12月に入るとコロナ禍はますますの拡大を見せ、苦肉の策であるGoToキャンペーンを一時凍結。東京都ならびに政府は、年末年始に於ける不要不急の外出は抑える旨を、連日のニュースに露出させた。
何となく後ろ髪を引かれる形となった2020年年末撮影会だったが、行き帰りは車を使うし、行った先々では人気の少ない自然の中ということで、自己納得。年に一度の楽しみを止めることはなかった。
だが、今年も厳しい天気予報が流れていて、富士五湖方面、伊豆方面共々、雨と強風に見舞われる2日間となってしまったのだ。
4:30、自宅を出発。この時点では雲も少なく、これから降りだすのかと疑いたくなるような星空だったが、中央道大月分岐を河口湖方面へ入った途端、パラパラと落ちる雨粒がフロントウィンドウの視界を遮り始めた。河口湖ICを出る頃には本降りとなり、当初は本栖湖方面へ進む予定だったが、急遽御殿場へ降りることにした。
「2年連続の雨とは、日頃の行いが悪かったんすかね」
「かもよ」
先回の年末撮影会もこんな感じのスタートだったので、出鼻をくじかれた感は強かった。
「早いとこチェックインしちゃってさ、一杯やるってのもいいよな」
「ははは、ですね」
とはいっても、この時点でまだ10時である。
ジムニーは、御殿場~三島~下田街道~天城峠と軽快に走り、下田松崎線が目前に迫ってきた。
「次のT字路さ、右行くと松崎、左は下田なんだけど、どっち行く」
「まかせますよ」
「じゃ、久々に爪木崎で水仙でも撮るか」
若干早めだったが、時間調整も兼ねて、下田駅近くの中華料理店で昼食を取ることにした。
例年だと下田の前周辺は、年末年始を温泉で迎えようとする観光客の車でごった返すが、さすがに自粛のシュプレヒコールが効いたのか、びっくりするほど車が少ない。恐らく年末年始のGoToキャンペーン凍結で、多数の予約キャンセルが出ているのだ。宿泊施設を中心とした観光業への打撃は大きいと思われ、案の定、水仙まつり開催中の爪木崎も同様だった。広い駐車場を見回してもガラガラで、出店も一軒のみという寂しさである。
「全然咲いてないね」
水仙も張り合いがないのか、五分咲きまでにも至ってない状況で、白い花が斜面を埋め尽くす従来の勢いは感じられない。それでも1,000円の駐車場代を払ったのだから、元を取らねばと暫し辺りを歩き回る。
まばらな水仙と旬を過ぎたアロエの花には見切りをつけ、たまたま岩場に見つけた黄色い花を撮っていると、すぐ傍にはちょっとした洞窟を見つけたので、躊躇なく潜り込み、なんとか面白い1枚を切り取ろうと躍起になった。
そもそも年末撮影会は真剣な作品づくりの場ではない。いわば同好の士が集う忘年会であり、お祭なのだ。1年間の写真活動の締めくくりに、飲んで食べておしゃべりして、その前後にちょこちょこっと撮影を楽しめれば大満足!これがイベントの趣旨なのだ。
浮島海岸の大屋荘に着いたのはちょうど15時。
温泉に入って、ちょこっと一杯、そして夕陽の撮影の準備に取り掛かるというのが本来だったが、午後から強くなりだした風は、もはや烈風と化し、撮影どころか、海岸にも近づけない状況になっていた。
ここはあきらめるしかなく、夕方早々から酒盛りが始まったのである。
翌朝。障子を開けると、雲ひとつない青空が広がっていた。ただ、依然と風はやむことがなく、夕方に予定している田子の浦からの富士山撮りが心配になった。
「西海岸はパスしよう」
「じゃ、どこ行きます?」
「かなり走るけど、白糸の滝に行ってみない」
「OK。時間はたっぷりあるからね」
沼津まで行けば、あとはR1バイパスに乗ればいい。ここは十中八九流れるから、富士まではあっという間だろう。更に富士からは西富士道路一本だ。
富士に訪れると思い出す。まだ中学1年の頃、親に買ってもらった5段ギア付きのスポーツ自転車を駆り、友人と3人で挑戦したのが白糸の滝。自宅から片道42km、標高差約500mのゴールは今思い出しても遠かった。若かったとはいえ、真新しい自転車で真夏の灼熱ロードをフルマラソンの倍の距離を走り切るのだから、しんどいことこの上ない。長い上り坂をクリアし、白糸の滝に着いた時は、ひたすらジュースを買って飲みまくったものだ。
十数年ぶりになる白糸の滝は、相変わらず豊富な水量で見る者を圧倒した。昔はなかった展望台も設置され、ここからは滝と富士山を同時にファインダーへ収めることができるのだ。ただ、残念なことに午後の斜光が強く、富士山に露出を合わせると、滝周辺は真っ暗になってしまう。時間帯を考慮し、ハーフNDは必須ということで再度望みたい。
この後は、最後の撮影地である「田子の浦みなと公園」へと向かった。
みなと公園は、富士市の製紙工場越えの富士山が撮れることで有名なところで、いわゆる工場夜景のメッカになっている。
「だめだめ、風が強すぎる」
公園のシンボルである富士山ドラゴンタワー。丘の上に立つ約38mからの眺望は抜群だ。ところがあまりにも強い風で、三脚に安定感がない。辛うじて立てたとしても、重り等の固定処理をしなければ、この風では長いシャッター速度は使えそうにない。あきらめて運河沿いまで降りてきたが、ここでも風は相当なもの。
夜の帳が下り始めるのを待って試し撮りを行ったが、モニターするとブレのオンパレードである。
「ここでも駄目だ。ISO上げなきゃ撮れないよ」
「ISO800でぎりぎりかな」
過去の年末撮影会を振り返っても、これほど撮影コンディションに泣いたことはなかったように思う。
本音をいえばもう少し撮りたかったし、何より浮島の夕陽を見たかった。
しかし欲をいいだしたらきりはない。年末撮影会はあくまでもお祭りであり、Tくんと私にとっては楽しみな忘年会なのだ。
2020年。振り返れば本当に色々なことがあったが、頑張ってやり通せた自負はある。
アルコールに弱くなり、すぐに眠くなってしまう私。ふたまわり太って、降圧剤も飲むようになったTくん。
とにかく健康だけには留意して、また来年も無事に年末撮影会を迎えることができればと祈るところだ。