コロナ禍で遠ざかっていた山歩き。しかしこの絶好のシーズンに2カ月半も山の空気を吸わないでいると、どうにも気分が落ち着かない。そこで自分自身の山開きは“越境可”となる6月19日以降と決めて待つことにした。
そして最初の休日になったのが24日(水)。楽しみにはしていたのに天候が芳しくない。前日のウェザーニューズでも、刈寄山があるあきる野市は“10時から15時が雨”と出ていた。悔しいことに予報は当たり、現在は霧雨である。
しかし刈寄山はスタートから山頂までずっと樹林帯の中を行くので、この程度の降りだったらカッパも要らない。
駐車場に到着して準備を始めると、遥拝殿に人影が目に入った。よく見ると登山の格好をしている年配男性である。駐車場に一台軽自動車が停まっているので先客だろう。登ろうか、止めにしようか、私と同じように迷っている。
それもその筈、先ほどから雨脚が急に強くなってきたのだ。
尾根を仰げば濃いガスに覆われているし、辺りの暗さは徐々に増している。しかしここまで来て引き下がるのは悔しい。よって30分だけ待つことにした。
ご年配男性は早々に諦めたようだ。間もなくして軽自動車に乗り込み駐車場を後にした。
私は待った。
時刻は10時40分。嬉しいことに、止みはしないものの降りは徐々に小さくなってきている。
これならOK。出発準備を済まし、GRを片手に山道へと入った。
ガスが山全体を覆い、辺りは幻想的な雰囲気に包まれている。いつもとは一味違った写真が撮れそうで、気分は浮き立った。
コース半ばまで来たとき、前方の霧の中からチェックの長袖シャツを着た、私と同年代と思しき男性ハイカーが忽然と現れた。こんな気候条件でも山へ入る者は私だけではない。
「こんにちは」
「涼しくていいですね」
全くそのとおり。この冷ややかな感じは大分疲労を軽減してくれそうだ。
その後も面白い被写体はないかと、目を凝らしながら歩いていると、視界の左端に動くものを捕らえた。
見ると大きな蛙だ。しっとりとした空気はさぞかし気持ちがいいのだろう、カメラを近づけても逃げようとしない。周囲の雑草も水滴で光り輝き生き生きとしている。こんな森の表情を見られたのも、雨を押しての山行ならではだ。
刈寄山へ到着すると30代半ばほどの背の高い女性ハイカーがいて、今まさに出発するところ。
先ほどすれ違った男性と同じく、こんな天候の中、早くから山へ足を踏み入れているのだ。
「こんにちは」
「気をつけて」
家に引きこもっているのは本当に堪える。この女性も、すれ違った男性も、そして私もだ。
出掛ければ何かを発見できるし、また感じることができる。五感を稼働させるってことは、実に楽しいことであり、また幸せなことだと思う。
いつもとは違う刈寄山でGRのシャッターを無心に切れたことは、こうして外へ飛び出したから得られたもの。
マンネリ化が否めない我が写道楽。これの解決策はずばり【行動】だ。