沼津で

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9月10日(土)。甥っ子の結婚式に呼ばれ、沼津へ行ってきた。
式場は三島大社からほど近い【みしまプラザホテル / ザ・モーリス】。東名高速・沼津ICを降りれば十分少々で到着する。
チャペル風の会場で行われた挙式は、神父のいない“人前式”。これまでお目にかかったことのない形式だ。しかし、開放的な演出には新鮮味が感じられ、ストレートに新郎新婦の喜びが伝わってくる。
披露宴会場へ移ると、招待客90名のひといきれに圧倒された。昨今では盛大な規模である。親族や主賓テーブルを除けば殆どが新郎新婦と同じ若者達なので、アルコールがまわれば、その盛り上がりも半端ではない。
次から次へとビール片手に友人達が高砂席を取り巻き、気勢を上げての記念撮影が続く。更には、これに便乗するように各テーブルから威勢のいい声が掛かかり続け、会場は若いエネルギーのるつぼと化した。
若者たちの表情には、難しいことなしに新郎新婦を祝福し、晴れの日を皆で大いに盛り上げてやろうとの心情が滲み出ていて、なんだかこちらまでも気分が高揚してくるのだ。
実は数年前まで、これを馬鹿騒ぎだと思っていた。

ー 何もそこまで奇声を発することもあるまい
ー もうちょっと静かに祝ってあげればいいのに
ー おいおい、いくら何でも飲み過ぎだぜ

ところがそんな馬鹿騒ぎが、最近になってやたらと眩しく感じるようになってきた。
周りを気にすることもなく思うままにアピールする姿。同じ世代同士、すぐに意気投合する積極性と柔軟性。二次会なんてまだまだ! ノリだけで三次会へ突入するドでかいパワー。
私も大昔はそうだったかもしれない。しかし今では「大人げない」「回りが気になる」「疲れそうだ」等々の思惑が瞬時にガードを張りめぐらし、決して羽目を外すことはない。
尤も還暦をとうに超えた初老ならば、ごく当たり前のことだが、精神的にも体力的にも問題や欠陥がないのにもかかわらず、良識の枠から飛び出すことをしない自分に対し、心の片隅で幾ばくかの葛藤が生じていることは確かのようだ。
人はこうして丸くなっていき、行動範囲を狭め、挑戦のたぐいが苦痛となり、挙げ句の果てには体力も衰え、いよいよ己の終焉が見え隠れしてくるのだろう。
最近は被写体探しも壁にぶつかっていて、せっかく手に入れたD600もカメラケースに入れっぱなしである。実体の分からない不安と不満がブレーキとなり、正直なところ、仕事もプライベートも方向性が定まらないのだ。

披露宴の後は、沼津港へと足をのばした。

「沼津港って行ったことないんですけど、そこにある深海水族館は興味ありますね」

こう放ったのは娘婿。

「へー、そりゃ面白そうだ」

相変わらず観光客が大挙押し寄せる賑やかな沼津港は、駐車場探しも楽ではない。
ところがちょうどいいタイミングで沼津魚市場食堂の無料駐車場に一台空きが出た。早速車を入れて水族館へと向かうが、その前に新鮮館へ立ち寄り、冷たい緑茶をいただいた。
披露宴で飲み過ぎたせいか、喉がからからである。

水族館に到着すると【入場料 大人一名:1,600円】の料金表に一瞬怯む。ところが興味につられた4人は躊躇なく全員入館。ここまできたら!という気持ちも後押しをしたのだろう。
薄暗くヒヤッとする水族館独特の空気感は、残暑厳しく汗ばんだ体を優しく癒してくれた。
それにしても、予想を超える繁盛ぶりにはびっくりだ。ここは結構な人気スポットなのかもしれない。
先ずは順路に従い、端の水槽から眺めていく。
ある程度予想はしていたが、深海魚と言っても水槽を泳いでいたのは水深200mそこそこに生息する小型の魚たちで、残念ながらリュウグウノツカイに代表される大型で奇っ怪な類はいなかった。
しかし、気が付けば普通の水族館では見られない珍しい魚や生物たちの形や動きに釘付けとなり、特に二階に展示されている冷凍保存のシーラカンスを目の当たりにしたときは正直度肝を抜かれた。恐らくここでしかお目にかかれない代物だろう。
一般の大型魚と一線を画くその姿は、太古を連想させると同時に、なぜこのシーラカンスは進化の歩みを止めたのかと、深い疑問が湧き出し興味は尽きない。
ここは一見の価値あり!

◆沼津港深海水族館


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