カメラ業界に暗雲が立ち込めて久しいが、中でもニコンの経営状況はかなり厳しいようだ。
カメラサイトの掲示板などを見ると、<ニコンのアフターサービスはこの先どうなるのか?>とか、<Zシリーズが気になるが、SONYのαのようにサードパーティーからのレンズ供給はあるのだろうか?>等々 、不安を増長させるようなコメントが多く見つかる。
ニコンファンとしては何とも切ない思いであるが、これまでの経緯をじっくりと振り返ってみれば、自ずとこの結果は見えてくる。そしてこの流れはバイク業界と似通ったところが多々あり興味は尽きない。
先ずは商品の性能競争だ。
<200馬力越え ~ 4000万画素越え>、<0-100km/h 3秒 ~ 秒間10コマ>、<トラクションコントロール ~ 手振れ補正>等々、挙げればきりがないほど共通と思しき項目が出てくる。
メーカーの力を結集して得られた機械的性能アップは、どれも素直に有り難いことであり、時には心が躍り出す。しかしユーザーの望むものは果てしなく、且つ波のような変化を伴うものだ。
性能の良いバイクに乗れば上手にライディングできるかと言えばそれはできない。性能の良いカメラを使えば満足のできる写真が撮れるかと言えば撮れない。1000万画素で撮った写真と2000万画素で撮った写真の違いなど、特別な再生条件でなければ常人には見分けがつかないし、最高出力100馬力のバイクと200馬力のバイクを試乗比較した場合も、同じく特別な条件下でなければ常人にその差は分かる筈もない。
ところがメーカーにしてみれば、機械的性能アップは企業の使命であり、得られたノウハウは財産でもある。よってメーカーは性能競争を止めることは絶対にあり得ない。しかしここで疑問符が持ち上がる。
D一桁台、ニコンのプロ機を見れば一目瞭然だ。耐久性、堅牢性、そして撮影性能の頂点たるスペックを持ち合わせるプロカメラマン並びにマニア垂涎のシリーズだということは周知のとおり。
しかしその重量は1.4㎏を超える。何と1.5Lペットボトルのコカ・コーラと同じだ。しかもこれは本体の重量であって、これにNikkorの24-120mmでも装着すれば、軽く2㎏オーバー。
これを首に下げて北鎌倉を半日歩き回ったら、さぞかし体に堪えるだろう。
ニコンを尻目にα7を引っ提げて好調な推移を見せるのがSONY。
もうお分かりだろうが、α7はニコンのプロ機と同等のカメラ性能を持ちながら、その重量は半分にしか満たない。
純正レンズも然り、ニコンの<AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR>が710g、一方SONYは<FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G>が663gと、一見その差は僅かだが、カメラ+レンズでの装備重量では、手に持ってすぐにわかるほどの差が出てしまう。
2011年10月に発売されたニコンのミラーレス機Nikon1。ミラーレス構造の持つ特徴をいかんなく発揮した軽量コンパクトなボディーは、少なからずのファンを得たと思う。ところがその2年後、2013年10月に登場したSONYα7は、Nikon1ほどの小型化は成されてない代わりに、何とフルサイズのイメージセンサーを搭載していたのだ。Nikon1よりは二回りほど大きいが、一般的なデジイチよりは小さく軽量で、且つ撮影性能は何とニコンプロ機に迫るものを持っていたのだ。しかもその実情価格は13万円台という破格的なもの。これで売れないわけはない。私の現在の愛機、ニコン・D600は同社のフルサイズ廉価版だが、発売当初はボディーのみで22万円もしたのだ。
この画期的ともいえるα7登場で、カメラ業界の勢力図は完全に塗り替えられた。
カメラ業界全体としては縮小傾向にあるものの、ことミラーレスだけの販売成果を見れば、その出荷額は5年前の倍という好調を推移しているのだ。
つい2か月前、ニコンも遅ればせながらフルサイズミラーレスのZ6とZ7、そして続けざまにDXフォーマットのZ50を発売したが、現況は厳しい戦いと言われている。
貪欲なカメラユーザーの渇望を満たす新たな一手は、是非ニコンから!!
心から願ってやまない。