夢の世界

1akb486月7日(土)。甲州街道を挟んで、職場の眼前にそびえる“味の素スタジアム”は、朝から異様な活況に包まれていた。
そう、日本アイドル界の歴史を事ある毎に塗り替え続けている、AKB48グループの「第6回AKB48選抜総選挙」の開票イベントが行われるのだ。
これまでに同スタジアムでは、Jリーグはもちろんのこと、SMAP、L’Arc〜en〜Ciel、A-Nation等々、BIGアーティストのコンサートが数多く開催され、静かな町“飛田給”へは、その度に山のような人波が押し寄せてくるのだが、今回の総選挙ではこれまでのどれとも違う“人波の雰囲気”を感じ取れ、なんだか無性に興味が沸いてきた。

傘をさしていてもびしょびしょになってしまう程の土砂降りが朝から続いていた。
その中、カッパを羽織った大勢の人達が、飛田給の駅前から味の素スタジアムを目指して延々と歩き続ける光景は、あたかも力の渦のようで、気が付けばそれに見入っている自分を発見してしまう。

翌日6月8日(日)。人波は更に大きいものとなった。
「大島優子 卒業コンサート」
現在のAKB48をここまで牽引してきた事実上のリーダー“大島優子・最後の花舞台”とあっては、ファンのボルテージは上がらないわけがない。
昼時にローソンストア100へ買い物に出掛けると、案の定、レジ前は長蛇の列。オリジナルのコスチュームを羽織った熱狂的ファンの姿もちらほらと目に付く。

ー 実在神 女神 渡辺麻友 ☆

バッチリとシャツの背中に刺繍してある。
これは凄い!

買い物の後はファン達の流れに入り交じって、味の素スタジアム前の歩道橋まで歩いてみた。
ごく短い距離ではあったが、コンサートへの期待感が広がる大勢の後ろ姿を見ていると、その勢いに呑まれて自分も一緒に会場へ入り込んでしまうような妄想が膨らむのだ。

「チケットありますよ~」
「持ってますか~」

ダフ屋だ。
彼らの出現でイベントの規模が分かろうというもの。

階段の手前で流れから離れ、静かな路地に入ると同時に妄想が消え去っていった。

AKB48に限らずライブイベントは、日常から非現実へと誘う魔法のエネルギーを持ち合わせ、その力の恩恵を受けて、我々は夢の世界で遊ぶことが叶うのだ。

7万人が集う夢の世界。これはただごとではない。

大岳山~鋸尾根

5月29日(木)。
電車を待つ鳩ノ巣のベンチで地図を広げる。
私はいつも山地図の使うエリアだけをスキャンして持ち歩くようにしているが、こうすると拡大印刷ができるので老眼もちには使い勝手がいい。更には元の地図もきれいに保てるので一石二鳥なのだ。
今回は久々に御岳山ケーブルカーを使って、大岳山~鋸山~JR奥多摩駅というルートを選んでみた。ゆっくり歩けばトータルで6時間を越えるコースであり、テン泊前の調整にはお誂え向きといえる。

昨今の登山ブームにはめざましいものがあるが、JR御嶽の駅前から出るケーブルカー行きのバスでも、朝の通勤ラッシュと見間違うばかりの活況ぶりを見た。ざっと数えても60名以上は乗り込んでいるようだし、殆ど全員が大きなリュックを背負っているのだから、その過密さは通勤ラッシュ以上かもしれない。それと注目すべきは女性ハイカーが多かったこと。今回は若い子達も4~5人見かけ、過密な車中に花を添えていた。
“ケーブルカー下”に到着すると、そこから更に麓の滝本駅まで200メートルほどの軽い登りを歩く。
改札ではマイカーで訪れた人達と合流し、長蛇の列となった。

滝本駅から終点の御嶽山駅まで、標高差423m、平均斜度22度26分を6分間で走行するケーブルカーはプチスリリングも味わえる。車窓から見える麓の景色を見つめていると、

ー もしもワイヤーが切れたら、完全に終りだな、、、

垂直に近い傾斜に身を置けば、恐らく誰でも余計な想像が沸き上がってくるものだ。

ケーブルカーからはき出されたハイカー達は、それぞれの行き先へと散っていった。

意外だったのは、私と同じ方向へ足を向ける人が極めて少ないことだ。大岳山、日の出山、ロックガーデン等々、御岳山界隈の人気スポットへは先ず御嶽神社へ進まなければならない。多くの人達は、近場の富士峰公園か大塚山方面へ向かったのだろうか。

御嶽神社のきつい石段を登り、途中左へ折れて大岳山を目指した。
大岳山は標高1,266.5mとそれほど高い山とは言えないが、多様な登山ルートを備えた奥多摩の名峰とも呼ばれ、初心者からベテランまでが楽しめる山として著名なのだ。

この日は何故か気味が悪いほど体調が良く、連続する登り坂に差し掛かっても歩行速度が殆ど落ちず、休憩も5分ほど取れば力が戻ってくるという素晴らしいものだった。
確かな要因は分からないが、昨年の夏から使い出したトレポが予想以上の効果を出しているのかもしれない。ステップにはあまり役立たないが、だらだらとした長い坂には滅法威力を発揮し、明らかに脚力をフォローしていることが体感できる。
大岳神社前で一服した後も、余力を感じつつ頂上直下の急坂を登り切った。

「急に雲が出てきたな」
「午後には雨が降るってさ」

隣で寛いでいる男性3人組の会話である。
そうなのだ。尾根を歩いていた時は木々の間から青空も見ることができたが、今、頂上から南西の方角を望むと、大きな黒い雲がせり出してきていて、日差しを遮り、吹く風も幾分強くなってきた。
雨が降ってくるのも時間の問題だろう。
ウェザーニュースの奥多摩エリアは、15:00からが雨と出ていたから、雲の進行が早まっているのだ。
その時、遠雷が耳に入った。

― のんびりはできないな。

この先、鋸山を経て奥多摩駅までは相当な距離を残す。膝にダメージの掛かる下りがメインになるので、大凡4時間は見なければならない。
ここでゆっくりと昼食を取ろうと思ったが、土砂降りになればこの先タフなコースになることは間違いないので、おにぎりをひとつ口に入れると、早々に出発することにした。
ところがこんな状況の中、後から上がってきた30代後半と思しき単独女性は、ストーブやコッヘル、そして食材を広げ、これから腰の据わったランチに取り掛かろうとしている。隣の3人組も撤収の準備をしているのに、何とも微妙な選択である。その風貌、装備からはベテランとも見受けられるが、、、

大岳山は頂上部が尖っているので、下り始めは急坂の連続になる。決して難しくはないが、これが雨でぬかるんでいたら滑りやすく注意が必要だ。
一気に高度を下げて尾根道に入った。

本来はとても快適な道だが、ここにきてついに雨が降り始め、気温も更に落ちてきた。
樹林帯なので直接雨に打たれることはないが、時間を追うごとにレインを出そうかと思案するほど降りは強くなってきた。
辺りはますます暗くなり、足元を注意しながらの山歩きがひたすら続いた。

とその時、
突如背後で物音が。

― うぉ、く、熊か?!

「すんませ~ん、お先です」

何とトレランである。しかも間を入れて二人続いた。
そう言えば、ここから御前山へ続く尾根筋はトレラン大会のお馴染みコースなのだ。雨風の音に遮られて、背後に迫るまで全く気が付かなかったが、それにしても凄い走りだ。幾ら背負う荷物が小さいからといって、あのスピードでアップダウンを駆け抜けるのは容易なことではない。
鋸山山頂へ到着、ここで長めの休憩を取った。

鋸尾根を半分ほど下ってきた辺りで天候は急に回復へと転じ始めた。
どんより空に青空も見え始め、周囲もぱっと明るくなり気温も急上昇。ザックからタオルを出して首へ巻き、今度は汗を拭き拭きの下山となる。

今回は不思議に膝の調子が良く、終始気持ちのいい山歩きができてほっとしている。
一生続くであろう腸脛靱帯炎との付き合い方に、新たな対策ノウハウを手に入れられ、またひとつ自信が湧いてきた思いだ。

次回はテン泊で、星空を肴に澤ノ井をぐびぐびとやろうかな。

体力維持

golf-hiji日頃のトレーニングは軽いダンベル運動しか行っていないのに、2ヶ月ほど前から左肘が痛むようになり、一向に治る気配がない。
まだ医者に診せていないので何とも言えないが、恐らくゴルフ肘に近い炎症が起きているものと思われる。
仕事や日常生活に影響するほどの痛みではないので、何となくそのままにしているが、やはり一度は医者に相談をした方が良さそうだ。
しかし、大きな負荷を掛けていたなら頷けもするが、たかが3㎏のダンベル運動ごときでダメージが蓄積するとは本当に情けない。やはり老化は着実に進み、関節や筋が弱くなってきているのだろう。
しかしトレーニングは絶対に欠かすことのできない健康管理の重要項目でもある。
何故なら、筋力の退化は加齢に乗じて加速するからだ。
昨年の秋頃、腰痛の為に約一ヶ月間トレーニングを休んだことがあるが、想像以上に筋力が低下してしまい、元の状態に戻すのに同じく1ヶ月を要した。
裏返せば、永続する日々のトレーニングを履行してこそ、自由に山歩きや撮影行へ出掛けられるというもの。
体力維持は何をするにも基本となるので、間違えの無いよう計画的に行っていきたい。

写真好きな中年男の独り言