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2017年・年末撮影会

テレビ東京で放映中の人気番組【出没!アド街ック天国】。
昨年の12月9日放送分で西伊豆が紹介された時、自他ともに認める伊豆好きの私が画面へくぎ付けになったことは言うまでもない。
様々な情報の中で特に興味を引かれたのが、“イカ様丼”と“棚田”だった。
幾度となく通ったことのあるR136から、ちょっと入った仁科漁港に、飛び切り美味いイカを食わせる“沖あがり食堂”の存在を知ったことは、<即チェック!>の興奮である。星の数ほどある海の幸の中で、イカはダントツの好みなのだ。
そして“石部の棚田”は、これまでになかった伊豆の被写体として大いに期待が膨らんだ。
これをさっそく写真仲間のTくんへ伝えると、

「それ、行きましょう!」

と即断である。

12月30日(土)。
恒例年末撮影会の直前に入手した情報で、いつも以上に期待が膨らんだ我々は、意気揚々と西伊豆を目指した。
天気予報では二日目の31日が雨と出ていたので、“いか様丼”と“棚田”だけは是非とも初日にクリアしておこうと決めた。但、若干時間に余裕があったので、三島の柿田川公園へ寄り道することにした。
ここは富士の湧水で知られた観光スポットであり、これまで幾度か訪れたことはあるが、冬場は初めてだ。
しかし予想はしていたものの、緑は少なく花もなく、おまけに渇水状態ということで、これまで見てきた美しさや感激度は半分にも満たなかった。それと、明らかに少ないと思われる水量はどうしたことだろう。季節によって湧水の量は変わるのだろうか。

「しかしいい天気だね、明日雨になるとは思えないな」
「まったくだ」

快調な走りを見せるジムニー。右手には湖のように静かな内浦湾、そしてその先には薄化粧をした富士山が姿を見せていた。
さすがに西伊豆は暖かく、暖房は入れず、更にウィンドを1センチほど下げておくと、車内はちょうどいい温度に保たれた。堤防で釣り糸を垂れる人達も、今日は気持ちがよさそうだ。

堂ヶ島遊覧船乗り場を通過すると、間もなく左手に仁科漁港が見えてくる。漁協の向かいにある“沖あがり食堂”は、午後1時というのにウェイティング客が店外まで溢れかえっていた。恐らくアド街ック天の放映が効いているのだろう。

「何名様ですか」
「2名だけど、どれほど待ちます?」
「15分くらいでしょうか」

眼鏡をかけた若い男性がレジ周りを仕切っている。
店内は右半分が土産物コーナー、左半分が食堂、そして真正面が厨房になっていて、当然ながら人いきれが凄い。家族連れが中心だが、若いカップルも2組ほどいた。
席が空くと先ずはレジ前で注文を告げ、会計を済ませる。すると番号カードと注文票を渡されるので、注文票の方を厨房前にある受付箱へ入れる。すると大凡10分から15分で料理が出来上がり、番号を呼ばれるという流れだ。高速道路のサービスエリアにある、セルフサービス形式といっしょである。
我々が注文したのは、もちろんスルメイカの刺身と漬が半々に乗った“イカ様丼”だ。

「45番の方~」

よっしゃ!
艶のある新鮮なイカがたっぷりと乗っている。真ん中に落としてある卵黄がなんとも食欲をそそる。

「これ、マジうまい!」

Tくん、痛く感激の様子である。
彼の気持ちは分かる。本当にうまいのだ。
滑らかさ、弾力性、そして甘み。文句ない食感と味わいであり、これまでに生のイカを食して、これほどの舌鼓を打った記憶はない。
二人ともあっという間に平らげた。

「もう一杯いけるな」

うまいものにはリミッターが効かないTくんであった。
見ればウェイティング客が増える一方だったので、さっさと席を立つことにした。
店の真ん前が漁港なので、ぶらり一回りしようと船着き場へ向かうと、タイミングよく漁船が入ってきた。すると漁協の人だろうか、市場の方から若い男性が走ってきて、手際よく船のロープをビットに固定、次に大きな樹脂容器を乗せた台車を船の脇につけた。
すると船に乗っていた年配の漁師が大きなタモを生簀へ突っ込んだ。

「おおっ!イカだよ!」

凄い量である。タモ3杯分が容器へ入ると満杯になってイカが飛び出しそうだ。
次はこれを市場まで押していき、大きな水槽へと移したのだ。
この作業は3回繰り返された。
なるほど。これほど新鮮なスルメイカを使うのだから、ここのイカ様丼はうまいわけである。
満腹でやや眠気も出てきたが、もう一つの目的地“棚田”へと車を走らせた。

棚田の正確な名称は“石部棚田”。松崎町の南に位置し、東日本では珍しい石積みの棚田とのこと。眼下に駿河湾を一望でき、晴れれば富士山・南アルプスを望むことができる絶景の棚田なのだ。
標識に従いマーガレットラインから山間部へ入っていくと、棚田を望む展望台が見えた。
車を降り、上ってみると、

「いい眺めだね」
「この辺りへ来る時は、いつも海ばっかりだからな」

今日は天気が頗るいいので、真っ青な海の上には富士山が浮かんでいる。
訪れる観光客も少なく、静かなひと時を味わうにはもってこいの場所かもしれない。今来た道路をそのまま進めば、棚田をぐるりと回って石部温泉に出られるが、幅員が恐ろしく狭くなるので、注意が必要だ。

今宵の宿【シーサイド堂ヶ島】へ到着したのは、午後4時を回った頃。
部屋へ通されるといつものようにアルコールで乾杯。早朝に出発した体には瞬時に染み渡った。
色々なつまみを広げて、3杯目に掛かろうとすると、

「なんだか夕暮れっぽくなってきたな」

と、窓の方を見てつぶやいたTくんの一言にハッとした。
そう、つるべ落ちなのだ。

「ヤバ!夕陽夕陽、出かけよう!」

実は“堂ヶ島夕陽マップ”なるものまで準備していたのである。ご存知、西伊豆は夕陽の景勝地であり、特に今回の堂ヶ島や、町全体が真っ赤に染まる戸田は著名である。

「どこでやる?!」
「どこも何も時間がない。ここで撮ろう」

シーサイド堂ヶ島が遊覧船乗り場のすぐ隣だったので、何とかぎりぎり間に合ったが、いろいろなポジションから撮る為にはアクションが遅すぎた。
乗船券売り場の屋上からは、天窓洞のある堂ヶ島と蛇島が望めたが、既に強い夕陽を浴びて影絵となっている。
アングルを変え必死になってシャッターを切るものの、陽はあっという間に海へと落ちてしまった。

「やっぱりどんよりしてるな」
「まだ降ってないから良しとしなきゃ」

翌日は昼から雨降りとの予報が出ていたので、午前中に久しぶりとなる松崎の港周辺をスナップし、昼食を取ったら早々と東京へ戻ることにした。
結果的にこの計画は正解だった。持ち時間2時間半をそれぞれの場所できっちりと撮影を楽しんだ後、集合時刻の12時に港まで戻ってくると、ポツリポツリと落ち始めたのだ。
古民家、なまこ壁、そして港と那珂川が織りなす風情ある街並み。Tくんとも何度となく訪れた松崎だが、その度に発見があるからやめられない。
但、漁協の裏手の商店街に建設された津波避難施設を見上げた時は、寒々しい思いが走った。

「どうだい、いいの撮れた」
「3~4枚かな」

カメラを構えて2時間以上も歩き回れば、さすがに疲れを感じる。しかし裏腹、被写体探しは楽しいもの。ノッてくれば、この先はこの先はと突き進んでしまう。しかもここでのスナップが今回最後のイベントとなるので気合も入っていたのだ。

「それじゃそろそろ帰るとするか」

こうして恒例の二日間は瞬く間に過ぎようとしていた。

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餃子フェス 昭和記念公園

11月23日(木) 勤労感謝の日

「ねえパパ。お昼ご飯、餃子にしない?」
「いいけど、どこで?」
「昭和記念公園」
「えっ?!」

どうやって調べたのか、昨日から昭和記念公園で【餃子フェス】なるイベントが開催されているようで、リチャードの散歩も兼ねてどうしても行こうと言うのだ。
旗日なので混雑が予想されたが、昼前から雨もやみ、西方には青空も見えてきたので、渋々だが出かけてみることにした。
リチャードは車に乗り込むと、いつものようにアームレストに前足をのせ、らんらんとした眼差しで前方を注視している。
車の中では暴れることもなく、また吠えることもないいい子なのだ。

お初となる昭和記念公園は、四季折々の景観や数々のアミューズメントを売りにしている人気のスポットである。しかも写真愛好達には格好の場所らしく、この日もデジイチを手にした年配カメラマンを幾人も目にした。

大きな池に最も近い“西立川駐車場”に到着すると、ゲートで駐車料金820円を徴収された。結構いい値段である。更には車を降りて入場口まで進むと、

「なに、ここって入園料を取るのね」
「井の頭公園とは違うみたいだな」

大人一人:410円。犬がいる場合は申請書も提出しなければならない。よくある市民憩いの場所とは異なる印象だ。一方、そんなことはお構いなしのリチャード。ぴょんぴょん飛び跳ね嬉しそうである。広々とした園内に入れば、人間だって気分爽快になるのだから、犬なら尚更かもしれない。
紅葉のピークはやや過ぎていたが、葉が落ちた木々は、初冬の凜とした空気感をこの上なく演出していた。
それにしても、さっきから止めどなく響き渡る「バラバラバラバラバラバラバラ」とう騒音が耳障りでしょうがない。これ以上音量が上がったら、リチャードは怖がって一歩も歩けなくなるほどだ。
と、その時。左前方から突如大型ヘリが姿を現した。恐らく先ほどからホバリングの訓練中だったのだろう。そう、隣接しているのは陸上自衛隊の立川駐屯地である。しかしこのような訓練、なにも人の集まる祝日にやらなくてもいいのにと思う。
銀杏並木まで来ると、下り坂の先に幾棟もある白いテント群が見えてきた。それも公園の外だ。

「あれが餃子の会場みたいね」
「ほんとだ。一度出なきゃ」

入口の係員に訊くと、再入園は可とのこと。

「それじゃ、手を出して下さい」

再入園時の印として手の甲にハンコを押された。ブラックライトに反応するインクを使っているのだろう。専用のペンライトを当てると文字が浮き上がる。

会場へ近づくにつれ、嫌な予感が膨らんだ。
ブースの合間から恐ろしいほどの人波が見えたからだ。それと、こちらに向かって女性スタッフ近づいてきたので、ペットの入場について訊いてみると、

「大丈夫です。ワンちゃんいっぱい来てますよ!」

まずは一安心して入場口へ向かったが、案の定、それは凄いことになっていた。会場の左手に餃子店15店、スイーツ&ドリンクの 店5店、総計20ブースがずらりと並び、それぞれに20~30人の客が列をなしているのだ。これはもう壮観である。
その反対側には広々とした飲食コーナーになってるが、ざっと見回しても満席だ。

「どこでもいいから並んじゃおう」

最も手前が“赤坂GYOZA365”だったので迷わずそこへ並んだ。女房は隣の隣、“近江肉餃子包王”に並んだ。
おりこうさんのリチャードは、女房の足元でおとなしくしている。
今回のイベント、現金で買えるのはスイーツ&ドリンクだけで、メインの餃子は食券またはSuicaなどの電子マネーでしか買えない。どこの店も一皿600円と割高なイベント価格だが、そんなことは物ともせずの大盛況である。

さて、並んだまでは良かったが、この列、一向に進まない。10分が過ぎた辺りから少々イライラしてきた。
周りを見ても、女房の列を含めてどこの列も動きがない。
待つこと更に10分。既にあきらめの境地である。
いつになったら食べられるのだろう…
しかもこれだけ待って600円もの高い餃子が不味かったら…
不安がこれでもかとぐるぐる回り出す。
そして並んで30分が経とうとした時、気合を入れて量産し始めたか、列に動きが出始めた。
女房を見ると、殆ど最前列まで進んだようで、間もなく餃子を手にするところだろう。

余りに待ちすぎて食欲は半減していたが、熱々の餃子は素直に美味かった。肉汁が口いっぱいに広がると、条件反射でビールが欲しくなる。

「パパの美味しいね」
「肉がけっこう入ってるからな」

リチャードが欲しそうにしているが、餃子はちょっとあげられない。
気が付けば会場を抜ける風にも冷たさが加わり、斜光がすでに夕暮れの様相を見せていた。

「食べたら帰ろうか」

会場を出ると、再び西立川口へ至る坂を上がっていった。
ここが気に入ったか、リチャードが嬉しそうに右や左へ向きを変え、グングンとリードを引っ張り続ける。

池まで来ると、壺焼きの焼き芋屋が店を出していたので、ここでまた一休み。
とても甘い焼き芋をちょっとづつリチャードへあげると、それはすごい食べっぷり!

「おなか減ってたんだな」
「餃子は私達だけだからね」

駐車場を出る頃には、立川の街に明かりが灯りはじめた。
国立を抜けて五日市街道へ出た時、ふと車内が静かだと後部座席へ目をやると、
寝てる寝てる、二人とも。

1Nikkor 壊れた?!

 次の連休は山歩きを予定していたので、ここのところ出番がめっきり減っていたV2を磨いておこうとカメラケースから取りだした。
 グリップゴムに若干の使用痕はあるものの、アウトドア専用として酷使している割にはきれいな状態を保っている。軽量コンパクトのボディーは山歩きに必要不可欠な性能であり、これに慣れてしまうと、D600を持ち出す気にはなれない。

 あらかじめフル充電していたバッテリーを装着して電源を入れた。

「うん?」

 何故かモニターがオンにならず暗いままだ。何ヶ月も使っていなかったので設定が狂ってしまったか?
 恐々設定ボタンを押すと、瞬時にモニターが起動。ちょっとほっとした。
 全ての設定をリセットした後、ついでにSDカードも初期化した。一旦電源を落とし、気を取り直してオン。

「ダメだ…」

 EVFを覗いても同じく真っ黒。ところが良く見ると微かに映像は映し出されている。但、合焦はできないようで、シャッターは下りない。
 ついにV2はお釈迦か…
 最後の頼みとして、V2のトラブルに関してググっていくと、面白い記事を発見。

http://www.nikon-image.com/support/whatsnew/2015/0203.html

 【1 NIKKOR レンズ「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6」ご愛用のお客様へ】という題名で、まさに私のV2に装着してあるレンズに関してのリコール記事だったのだ。
 と言うことは、この故障は若しかするとV2本体によるものではなく、レンズトラブルの可能性も出てきたわけだ。あわよくば無償修理が適用になるかもしれない。
 こうなるとニコンサービスに行ってみる他なく、たまたま翌日に休みを取っていたので、さっそく新宿サービスセンターへ持ち込んだ。

 新宿西口エルタワー28階にあるニコンサービスセンターは、THE GALLERY(写真ギャラリー)を併設しているのでちょくちょく足を運ぶお気に入りの場所。A1等、大判に引き伸ばされたプロやハイアマの作品は実に見ごたえがあり、且つ勉強になる。
 エレベーターを降りると眼前に新宿の街並みが飛び込んできた。

 西武新宿駅方面から東口までが、まるで箱庭のようだ。更にサービスセンターへ入ると、今度は眼下に中央公園を置いて、東京の西方面を遠くまで見渡すことができる。

 整理券を取るとすぐに呼ばれたので、症状やリコール対象のことを詳しく伝えると、担当者が徐にチェックで使うミラーレス機を取りだして、持参した1Nikkor10-30mmを装着、電源を入れた。
 やはりV2と同じ症状が出た。

「レンズが原因のようですね。このレンズは未対策なので、無償修理対象です。ただちょっと、ズームの部分にガタが出ているのが気になります」

 これまで気が付かなかったが、係員が差し出した色違いの同レンズを触ってみると、なるほど、そのガタが分かる。

「今回の症状がこのガタによるものだと、有償になります」
「予算的には?」
「8,000円前後ですかね」

 なんとも微妙な数値だ。新たにレンズを入手しようとすれば、中古品でも8,000円ではとても手が届かないので、ここは素直に修理依頼することにした。

「お届けまでに10日間から2週間ほど掛かります」

 一応リコール対象品なので、送料は無料とのことだ。
V2は我が写道楽に欠かせない機材となっているので、修理は致し方ないことだと思うが、それにしても品質と信頼のNikkorレンズが、こんな容易く壊れてしまうとはちょっとがっかりである。
 活況を帯びるミラーレス市場で、天下のニコンが苦戦を強いられているのは周知の事実。1Nikkorの戦略が良いか悪いかは別としても、カメラ業界全体がようやく掴んだ進むべき方向に対して、ニコンだけが右へ左へと迷走しているように見えるのは、恐らく私だけではないと思う。

眼科検診

年に一度、武蔵野市から送られてくる“眼科検診”のお知らせ。
最寄りの指定病院で、視力、眼圧、眼底等々の検査を行うものだが、白内障や緑内障のような眼球固有の問題だけではなく、動脈硬化の進行状況等も明らかになるという、中高年者にとってはありがたき内容。還暦を過ぎた我が身にはもはや必須あり、おまけに実費500円は嬉しいところだ。

目はもともと悪い方ではなかった。若い頃は両眼共1.5の視力があり、ずいぶんと自慢にしていたものだ。しかし加齢には逆らえず、近年では老眼が急速に悪化して、度数2.0の老眼鏡無くしては、新聞も読めない状況となっている。それに右目だけ視力低下が進むというのも気になるところ。

受診した病院は三鷹駅北口の「武蔵野眼科」。この病院は何かと移転を繰り返していて、最初に利用した時は三鷹中央通りと五日市街道の交差点近くにあったのだが、気が付くと井の頭通り沿いへと移っていて、更に今は三鷹駅北口とむらさき橋のちょうど真ん中に位置する、メディパーク中町というビルの4階に入っている。
近所には武蔵野眼科を含めていくつかの眼科病院があるが、私がここを選んだのには訳がある。
もう十数年も前のことだが、ゴロゴロとした異物感がなかなか取れず、目薬を差しても流水で洗っても変わることがないので、もはや病院しかないと、自宅から一番近くにあった「みたか○○眼科」へと駆け込んだ。診てくれたのは小太りで厚化粧の女医だった。

「よく調べたのですが、何も異常はないですね」
「えっ、じゃ、なんでしょう、このゴロゴロ感は」
「とりあえず点眼薬を出しておきますので、様子を見てください」

しっくりこない。これだけ気になる異物感があるというのに、何もないとは考えにくい。案の定、処方された点眼薬を一日使ってみたが、何も変わることはなかった。
意を決し、翌日には別の眼科、つまり三鷹中央通りにあった武蔵野眼科へ相談兼がね訪れてみた。
経緯を説明するとさそっく診察が始まった。こちらも女医さんである。

「極微細ですが、錆が二か所付着していますね」
「錆、ですか?」
「埃の中に微細な鉄粉が混ざることがあるのですが、厄介なことにこれが目に付着して錆びてしまうと、水で流しても取れなくなるのです」
「どうすれば?」
「削り取ります」

これには驚いた。目を削るというのだ。

「麻酔をかけて簡単な手術を行います。お時間大丈夫ですか」

既にやる気満々である。

「お、お願いします…」

点眼麻酔をかけ、あとは強い光の中で不安を覚えることなく処置は終了した。あっけなさに安堵を覚えたが、本来の辛さは麻酔が切れた後に襲いかかってきたのである。
何と術前のゴロゴロ感が誇張なしで10倍に膨れ上がり、涙は出っぱなしになった。正直なところ、寝ることもままならない状況になってしまったのだ。
5個ほど処方された“ヒアレイン”と称する点眼薬だが、これを3分毎に点眼してくれという。仮にゴロゴロ感がなくとも、言われたとおりにさしていれば、眠る暇はない。
ちなみにヒアレインは角膜再生効果があるポピュラーな点眼薬。錆を削り取られた傷を一刻でも早く治すにはさし続けるしかないと、辛い夜にトライしたのであった。
この一件以来、目に関しては必ず武蔵野眼科を利用している。

視力0.8
1
眼圧11 mmHg
10 mmHg
SCHEIE(H)
SCHEIE(S)

さて、視力検査、眼圧検査と続き、その後は検査用の瞳孔を開ける目薬をさして、眼底検査を行った。
結果は表のとおり。Scheie分類がH所見並びにS所見も“1度”と出ており、案の定、年齢+α程度の動脈硬化が進んでいるようだ。以前、健康診断のオプションで、頸動脈のエコー検査を行ったことがあるが、その際も粥状硬化を指摘され、この辺が己の健康管理の要になるのだろうと、前々からの自覚はあった。

2017年夏 山形・秋田

今年の夏は山形で遊んだ。昨年が仙台だったから、2年連続して東北を選んだわけだ。
35℃なんていうクソ暑い日が続けば、やはり涼しいところへ行きたいと思うもの。そう決まると、心は清々しいイメージの東北へ迷うことなく飛んでいったのだ。

決め手は女性ハイカーのブログで見た御釜の写真だった。
ロープウェイで一気に山頂まで上りつめたら、そこからアップダウンの少ない尾根道を、夏の植物を愛でながら歩き進む。すると青緑色の水をたたえる火口湖“御釜”が現れる。と、こんな筋だが、そこには山ならではの爽やかさに満ち溢れ、胸のすく景色と合わせて、体力を使わず且つ時間短縮が可能という、今回のスケジュールにはもってこいの要素を感じ取ったのだ。

思い立ったら吉日と、すぐに山形駅前のビジネスホテルを押さえて、当日を楽しみに待った。
余談だが、このホテル予約の際には少々意味不明なことがあり、首を傾げた。
予約にはいつも利用するYaHooビジネスを使った。
すぐに見つかったホテルは、駅東口の「リッチモンドホテル山形駅前」で、“8月10日(木)大人一人一泊7,000円空き室あり”と表記されていたが、もちろんせっかくの山形まで出かけるのだから一泊ではもったいないと二泊で予約を取ろうとしたら、合計金額25,800円と表記された。
ん?
7,000円×2日=14,000円ではないのか。しかし落ち着いて考えると、二泊目の8月11日は、最も新しい国民の祝日「山の日」だったのだ。よって割増料金かとも思ってみたが、それにしても高過ぎる。それでは連泊という形ではなく、10日に一泊、そして11日にまた一泊と、予約方法を変えようとしたら、11日は全室満室とでた。連泊なら取れるのに一泊ずつではNGとなるこのシステムに少々むっときたが、仕方がないので、一泊目はそのままリッチモンドホテルを押さえて、二泊目には他のホテルを利用することにした。ところがさすが“山の日”である、なかなか空き部屋が見つからず、やっと予算内でゲットできたのは、楽天トラベルのサイトにあった「ホテルキャピタルイン山形」。リッチモンドホテルよりグレードは落ちるが、一泊8,680円と祭日にしては安くて助かった。
これで準備完了だ。

出発は10日(木)午前5時。残念ながら小雨がぱらついている。念のためにYaHoo天気の雨雲レーダーで良く調べると、関東から北東方面、つまり太平洋岸に沿って雨雲が掛かっていたが、福島辺りまで行けば恐らく回復するのではと予測できた。
スマホひとつでこのような情報を得られるのだから、まったく便利な世の中である。

車は順調に東北道を進んだ。すっきりと治らない腰痛がちょっと心配だったが、時速100Kmから120Kmの間を常にキープできる快適なドライブが、多少重苦しい腰回りのことを忘れさせた。
普段はそれほど飛ばさない高速道路だが、何故かこの時は妙にテンションが上がり、古くなったとはいえ、シルキーシックスを搭載したE46の底力を楽しむようにアクセルを踏み続けたのである。レーダーや覆面を気にしながらも、ある時は150Kmをオーバーさせ、我が物顔で疾走するベンツやBMWを見つけては、後ろからツンツンと遊んでみた。

こんなことで、あっという間に最初の休憩地「阿武隈PA」へ到着。朝食は出発前にシリアルを食しただけだったので、ちょっと前から胃がキュ~ッと鳴り始めていたのだ。施設に入ると右手が食堂だったので、迷わず入った。
<何にするかな>
店内を見回すと、壁に張った紙に“名物・白河ラーメン”とある。
<名物に旨い物なしだけど、まっ、これにするか>
食券を受付のおばさんに差し出し、待つこと5分。

「Eの14番の方、お待たせしました」

カウンターの一番端に陣取り、ゆっくりと食した。
案の定である。ちぢれ麺は食感も良かったが、スープの余りのあっさり味に、全くうま味が感じられない。瞬時に常磐道・関本PAの“野菜炒めラーメン”のインパクトを思い出した。ラーメンという食べ物には、やはりある程度のインパクトは必要。スープを啜ったら、ん~、とか、ふぅ~、とかのリアクションが出て然りなのだ。

その後も東北道は順調に流れ、白石ICを降りるとエコーラインに乗って刈田岳を目指した。

刈田岳駐車場から目と鼻の先にある“御釜”。ウェブサイトで見つけたこの写真を見て山形行を決めたわけだが、こうして目の当たりにすると、スケールのでかさがひしひしと伝わってくる。馬の背まで歩を進めると、御釜の右手に刈田岳、そして左手に熊野岳と、素晴らしい広がりを見せる山岳ビッグビューを堪能できたのだ。
車で手軽に来られる点については、やや興ざめを覚えるところだが、老人や小さな子供たちまでが、この山岳美を自分のものにできることは、難しいことなしに素晴らしいことだと思う。
その後、馬の背で暫し撮影を行っていると、ふと山登りが恋しくなった。御釜の迫力もいいが、自分の足を使って登る奥多摩・岩尾根から見る富士山も、負けず劣らずの感動を与えてくれるのだ。

山を下りた後は、蔵王温泉にある“鴫の谷地沼”(シギノヤチヌマ)という池に立ち寄ってみた。“蔵王町の見どころ”で検索しても出てくるところではないが、山形駅前に至る途中に位置することや、何となくその名前に惹かれたこともあって、とりあえず散策を計画に入れていたのだ。
ロープウェイ山麓駅からちょっと南へ歩いた道端に、“鴫の谷地沼遊歩道入り口”の道標がある。
急な階段を下りていくと、ここを訪れる人は少ないのだろうと思われる荒れた道が延びていた。踏み固められた草むらを行く感じだ。
ブンブンと顔に絡みつく多数の虫が不快であったが、湖畔まで出ると、
<なるほど☆>
面白そうな撮影スポットが待っていたのである。対岸に釣り竿を振っている人が見えたが、調べるとここはブラックバスの釣り場でもあるそうだ。
静寂に包まれた鴫の谷地沼は、伊東の一碧湖に共通する雰囲気を持っていて、今の季節もいいのだが、秋の紅葉シーズンに訪れたら、全く別の顔を拝めるのではと興味は尽きない。
東側まで回ると舗装路に変わった。池越しには眩しい青空と、蔵王の山々がそびえ立ち、まんま山岳リゾート地の王道を行くような景観である。
<しかしよく歩いた。汗でびっしょりだ>
私は大層な汗っかきである。よって夏に綿の下着はNGだ。汗を大量に吸い込み不快でしょうがないし、そのまま冷房の効いた部屋に入れば寒くて震えがくるからだ。
よって山歩きだけではなく、普段の生活からクールドライタイプの下着を愛用している。汗を吸い込んでも乾きが早いから、サラッとして快適なのだ。
そのクールドライのVネックシャツが汗でぐっしょりになっている。
こうなるとチェックイン前に行かなければならないところがある。そう、温泉だ。
蔵王温泉人気の立ち寄り湯でトップに輝く“蔵王温泉大露天風呂”。ここは押さえておかなければならない。これだけ汗をかいた後だから、さぞかし気持ちがいいだろう。

露天風呂の駐車場には、鴫の谷地沼から数分で到着。さっそくタオル片手に車を降りた。
入り口と示すところから階段を下っていくと、下から渓流のせせらぎが聞こえてきた。なるほど、露天風呂は清流のすぐ脇にあるだ。これは実にナイスなSituationだ。
それにしても硫黄の匂いが物凄い。これが苦手な人には辛いかもしれない。

「はい、550円です」

いかにも人の良さそうなおばさんに入浴料を払う。
脱衣場へ入ると、下方へ段々畑のように延びる露天風呂の様子が見えるが、誰一人として体を洗っていない。そもそも体を洗うスペースがないのだ。ふと注意書きを読むと、“石鹸・シャンプー等はご利用いただけません”とある。自然を汚さない配慮はいいことだ。
それにしても豪快無比、野趣満点とはここのこと。通路と男湯の間には葦簀で目隠しがされているが、目が粗いので、殆ど丸見えといったところだ。
なんだかんだ30分。さっぱりしたところでホテルへ向かった。

山を下り終え、市街地から駅前エリアに入ると、不思議と心が落ち着きてきた。
リッチモンドホテルは開業が2008年とまだ新しく、部屋も設備も非常に清潔感があり、第一印象は上々。シングルルームなのに広く快適で、以前、能登を旅した時に泊まった輪島の“ホテル・メルカート輪島”のだだっ広い部屋を思い出してしまう。
適度な位置に適度な数のコンセント、室温の微調整が利くエアコン、シャワー湯量の豊富さ等々、ビジネスホテルに望まれる要素はもれなく押さえられている。
夕飯はいつものように居酒屋で済ましたが、疲れのせいか酔いの周りが早く、中生2杯で朦朧としてしまい、部屋へ帰れるとそのままバタンキュー。
無事初日終了。

目覚ましのスイッチを切り、窓辺に立つと、
<おいおい、雨かよ、、、>
よく眠れたせいか、気分は絶好調だったが、朝からの雨模様でテンションは急降下。
今日の予定は、ロープウェイ山麓駅から地蔵山頂駅へ上がり、そこから地蔵山山頂~熊野岳山頂の尾根道歩きを楽しみ、帰りは祓川コースを使っていろは沼へ下り、その後は再びロープウェイに乗って山麓駅まで戻るというものだった。
爽快な山岳景色をカメラに収めようと期待していたが、雨ではどうにもならないし、況して尾根道は濃いガスに包まれて眺望は望めないだろう。さっそくスマホで雲の動きを調べてみると、
<やはり太平洋側はダメっぽいか、、、>
中日は丸々一日を使える貴重な日である。蔵王が駄目なら一体どこへ行けばいいのか、いろいろと考えをめぐらすが妙案が浮かばない。
<とりあえず朝飯を食おう>
昨夜コンビニで仕入れた、サンドイッチ、ドーナッツ、牛乳、オレンジジュースをテーブルに並べ、ドリップコーヒーを入れた。先ずは食事をとって落ち着くことが肝心だったが、焦る心は食しながらスマホで山形を中心とする広範囲の天気推移を調べていた。
<なるほど、太平洋側は晴れなんだ>
その時ひらめいたのが、“にかほの元滝伏流水”。一度は被写体としてカメラに収めたかったところなのだ。早速Googleマップで位置関係を調べると、距離150Km、所要時間3時間と出た。元々目と鼻の先の山歩きを予定していたので、起床時刻は8時半と遅めだった。既に9時半を回ろうとしている。
<早く出かけないと、撮影時間がなくなる!>
こうして急きょ予定を変更し、鳥海山の麓、秋田のにかほ市へと向かったのである。

北海道とまではいかなかったが、郊外へ出るとどこを走っても道は空いていて、快適なドライブを楽しむことができた。一般道でありながら平均60~70kmほどのスピードで流していける。しかも信号は少なく、赤で引っかかってもすぐに青へと変わった。
さすがに下道で150Kmは遠かったが、流れに淀みがなく、且つ広大な稲作地帯を眺めながらの運転は全くストレスを感じないものだった。特に日本海が近づき、最上川の右岸を走る頃には完璧な快晴となり、はやる気持ちを抑えるのが大変。
昨日から乗りっぱなしの感があるE46だが、実に頼りになる。

元滝伏流水の駐車場に到着したのは午後1時手前。カメラと三脚を抱えると、足早に現場へと向かった。
流れ出た伏流水は渓流を作り、その美しさは“ミニ奥入瀬”と言って憚らない。倒木や岩に生える緑のコケ等々、水上にある関東の奥入瀬“照葉峡”よりも断然それっぽいのだ。
<おっ、ガスが立ち込めてきたぞ>
ただでさえ美しい流れなのに、そこに霧が立ち込めて幻想的な景観を生み出している。
但し、この霧は写真撮影となると厄介な現象だ。それこそ水の流れが霧でかすんで見えなくなるし、露出やピントを合わせるのも難しくなるのだ。
歩くこと10分。元滝伏流水の核心部へと到着した。
まず驚くことはその水量の豊富さだ。一般河川の滝ほどのボリュームがあり、水しぶきと濃い霧で髪の毛が瞬く間にじっとりとしてきた。
私以外に15~16名の観光客が居合わせたが、凛とした空気感と伏流水の織り成す美しさに、皆心を奪われていたに違いない。
これも鳥海山が育んだ水資源だと思うと、山ありきの日本の自然に、改めて感動を覚えるのだった。

急きょの作戦変更も満足度の高かった中日。
そして12日の最終日を迎え、予定通り向かったのは、通称“山寺”と呼ばれる、宝珠山立石寺である。
山の急斜面にいくつもの祠を配した、他ではなかなか見られない特異性と、数百段もある急な石段を上り詰めた者だけに見ることの許される絶景で、山形県下でも人気の観光スポットとなっている。
何でも、この石段を一歩一歩登っていくと、それに乗じて己の煩悩も消えていくとか。
さて、専用駐車場へはホテルから20分ほどで到着したが、寺までは更にそこから徒歩で10分ほど掛かった。この日は結構蒸し暑かったので、石段へ掛かる前からうっすらと汗ばんできた。
なるほど、下から見上げると物凄い急斜面だ。正直なところ老人にはしんどいだろう。それにしても時刻はまだ9時半だというのに、この観光客の多さにびっくりだ。
早速入場料300円を払って、石段上りをスタートさせた。参道は鬱蒼とした樹林の中だけに、そこを通る空気はひんやりとして、初っ端から汗の吹き出すことはない。ところが中盤に差し掛かると、多少だが息が切れてくる。下方を振り返れば、ずいぶんと上がってきたことが分かる。
但、石段を上がっていく過程には、祠をはじめ石仏やその他、様々な被写体が巡ってくるので飽くことはない。

「はい、こんにちは」

突如の声かけに振り向くと、どこから見てもお爺さんと言っていい年恰好の男性が、すぐ傍を駆け抜けていくではないか。何と、こともあろうに多数の観光客が行きかうこの石段で“トレラン”をやっているのだ。見れば、シャツ、パンツ、シューズも本格的なものを身に着けている。しかしどんな理由があるにせよ、わざわざ入場料まで払て、人をかき分けなければ走れない、この石段でやることはないと思うのだが、もしかすると多くの願い事があるのか、はたまた強力な煩悩に悩まされているのか、、、
世の中にはいろいろな人がいるとつくづく思う。

広がる下界の景観を最もよく見渡すことのできる五大堂までくると、さすがに汗まみれだ。
しかし気分は爽快だし、己の煩悩もだいぶ消え去ったと実感?するのだった。一苦労だったろうが、頑張って登ってきた老夫婦やチビッ子達も、皆いい顔をしている。
<閑さや岩にしみ入る蝉の声>
これは、元禄2年、おくのほそ道をたどり、今の7月13日に山寺を訪れた松尾芭蕉の句である。

下山後、境内の販売店でお守りを買った。
元来お守りを買うような柄ではないのだが、この山寺にはそうさせるような何某かがあったのかもしれない。
夏の東北最終日。あとは東京へ戻るだけだ。
車の中でひとりにんまりしながら、旅の楽しい思い出や経験を反芻するのだった。

追伸
この三日間、一度たりとも交通渋滞に出会わなかったのは、実にラッキー!

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