どこを見回しても落葉色

良くなったり悪くなったりの膝。突如痛みだす腰。更には湿度の低下でズルズルが増した鼻と、シャキッとしない毎日が続き嫌気がさす。しかもこのようなイライラを加齢のせいにし始めた自分が情けない。

― 山の空気でも吸いに行くか。

冬直前の刈寄山は、どこを見回しても落葉色だった。
紅葉のピークはとうに過ぎていて、荒れ果てた景色がどこまでも続き、その荒涼感は重い。目を凝らせば花も見つけられるが、生命感は希薄だし、昆虫の姿がない森に咲く花からは、寂しさしか感じられない。
落葉を踏みつつ、静かな山歩きも悪くはないが、やはり新緑の頃の生命感あふれる山の方が私は好きだ。

西側が大きく開ける斜面に出た。
鬱蒼とした樹林帯歩きから一転して、ワイドな景観が広がり、何度訪れてもここに立つと爽快な気分に包まれる。群生するススキは今が見ごろ。穂に反射する太陽光がやけに眩しく、斜面を黄金色に染めていた。

今日の収穫は、膝も腰もまだまだ大丈夫!が分かったこと。
普段、階段を上る時に出る僅かな痛みや違和感は全くといって出ないし、頂上直下の急坂に取り掛かっても、余力さえ感じたのだ。

「カップ麺も、山で食うと上等な味だね」

先客である70歳前半と思しきご主人が楽しそうに話しかけてくる。
刈寄山には既に20回以上登っていて、若い頃には幾度も北アルプスへ挑戦した山好きだそうだが、現在は健康維持のために低山歩きを続けているらしい。

「しかし寒いな。次に来るときはダウン持ってこなきゃ」

低山といってもスカイツリーより高いのだから寒いわけである。しかも風が出てきた。
ウィンドブレーカーを羽織ったが、汗を吸ったアンダーが体温を奪っていく。
だけどこのキューっとくる寒さは、山にいることをリアルに感じて意外に好きかもしれない。


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