













「早く寝なきゃね」
「そう言っていつも夜更かしじゃん」
十一月二十六日(水)。おなじみ、年一回開催の西一町会・日帰りバス旅行。夫婦そろって参加の恒例イベントである。
昨年は鎌倉だった。小町通りの散策に始まり、長谷寺、鎌倉大仏、そして新江ノ島水族館と、けっこう盛りだくさんだった。とりわけ水族館が楽しく、いつもながら参加費一人四千円は安いとつくづく思った。
さて、今回の行き先はちょっと遠目で群馬県。床モミジで知られる“宝徳寺”と、二〇一四年に世界遺産へと登録された“富岡製糸場”である。
宝徳寺の紅葉はぎりぎりセーフのようだ。境内にあるモミジの発色はとても見事で、好天に助けられ目にも眩しいほど。おまけにシーズンとあって来場者が多く、目玉の“リフレクション”では場所取り合戦が勃発、レッドカーペットの上で床に伏せ、スマホを覗き込みながらシャターを切る姿が延々と続く。持参したα6000の液晶は、上下に角度を変えられるので、床に伏せなくても楽にローアングルが決められる。
「いいかげんおなかすいたね」
「一時間近く予定がずれ込んでるからな」
本堂入口右手にはキッチンカーが並んでいて、一番奥の車には“焼きまんじゅう”と記したのぼりがたっている。
「あれ、いこう」
「大きそうだから半分っこでちょうどいいじゃん」
腹が減っていればなんでもうまいが、甘じょっぱいタレはやはり魔法。何個でもいけそうだ。
富岡製糸場の見学はガイド付きである。歴史がよくわかって興味深かった。中でも、繰糸所の機械は非常にメカニカルであり、当時の技術の高さがうかがえた。ただ、空腹はなんともしがたく、後半になると腹が鳴って集中できないほど。
「はい、みなさま大変お待たせいたしました。これから昼食へと移らせていただきます。食事処の“ときわ荘”さんは、店舗が登録有形文化財に指定されていて、お庭もとてもきれいです。お料理は群馬県特産のこんにゃくを主役にしていますのでお楽しみに♪」
ガイドさんの説明を聞き、少々心配になってきた。こんにゃくが主役では腹が満たされないのでは…


ときわ荘へ到着すると、なるほど昭和な建物だ。通された部屋は和室。年寄りばかりの団体にこれは厳しい。案の定、あちらこちらから不満の声が…
「それでは椅子をお持ちしましょうか」
「いやけっこうです。一人だけ頭が出て浮いちゃうんで。それより座布団をもう一枚おねがいします」
なるほど。折った座布団を二枚重ねにするのだ。これならさほど頭が飛び出ないし、膝にも股にも優しそうだ。
そうするうちに味噌汁と弁当箱が運ばれてきた。蓋を取ると四つ切り箱。松花堂弁当である。案の定、量が少ない。が、いただくと、これがうまい。こんにゃくの刺身は無論のこと、煮物、鳥の照り焼きも言うことなし。ご飯にいたっては冷たくても驚くほどおいしいのだ。これぞ老舗の味か。
「パパ、鳥あげる」
うちの女房、鳥が苦手なのだ。
高速道路へ乗る前に、めんたいパーク群馬へ寄った。明太子をあてに冷酒は最高。たらこの佃煮と合わせてお土産にした。
帰りの車内では『男はつらいよ・寅次郎と殿様』が流れ、若いころの真野響子がマドンナ役で出ていた。寅さんシリーズのストーリーはいずれも察しが付きやすいが、ついつい見入ってしまう魅力は枯れることがない。