
十二月一日(月)。胃の内視鏡検査を受けてきた。これまで長らく緑町の陽和会病院を利用してきたが、今回は初となる西久保の“いとう胃腸クリニック”で“入れる”ことになった。
ギャルソンに勤めていた頃は、健康診断の際に健康保険組合の補助を利用して、確か7千円で毎年内視鏡検査を受けていた。ところが退職して国民健康保険に変更すると、そのような補助はなく、自腹で一万七千円を支払って受けていた。ところが、
「たしか市の補助で、もっと安く受けられるはずだよ」
と、女房が教えてくれた。
詳しく調べると、あるある、“武蔵野市胃がん内視鏡検診”なるものが。対象は五十歳以上の市民で、二年に一回、指定病院で受けられるようだ。気になる費用は二千円とリーズナブル。さっそく申し込むと受診券と指定病院一覧が送られてきた。ところが指定病院の中に陽和会病院が見当たらない。
「“いとうクリニック”へ行けばいいじゃん」
「なんで?」
「あたし、そこで胃カメラ受けたことあるもん」
そんな話、一度も聞いたことがない。
「じょうず?」
「わかんない、初めてだから」
まっ、どこを選んでもそれほど大差はないだろう。
「マスクは取ってもらって、そこへかけてください。鼻に麻酔をかけます」
「ちょ、ちょっと待ってください、鼻じゃなくて口でお願いします」
「えっ? 鼻の方が楽ですよ」
「いやいや、慢性鼻炎もちだし、以前に鼻腔の手術をやったことがあるんで、なんとなく鼻は鬼門なんですよ」
「そうですか、わかりました」
ベッドで仰向けになり麻酔薬を口に含む。三分経ってそれを飲み込むと、こんどは別の麻酔を口蓋へ直接噴霧された。
「はい、横になってくださいね~、これマウスピースです、テープで固定します」
看護師さんがよだれかけを装着してくれると、ドクターIが内視鏡を持って目の前に座った。
「じゃ入ります」
いきなりの挿入。けっこう荒っぽい。オエッ!が連発する。陽和会のドクターと較べると、あまりうまくない。
「モニターに映ってますから見てくださいね」
それどころじゃない。
「墳門が開き気味ですね。逆流症になる可能性ありますね。げっぷとか出ませんか?」
「……」
「ああ、鼻からじゃないからしゃべれませんね」
この野郎!
それでもドクターIはご丁寧なことにずっと説明をしながら検査を進めていった。
「これがおっしゃっていたポリープですね。ピロリ菌はないようです」
胃底腺ポリープであろう。このポリープはピロリ菌のない環境下でできるのだ。
「おつかれさまでした。逆流症が気になりますが、そのほかは異常なしです」
「そりゃ安心しました」
「二年後には鼻からやりましょう」
ドクターIは、よっぽど好きなんだろう、鼻から入れるのが。