おかげさまで昨年めでたく還暦を迎え、そして早くも1年が経とうとしている。
“光陰矢のごとし”とはよく言ったものだ。
一般的な会社に勤めていれば、正に定年退職を果たし、ついに“リタイヤ”という文字が現実としてのし掛かってくるところだろうが、幸いなことに、老人でも己に鞭を打ち続けさえすれば就労させて貰える環境に甘んじている為、もう少々現役で突っ走ることが許されている。
但、1978年3月。代々木オリンピックセンターで行われた株式会社デニーズジャパンの新入社員研修が、ついこの間の出来事のように思い出される中、これはある意味、衝撃的な現実であるとも解釈している。
ー こんな長い間、一体俺は何をしてきたんだろう?!
過去に戻ることはできないから、“れば”、“たら”は口にしたくないが、あと二つまみの教養と冷静さを身につけていたなら、もう少々潤いと厚みのある人生を歩めたと思うことがある。
もともと内向的な性格の私は、いざ外へと目を向ける時、視野が狭まりがちになることが多く、どっしりと構えて俯瞰的に状況を見ることは今でも苦手としている。よって仕事もプライベートも初めてやることに成功した例しがない。
『君子危うきに近寄らず』
とても意味深いことわざであるが、私の場合、教養が足りないが為に“危うき”の実態をうまく掴めず、且つ冷静な状況観察ができないから、知らず知らずのうちに餌につられて危うきに脚を突っ込んだり、危うき自体に翻弄されてしまうことがある。そして気が付くと取り返しの付かないところに立たされ、最後は必ず大きなしっぺ返しを食らうのだ。
この流れは日常生活の中でも当てはまることが多々あり、ひとつひとつを思い出すたび、
ー 俺って、本当に馬鹿だよな…
と、溜息が出てしまう。
これまでの半生は、“身から出た錆”でむせ返るだけだったのかもしれない。
教養がないのは、努力ができないから。
冷静さに欠けるのは、先を急ぐから。
これを踏まえて、残された後半戦を、少しでも有意義にやれたらなと思っている。