初詣・大江戸散歩

「初詣は二日にしようよ」 
 女房の仕事先は年中無休。年始最初の休みを初詣にあてることにした。
「参拝したらさ、そのあと散歩しないか」
「どうゆうこと?」
 数年前から初詣は浅草の浅草寺と決めている。ややマゾっぽいが、あの強力な喧騒と人いきれを浴びないと、新年が始まった感じがしないのだ。
「おもしろいサイトがあってさ、その中に“大江戸散歩コース”ってのを見つけてね、浅草寺から名所旧跡をたどって三ノ輪まで歩くんだ」
「いいじゃない」
 浅草寺~べらぼう 江戸たいとう大河ドラマ館~姥ケ池~待乳山聖天~平賀源内墓~小塚原刑場跡~延命寺~浄閑寺~三ノ輪駅
 以上がコースだ。おおよそ5km、徒歩のみで一時間半ってなところだろう。
 
 一月二日(金)。中国人観光客が激減しているはずなのに、浅草界隈の人出は例年となにも変わらない混雑ぶりだった。仲見世から境内まではまさに人の激流である。ただここ数年来、交通整理が行き届いているため、流れは比較的スムーズ、それほどイラつくこともなくなった。
「お賽銭投げたらどっち?」
「右。いつもと反対」
「わかった」
 参拝が終わり、境内の喧騒から脱出すると、気温が一気に下がる。
 信号待ちで立ち止まると目の前が大河ドラマ館。ここは写真だけ撮ってスルー。すぐに同じ左側に姥ケ池が見えた。ずいぶんと小さな池だが、大昔は隅田川へとつながっていたそうだ。
 隅田川沿いの大通りに出たら左折、まもなくして良縁、商売繁盛の御利益があると言われる、待乳山聖天(まつちやましょうでん)の角に出る。石段を上がり境内に入ると、こぢんまりとした寺院のわりに参拝者はけっこう多く、人気のほどがうかがえた。能のようなものが行われていたので撮影しようとしたら、すぐに終わってしまい残念。
 再び大通りを歩く。
「おなかへったね」
「店っぽいもんないけど、最後に南千住や三ノ輪の駅に行くから、そのあたりでランチできるんじゃないの」
 白髭橋西詰を左折、いったん住宅街に入って迂回すると平賀源内の墓があった。彼は日本の元祖マルチクリエーター。オランダ製の壊れたエレキテルを修理・復元し、日本に電気の概念を広めたことが有名だが、この他にも、本草学者・地質学者・蘭学者・医者・発明家・戯作者・画家・俳人としても大活躍したそうだ。
 次は泪橋を右折して、南千住駅へ向かう。
 駅の隣、高架線脇にたたずむのが延命寺で、境内には小塚原刑場跡がある。小塚原刑場は江戸の二大刑場のひとつで、もうひとつは品川区の鈴ヶ森刑場。ショックだったのは処刑の方法。磔刑(はりつけ)、火刑、梟首(さらしくび)が主だが、他になんと刀の試し切りまで行われていて、累積処刑者数は二十万人を超えると言う。よって延命寺は、処刑された人々の霊を弔うために建てられたものなのだ。
「駅前に行ってみよう」
「おなかもすいたけど、なんだか疲れちゃったぁ~」
 南千住の駅前に出ると、マック、バーガーキング、デニーズ、日高屋が営業していた。
「おまえの好きなバーガーキングにする?」
「今日はハンバーガーって気分じゃない」
「じゃ、日高屋にしよう。おれ行ったことないし」
 ちょうど昼時とあって満席だったが、すぐにカウンターが空いたので並んで陣取った。女房がかた焼きそば、私はタンメンと餃子のセットを注文、間もなくして運ばれてくると、どちらも見た目から量が多そうだ。それでも腹ペコだったから即完食、うまかった。

 常磐線沿いに住宅街を進む。しばらくすると線路の左側に黒い瓦屋根が見え、左へ回り込むと、それが浄閑寺だった。
 見た目は単なる寺院だが、歴史を調べるとこれまた驚いた。ここは遊女たちの供養寺なのだ。その昔、近くに吉原遊郭があって、安政の大地震の際に多くの遊女が亡くなったおり、その遺体をこの寺に“投げ込むように葬られた”ことから、投込寺(なげこみでら)と呼ばれてきたそうだ。いやはや、なんとも荒っぽい。
「もうへとへと、コーヒーでも飲んで休憩しよう」
 三ノ輪駅の交差点にあったドトールへ入る。
「ホットでいい?」
「ああ、それとシナモンロール」
「よく入るね」
 実際、私もヘトヘトだったので、とにかく甘いものが欲しくてたまらなかった。しっとり甘~いシナモンロールをコーヒーで流すと、やっと人心地がついた。

 この大江戸散歩、やってみればなかなか面白い。新たな目線で東京を眺めたり、歴史の勉強になったりと、なにより気軽にトライできるところがGooだ。もちろん、今回のコースはほんの一例。この他にも興味深い大江戸ルートがたくさん掲載されているので、いろいろと下調べの上、この冬から歩き回ってみようと思う。

さんたつ by 散歩の達人


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