燦々と降り注ぐ初夏の陽光を浴びていたら、無性に体を動かしたくなった。部屋に戻り、短パンTシャツに着替えると、TR-1を引っ張り出して多摩湖へ向かった。時刻は13時を回ったところだ。
タイヤを28Cに替えたルイガノTR-1は、ずいぶんと転がり抵抗が下がったようで滑るように疾走する。NOMADと較べると明らかにスピードの乗りがいい。フレームサイズが体に対して小さいのだが、サドルポストをぎりぎりまで引っ張り出し、更にサドルを後ろへ目一杯ずらしてなんとか踏み込めるポジションを作った。
サイクリングロードは相変わらず人、人、人である。これもコロナの影響からくる健康志向の表れだろうか。
ウォーキング、ジョギングの人達の中に混ざって、自転車、それもスポーツモデルに乗っている人が非常に目立った。年齢層はそれこそ若者からシニアまでと幅が広く、走り方は飛ばすよりマイペースが殆どだ。車両別は、ロード4割、クロス6割といったところか。
東村山浄水場に差し掛かると、年季の入ったランドナーを駆る白髪のご主人とすれ違う。新しめのバイクが多い中、古くても磨き上げた車体が非常に目を引いた。叶うならばランドナーで全国津々浦々を旅してみたいものだ。
いつもの時計回りで、西へ向かって坂を上っていった。
モーテルが見えてくると徐々に傾斜がきつくなるが、体調がいいのかTR-1に慣れたのか、スピードはそれほど落ちない。こんな一瞬は単純に嬉しくなり気合も入る。
オートバイを降りることを決心し、クロスバイクのNOMADを手に入れたのが15年前。
チャリ通に切り替えての第一日目は、無事到着はしたが暫しぐったり。自宅から職場までたったの8kmなのに、自分の体力のなさに愕然。これをきっかけに山歩きの頻度もアップした。
ところがチャリ通を始めて1週間もすると、はっきり自覚できるほど楽になってきて、更に1カ月を過ぎるころになると、通勤が妙に楽しくなり、当然ながら気合や覚悟はいらなくなった。
登りの峠を越えると、今度は西武ドームへ向かって緩やかに下っていく。スピードはぐんぐん上がるが、急なカーブもあるので注意が必要だ。NOMADは35Cという太いタイヤを履いていたので、空気圧も70psiと低く、転がり抵抗は大きいが反面乗り心地は良い。一方、TR-1は28Cなので、空気圧は110psi辺りまで入れるから、ごつごつ感が強く、特にこの北側は路面が荒れているところが何カ所かあり、車体が暴れて怖いほど。
多摩湖の真ん中に架かる橋が見渡せるベンチで暫し休憩。
私が自転車を停めて寛いでいると、次々に自転車が入ってきた。ロードの若い男性2人組、ジャイアント・クロスの年配男性、そして老夫婦。お喋りが盛り上がるこのご夫婦はどう見ても70代、ご主人がトレックのロード、奥様が電動アシスト自転車というのが微笑ましい。
雲が出てきて直射を適度に遮り、湖面を抜ける風は頬を撫ぜる程度、そして適度な疲労が眠気を誘った。
たまらずベンチで横になり目を瞑ると、すぐに寝落ちしてしまった。恐らくほんの数分間の睡眠だろうが、汗が引いて、気分がシャキッとした。
「ん~~~~、気持ちいいや」
思わず口走ってしまった。
これは家にいちゃぁ感じられない二重丸の気分。来週あたりから、そろそろ山へ入るか。