
大崎社長の配慮により、モト・ギャルソンに入ってくる中古車は、業販という形ですべてBFがもらい受けることに決定。煮ようが焼こうが俺次第であるが、少しでも利益を上げるために、クズ以外は基本的に直販で頑張ってみることにした。モト・ギャルソンからは薄利で出してくれるのだから、その分可能な限り儲けて、グループ全体に寄与しようと気合いを入れなおしたのだ。
入荷車両すべてに必要なのは仕上。ドゥカティの仕上げは杉並店が一手に引き受けてくれるが、そのほかの車両については、元スタッフの近江くんが数年前に独立開業した店、Pモーターサイクルで受けてくれることになった。
これで一応体制は整った。あとは予算と相談しながらいいものを仕入れるだけである。
契約内容の打ち合わせ等々で、杉並店やPモーターサイクルへ何度か足を運んでいたので、落札した八台のエナクルはまだ手付かずだった。幸いここ数日は晴天と予報が出ていたので、一気に仕上げようと、整備ツナギを着込んで朝から倉庫へこもった。
ざっと各部をチェックすると、主な錆の個所は、Fバスケットステー、スポーク、リム、ステム、シートポスト。全部きれいに落とすと、それだけで別物に見えてくる。錆落としにはケミカルの“ネバダル”が非常に有効。強い錆にはさらに真鍮ブラシを使う。全体の汚れ落としと艶出しには、モト・ギャルソンでもよく使うバイクワックスが効果的だ。倉庫の奥に古いオフロードスタンドがぶん投げてあったので、これを椅子として使ったが、なかなかあんばいがいい。

手を入れていくうちにわかったが、どの車両も虫ゴムが硬化して使い物にならなかった。部品としては非常に安価なものなので、全車新品に交換した。チューブも怪しかったが、基準空気圧にして一晩おいても抜けは見られなかったのでそのまま使うことにした。磨き、虫ゴム交換、充電ならびに走行チェックで、おおよそ一台一時間強の時間を要した。よって丸二日間、倉庫にこもり続けた。
これまでは客相手かディスクワークだったので、だれもいない倉庫で一人黙々作業を進めるってのは意外や新鮮。MP3プレイヤーで好きな音楽を聴きながらは癖になった。もっとも冷暖房のない倉庫なので、真夏と真冬は遠慮したい。
ヤフオクへは八台全車を出品させると、落札後の作業がてんやわんやになる恐れがあると思い、試しに二台だけを出品した。コメントには、<手渡し歓迎、配送は東京都のみ、配送料は一律3,000円>と記した。すると当日からウォッチリストが入りだす好発進。翌日には入札もあり、安い電動アシストの高需要を垣間見るようである。結局二台とも落札となり、17,500円、かたや18,000円と上々の出来。ただ、両方とも配送希望で、都内と言えども大井と町田だったので、丸々一日がつぶれてしまった。後日談になるが、残りの六台も落札はできたものの、やはり手渡しは一台だけで、あとの五台はすべて配送。これは大きな計算外。配送料はもらっているが、時間的なロスは大きい。
手間はかかるが確実に収益となる電動アシスト。味を占めた俺は、BDSへ行くたびに買って帰ろうと意気込んだが、はたして同じことを考える連中はいるものだ。回を重ねるごとに落札価格は上昇し、これまで10,000円以下で買えたものが、20,000円を超えるまでになってしまい、旨味は消えた。トータルで買えたのは二十二台。300,000円以上の利益は抜けたが、永続性は望めず、終いには出品すらなくなってしまった。
一方、メインである中古バイクの販売は、大きな問題もなく順調に推移していた。
ハーレーの売上は二〇〇七年以降、一時はリーマンショックの影響を食らってかなり落ち込んだが、その後徐々に回復していき、二〇一〇年を迎えるころから試乗会や各種キャンペーンに以前のような活況が戻ってくるようになり、それにスライドして売上は上昇していった。こうなると下取りのある商談も増え、上物が安定して入荷、Pモーターサイクルへの往復が頻繁になってきた。
「BF、ずいぶんと繁盛してるみたいじゃないですか」
「それほどでもないけど、この頃じゃハーレー店からけっこう下取りが入ってくるから、売上以上に利益が安定してるよ」
「いいよな~、うちなんて、こんなちっちゃなところでもけっこう家賃高いから、実入りは低いですよ」
「でも、ギャルソンのお客さんの利用はあるんだろ?」
「ん~~、どうだろ、減ってきてるかな」
近江くんの店は、二坪強ほどのスペースに机や収納棚を置いて、空いたところで整備をやっている。とても広いとは言い難いが、それでも東八道路沿いなので、やはりそこそこの賃料は取られるのだろう。
「どれだけ仕事を持ってこられるかまだわからないけど、なんか要望があれば遠慮しないで言ってくれよな」
「了解」
近江くんのメカとしての腕は確かだし、信頼もおける。人間的にも俺は大好きだ。しかし彼にはあまり欲を感じることがないのだ。せっかく独立開業したのに心配である。
BDSからの仕入れは思惑通りに推移していた。やはりドゥカティは市場人気が低いようで、水冷モンスター系でなければ十中八九落とせた。そんな不人気車でも、多くの人達がアクセスするネット販売の力を借りれば売れ残る心配はない。「こんなの売れないよ」とほとんどの業者が口をそろえるバイクでも、「これを探していたんだ!」と目をらんらんとさせる一般客は必ず一人はいる。

輸入車の買いやすさをうまく利用して、英国の名車Triumphも数台買ってみた。万人向きのモデル“T100ボンネビル”を中心に、上物があればスラクストン等々にも目を向けた。クラシックスタイルのモデルは、ヤマハSR400を筆頭に、カワサキのW800、W650と流行に関係なく人気が安定してるところが魅力だ。乗ってみると、いずれもバイク本来が持つ爽快感に溢れ、神経質ではないエンジン性能は、どのような用途にもはまることうけあいである。T100ボンネビルをアップさせると、間違いなく一カ月以内に商談が発生した。

ドイツのBMWは、ハーレーと並んで輸入車の中では人気のブランド。特にツアラーのR1200GS系とレーサーレプリカであるS1000RRは引っ張りだこで、上物を落札するのは難しい。ところが同じBMWでも、小排気量のFシリーズの中にある“F800S”とか“F800ST”は不人気車のようで安く買える。

しかしグーバイクへアップすれば件数こそ少ないがアクセスはあり、売れ残ることはない。エンジンは驚くほど扱いやすく、小型ボディと相まって操作性はトップクラス。俺が昔から推奨している“ちょうどいいバイク”の典型的なモデルだ。ロングツーリング、街中、ワインディングでのスポーツ走行、どれをとっても一級のパフォーマンスを示す。

ただ、BMWは最先端のテクノロジーを売り物にしているメーカーであるはずだが、コンピュータートラブルは巷でもよく聞く話。BFでも一度F800のエンジン不動が発生し、突き詰めていくとやはりコンピューターの不具合だった。部品を注文すると、納期に三か月かかると言うバカな返答。購入客は怒るし、部品代諸々で200,000円越えの出費は痛すぎた。踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだ。ただ、この一件に際して、BMW正規ディーラーであるFモータースのN氏には大変な尽力をいただき、なんとかピンチから脱出できたのだ。その節は本当にありがとうござました!