全閉店ではなく、7月には同じすかいらーくグループのコーヒーショップである「むさしの森珈琲」として再オープンするらしい。文庫本を持参しての用途なら、むしろウェルカムではなかろうか。ただ、この武蔵野西久保店のスクラップアンドビルドには、他店とは様相の異なるニュアンスが含まれる。
 同店の隣には、すかいらーくグループの本社社屋が建ち、長らくのこと“お膝元的立場”だった。この意味は大きい。お膝元であるが故、求められるオペレーションは完璧を期してきたと思われる。料理、接客、クリーンリネス、その他諸々、全てのポイントに社力をかけ、マニュアル遵守、またそれ以上のレベルを追い求めてきたに違いない。
 すかいらーくグループには様々な形態の飲食店があるが、ジョナサンは40年以上前から延々と続く典型的なファミリーレストランスタイルの店で、これが上記のようにお膝元で完璧な運営が行われてきたにもかかわらず、形態変更に追い込まれた、またはそうしなければならなかったという事実は、悲しいかな、従来型のファミリーレストランでは、既に現況の顧客ニーズには対応不可能という証に他ならない。
 こうして考えると、やはり我デニーズは道を踏み違えたと、いまさらになって思え、残念至極である。
 そもそもデニーズこそコーヒーショップスタイルレストランの元祖であったはずだ。先ずはアメリカンコーヒーという大看板ありきの上に、それを彩る様々なメニューを提供する、いわば「むさしの森珈琲」のコンセプトに近いものだった。それがいつの間にか、笑顔のデニーズレディーが提供するお替り自由のコーヒーサービスが、セルフのドリンクバーにとって代わり、オリジナルアメリカンコーヒーと相性抜群のアメリカンスタイルメニューが次から次へと隅に追いやられ、気が付けば和食やら、ラーメンやらが幅を利かせていたのだ。今に置き換えれば、Starbucksでチャーシュー麺をすするようなもので、どう考えたって違和感は否めない。
 なりふり構わずの施策は、結局デニーズを何の個性も感じられない、ありきたりなファミリーレストランへと変容させてしまったのだ。
 自ら墓穴を掘るとは、正にこのことだろう。


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