年に一度、武蔵野市から送られてくる“眼科検診”のお知らせ。
最寄りの指定病院で、視力、眼圧、眼底等々の検査を行うものだが、白内障や緑内障のような眼球固有の問題だけではなく、動脈硬化の進行状況等も明らかになるという、中高年者にとってはありがたき内容。還暦を過ぎた我が身にはもはや必須あり、おまけに実費500円は嬉しいところだ。
目はもともと悪い方ではなかった。若い頃は両眼共1.5の視力があり、ずいぶんと自慢にしていたものだ。しかし加齢には逆らえず、近年では老眼が急速に悪化して、度数2.0の老眼鏡無くしては、新聞も読めない状況となっている。それに右目だけ視力低下が進むというのも気になるところ。
受診した病院は三鷹駅北口の「武蔵野眼科」。この病院は何かと移転を繰り返していて、最初に利用した時は三鷹中央通りと五日市街道の交差点近くにあったのだが、気が付くと井の頭通り沿いへと移っていて、更に今は三鷹駅北口とむらさき橋のちょうど真ん中に位置する、メディパーク中町というビルの4階に入っている。
近所には武蔵野眼科を含めていくつかの眼科病院があるが、私がここを選んだのには訳がある。
もう十数年も前のことだが、ゴロゴロとした異物感がなかなか取れず、目薬を差しても流水で洗っても変わることがないので、もはや病院しかないと、自宅から一番近くにあった「みたか○○眼科」へと駆け込んだ。診てくれたのは小太りで厚化粧の女医だった。
「よく調べたのですが、何も異常はないですね」
「えっ、じゃ、なんでしょう、このゴロゴロ感は」
「とりあえず点眼薬を出しておきますので、様子を見てください」
しっくりこない。これだけ気になる異物感があるというのに、何もないとは考えにくい。案の定、処方された点眼薬を一日使ってみたが、何も変わることはなかった。
意を決し、翌日には別の眼科、つまり三鷹中央通りにあった武蔵野眼科へ相談兼がね訪れてみた。
経緯を説明するとさそっく診察が始まった。こちらも女医さんである。
「極微細ですが、錆が二か所付着していますね」
「錆、ですか?」
「埃の中に微細な鉄粉が混ざることがあるのですが、厄介なことにこれが目に付着して錆びてしまうと、水で流しても取れなくなるのです」
「どうすれば?」
「削り取ります」
これには驚いた。目を削るというのだ。
「麻酔をかけて簡単な手術を行います。お時間大丈夫ですか」
既にやる気満々である。
「お、お願いします…」
点眼麻酔をかけ、あとは強い光の中で不安を覚えることなく処置は終了した。あっけなさに安堵を覚えたが、本来の辛さは麻酔が切れた後に襲いかかってきたのである。
何と術前のゴロゴロ感が誇張なしで10倍に膨れ上がり、涙は出っぱなしになった。正直なところ、寝ることもままならない状況になってしまったのだ。
5個ほど処方された“ヒアレイン”と称する点眼薬だが、これを3分毎に点眼してくれという。仮にゴロゴロ感がなくとも、言われたとおりにさしていれば、眠る暇はない。
ちなみにヒアレインは角膜再生効果があるポピュラーな点眼薬。錆を削り取られた傷を一刻でも早く治すにはさし続けるしかないと、辛い夜にトライしたのであった。
この一件以来、目に関しては必ず武蔵野眼科を利用している。
視力 | 右 | 0.8 |
左 | 1 | |
眼圧 | 右 | 11 mmHg |
左 | 10 mmHg | |
SCHEIE(H) | Ⅰ | |
SCHEIE(S) | Ⅰ |
さて、視力検査、眼圧検査と続き、その後は検査用の瞳孔を開ける目薬をさして、眼底検査を行った。
結果は表のとおり。Scheie分類がH所見並びにS所見も“1度”と出ており、案の定、年齢+α程度の動脈硬化が進んでいるようだ。以前、健康診断のオプションで、頸動脈のエコー検査を行ったことがあるが、その際も粥状硬化を指摘され、この辺が己の健康管理の要になるのだろうと、前々からの自覚はあった。