「日記」カテゴリーアーカイブ

痛い出費・女房とランチ

 約三十年前、自宅を二世帯住宅へと建て直した。その際、建築屋の強い勧めでで、トステムのセントラルヒーティングとSANDENの排気型換気システムを取り入れたのだが、冬は家中どこにいても同じ室温を保持でき、さらに中央換気によって、窓を開けなくても室内は常にフレッシュな空気が循環するという画期的なシステムは、実際に使ってみるとあながちうたい文句に嘘はなく、特に両親は“快適々々”と事あるごとに賞賛、そのおかげか二人ともずいぶんと長生きしてくれた。ちなみに極寒の北海道では、かなり以前から普及していたが、東京ではまだ少数派だったのだ。
 つい先日、その換気システムのモーターから異音が出始めたので、建築屋に相談したところ、ユニット自体を新型に交換するしかないとのこと。使っていた機械は古く、すでに修理用交換部品はなく、ユニットそのものも二十年前に生産中止となっていた。見積もりを出してもらうと、交換手数料諸々含め二十五万円強とけっこうな額。ただ、家屋の構造が耐火高密度設計なので、従来家屋の屋根裏や床下にある空気の通し穴がなく、放っておけばは湿気がこもり、柱や梁等々が腐ってしまう恐れもあるので、致し方なく工事を依頼した。秋には二階の和室のフローリング化を予定していたのだが…

「でもいいじゃない、これで私たちが死ぬまで回り続けるんだから」
「まあね…」
「ねえ、それよりヨーカドーに買い物があるんだけど、自転車じゃ行き倒れになりそうだから、車出して」
「ああ、わかった」

 ヨーカドーは省エネと称し、全館の冷房を控えめにしている。それでも一度足を踏み入れれば、オアシスであることに間違いはない。女房がGUで物色している間に無印良品のコーナーを覗いてみた。しっかりと見て回ったのはこれが初めてである。シンプル且つしゃれたデザインの生活用品が目立ち、眺めているだけでも楽しくなる。なるほど、見回せば女性客ばかりで、男は私だけだ。
「パパ、買い物すんだからお昼にしようよ」
「何にする?」
「バーガーキングは」
「このあいだ食べたばっかりじゃん」
「あたし、毎日でもいいけどぉ」
 女房の意見を振り切って、とんかつの“いなば和幸”の暖簾をくぐる。
 とんかつと丸亀製麺は食したい願望が定期的に沸き起こる。ちなみに、多くの人達に好かれるラーメンと焼肉にはそれほど食指は動かない。
「やっぱりかつやよりおいしい」
「そりゃそーだろー」
 柔らかいお肉で、ごちそうさまでした。

ヨルイチ・武蔵五日市

 八月三十日(土)。JR武蔵五日市駅周辺で行われる【ヨルイチ】なるイベントを覗いてきた。
 きっかけは「夜のスナップなら涼しさもあるのでは」という至極単純なものだったが、浅間尾根登山やつるつる温泉へ行く際に幾度も通るあの無味乾燥な道が、別世界へと様変わりした光景は暫し見惚れてしまうほど。駅前から檜原街道を西へ進むにつれ人いきれが増し、夜店やイベント会場では多くの見物客で賑わっていた。

 カメラを抱えてのんびり歩いていると、ドラムとベースの音が耳に入った。近づくと人垣ができていて、照明の先には年配者のバンドがライブの真っ最中。ボーカルの男性はサングラスで決めているが、私より歳上かもしれない。なかなか渋い声をしていたので聞き入っていると、いきなり“止まらないHa〜Ha”が始まり一気に盛り上がる。ベースの男性も声がよく、サザンのナンバーを披露した。
 道を横断し、はす向かいの会場へ移ると、こんどは年配の太った女性がギターを抱えてしみじみとバラードを熱唱中。その先では年配男性の二人組が、バンジョーとギターでなにやらアンサンブルを奏でている。脇にスチールギターが置いてあったので、待っていればハワイアンでもやるのかもしれない。
 さらに進むと、大きな会場に櫓が建ち、紅白幕の中では全員女性の和太鼓グループによる演奏が行われていた。打音には力強さがあり息もよく合っている。
 次から次へと現れる夜店や出し物に、時間はあっという間に過ぎていく。涼しさを期待して来たのだが、陽が落ちても相当な蒸し暑さがあり、シャツは汗でずぶ濡れである。
 それでも祭りの喧騒に身を浸すのは久しぶりだからか、決して退屈することはなかった。さらにこの町にはこんな人たちが生活してるんだと観察眼を光らせれば、武蔵五日市への印象さえ変わってくる。

 拝島で中央線東京行きへ乗り換える。国立を過ぎた頃にスマホを取り出し、女房へLINE。
ー 風呂沸かしといて
ー かしこまり。ご飯は?
ー つまみがあればOK
 車内の冷房で、シャツに染みた汗が冷えていく。

デニーズOld Boy’s 身近な避暑地

 クソ暑い夏に我慢ができなくなったら、いせやに行って店員さんに「生!」と言ってみよう。寛ぎタイムの始まりだ。
 ジューシーな焼き鳥と熱々の餃子を心行くまで味わったら、すかさず冷たいビールで流し込もう。瞬く間に極楽へ到着だ。気がつくと汗は引いている。

 昨今の猛暑はあまりに凄まじく、外出そのものを躊躇する。でも、友人たちとの飲み会となれば話は別。
「行ってくるね」
「はぁ~い、帰りは」
「そんな遅くない」

 八月二十六日(火)。東京駅での車両点検で、中央線は十分以上の遅れ。いつものこととは言え、午後の暑い頃にホームで立ちんぼはうんざりだ。
 八王子の南口に降り立ったが、負けずに暑い。

「ひさしぶり」
「Yさん、まだなんです」
「ああ、電車遅れてるからね」
 喉のカラカラがピークに達していた三人は、
「とりあえずビールたのんじゃおうよ」
 と、フライング。

「ひえぇぇ~~うめぇぇ~~」
 看板メニューの肉豆腐が甘じょっぱくてビールによくあう。
「つまみは適当にたのんでます」
 メンバー最年少のIさんは、いつも幹事役を買って出てくれる。スマホにメニューをインプットする目線が真剣そのもの。それにしても注文はスマホ、料理を運ぶのはロボットってのは、なんだかね…
「どうも~、ごめんなさい」
 Yさん到着である。
 ずらりと並んだ料理を前に、二度目の乾杯。

「おつかれさぁ~~ん」
 すでに酷暑など、うわのそら。

松崎・夏

 八月十四日、十五日の一泊で、西伊豆の松崎へ行ってきた。
 よくよく考えれば、松崎どころか、真夏に伊豆へ出かけたのは恐らく大学生の頃以来である。記憶が正しければ、当時つきあっていた彼女と南伊豆の弓ヶ浜へ海水浴へ行ったのが最後のはず。あの頃は夏になると猫も杓子も海を目指して大移動。特に若い男性諸君は、日焼け、海の家のビールと焼きそば、そしてなにより“小麦色に焼けたビキニのお嬢さん”を夢に出るほど渇望したものだ。
 これまで西伊豆へ出かけるとすると、春秋のバイクツーリングか、紅葉の頃の撮影行と年末撮影会のみだったので、印象は一様に静けさが支配していた。ところが今回、R136から見えるすべての海水浴場には、色とりどりの水着を着た人たちで溢れ、遠目にも海辺の活況が伝わり、久々に若いころの夏を思い出した。「一番好きな季節は夏だ!」と、胸を張って断言していたころが懐かしい。
 では今回、なぜわかりきった渋滞を押してまでも夏に出かけたのか?
 好きな松崎だからこそ、本来の姿をもっと知りたくなったのかもしれない。きっかけは“盆踊り”。ある時Facebookを開いたら、松崎ポートクラブさんの投稿に目が止まった。
 
『さぁ日本で一番地味だけど…
 日本で一番楽しい!? 松崎盆踊り!!
 今年も開催します』

 この一節にふと心が惹かれ、素朴だけど皆で楽しんでいる人たちの姿が想像でき、盆踊りを含め、“夏の松崎”へレンズを向けたら発見があるのではと、すぐに計画を練ったのだ。

 日帰りは到底無理があるので、宿探しから始めたが、さすがに旧盆ウィークだけあって、手頃な価格で泊まれる宿はどこも満室。じゃらん、楽天は全滅だったから、これまで使ったことのないBooking.comで検索を始めると、松崎のベストな場所にもかかわらず、一部屋だけ空いていた宿が“六弥苑”。古民家を改装したゲストハウスのようだ。ただ、ゲストハウスと称するところは利用したことがないので、やや不安もあったが、背に腹は代えられず、すぐに予約ボタンを押した。

 東名に入ってまもなくすると、旧盆の洗礼が待ち構えていた。横浜厚木間で21Kmの渋滞である。一時間ほど時間を無駄にしたが、これは想定内。沼津ICを降りてからは、三津シーパラダイスまで小渋滞が連発したが、その後は快調そのもの。ちなみに腹がへっていたので、沼津市内にある人気和風食堂の“弥次喜多”へ寄ってみたが、まだ十一時半にもなっていないのに駐車場は満車、おまけに入口にはウェイティング客が十人以上溢れ出ている。鰤の照り焼き定食を食したかったが、まっ、しょうがない。なにしろ夏休みなのだから。それでもあまりに腹がグーグーと鳴り続けるので、戸田に着いたらどこかの店へ飛び込もうとハンドルを握りなおした。

 坂を下り、右側に港が現れると、左側のロードサイドに食堂が軒を連ねる。十数年ぶりになるが、過去に数回利用したことのある“ゆうなぎ”の駐車場へPOLOを入れた。
 テーブルにつくと、正面の壁に貼られた“限定十食 深海魚天丼セット 1,500円”なるものに興味をそそられ注文。しばらくすると、店主がバットにのせられた数種の魚の切り身を差し出し、これからこれを揚げるのだと説明を始めた。プロの誠意を感じるサービスである。案の定、味は文句なし。

 ついついわき見をしてしまい危険極まりないが、POLOの車窓に広がる真っ青な空と海は素晴らしいの一言。夏ならではの青さを拝められただけで、来てよかったと思ってしまうほど。
 途中、海岸の脇にある土肥のセブンに寄ったとき、店内は真っ黒に日焼けした若い人たちでごった返し。立ち込めるローションの香りはいかにも夏の海だ。

 午後三時半。今宵の宿『六弥苑』に到着。ここはオーナーであるNさん一人で切り盛りしている。数年前に古民家と裏山をそっくり手に入れて、好みの宿泊施設へとリノベーションしたそうだ。素泊まり専用の宿ではあるが、厨房や冷蔵庫等々は自由に使えるので、宿泊者のアイデア次第で面白さが膨らみそうだ。何はともあれ、シャワーを浴びてスッキリさせ、一時間ほど横になった。酷暑と渋滞の中を延々と松崎までPOLOを転がしてくれば、疲れないわけがない。慣れないベッドにもかかわらず、瞬く間に寝落ちしてしまう。

 目が覚めると気分はスッキリ。POLOに積んできた折りたたみ自転車に跨り、町中へ向かった。すでに時刻は午後五時を過ぎていたが、盆踊りは七時からなので、先に腹ごしらえをすることにした。どこへ行こうか考えたが、やはり脚は“ぱぴよん”へ向く。料理はどれもうまいし、なにより旅先で落ち着ける数少ないところだから。到着するとさすがに旧盆休みだけあって満席だったが、幸運にもカウンターが一席空いたので、ささっと腰を据え、いつもの“生姜焼き定食”とビールを注文した。

 松崎港へ向かうころにはだいぶ陽も落ちて、ヘッドライトの当たるところ以外は完全な暗闇と化す。東京ではありえない街路灯の少なさだ。民芸茶房の脇を港へ抜けて、盆踊り会場へ近づくにつれ、辺りは明るさを取り戻し、かすかに東京音頭のメロディーも聞こえてきた。
 まだ始まったばかりなのか、はたまた曜日のせいなのか、踊る人も少なく、キャッチどおり“日本で一番地味な盆踊り”である。しかし盛大でないかわりに、ほのぼのとしたムードがむしろ心地よく、撮影は一時忘れ、近くにあったベンチに腰をかけてひたすら眺め続けた。日本の田舎を感じるワンシーンに飽きはこない。

 六弥苑へ戻ると、ちょうどオーナーがリビングにいたので、ファミマで買ってきたビールを差し出した。
「飲むでしょ」
「ありがとうございます。いただきます」
 オーナーのNさんは御年五十一歳の独身。話を聞くと、彼は古武道家であり、プロの料理人であり、はたまた車やバイクが大好きで、ちょっと昔には筑波サーキットで行われるゴルフ2のワンメイクスレースで年間チャンピオンを獲ったとか、それはそれは多彩な人なのだ。ビールが進むにつれ、八十年代、九十年代の車とバイクの話で盛り上がり、途中からほかの宿泊客も輪に入り、十一時過ぎまでお喋りの花が咲いた。これは実に楽しかったし、これまでの一人旅にはなかった発見でもある。
 このようなゲストハウスの場合、オーナーの人柄がよく、かつ巧みなハンドリングがあれば、旅の面白さを倍増させることもあるのだと痛感した。

 翌朝は、旧盆の上りラッシュを考慮して、慌しく朝七時には宿を後にしたが、見送りに出てきたオーナーがにこっと笑って、
「木代さん、泊らなくても、こっちへ来た際は寄ってくださいよ。飯でも食いに行きましょう」
「うん、声かけます」
 夏の松崎、いいもんだ。

BURGER KING

 例年だと、就寝時に寝室のエアコンをつけるのはひと夏に十回ほどなのに、今年はほぼ毎日である。夜になっても気温が下がらないこともあるが、それより風がない日が多くて、部屋に湿った空気が淀みきるのだ。ある程度の湿度はしょうがないとしても、そこそこ風が通れば、ぐっすりと眠ることはできる。枕もとのすぐ上にある窓にレースのカーテンをかけているが、これが四五度前後でたなびき、室温が二十八℃ほどなら理想的。
「そのジャージさ、、、ずいぶんと疲れてないか」
「じゃ新しいの買ってよぉ」
 使い馴染んだ部屋着ってのは、そう簡単に手放せない、と私も思う。肌との馴染みがいいからだ。
「風呂場のタワシが限界超えたんで、ダイソーに行こうと思ってたんだ」
「もちろん車でしょ」
「こんな日に自転車で出かけたら行き倒れだよ」
 ヨーカドー内にあるダイソーはちょくちょく利用している。安いのにあれだけまともな商品を提供するところなど、なかなか他では見られない。
 ショッピングバックにジャージとタワシが入った。
「どうする、帰る?」
「ちょっと早いけど、せっかくで出てきたんだから、なんか食ってこうか」
 腕時計に目をやると十一時を過ぎたばかり。
「パパ、バーガーキング食べたことある?」
「ない」
「じゃ行ってみようよ」
 バーガーキングはエミオ武蔵境という西武多摩川線の商業施設に入っている。
「へ~、いろんな店があるんだな」
 ドアを押して店内へ入ると、真正面のカウンターで働く五名の女性スタッフは全員外国人。しかもそろって南米系。まるで海外にきたようだ。腹ペコではなかったので、注文はジュニアのセットにした。女房がアボガドで、私はスモーキーBBQ。飲み物は二人ともコーク。出来上がりにやや時間がかかったが、初となる味わいはとっても好印象。マックと比べるとパティ―は明らかに“肉”を感じたし、バンズも単に柔らかいだけでなく、しっかりとした“パン”の味が出ている。
 美味しいからペロリと完食。
「うまいね。レギュラーにしとけばよかった」
「また来ればいいじゃん」