鎌倉・歩き回り

6月27日(金)。紫陽花がピークを迎える鎌倉を歩いてきた。
先回はまさかの鉄道トラブルに阻まれ、果たせなかった鎌倉スナップ。そのモヤモヤを払拭する絶好の撮影日和に助けられ、4時間4ヵ所を一気に撮りきってみた。
しかも今回は、新たに入手したNikon1 V2のテストも兼ねていたので、その使い勝手も含めてレポートしてみたい。

鎌倉駅で降りると、初乗車となる江ノ電(江ノ島電鉄)に乗り換える。
ローカルな香りのする駅舎とホームは、そこにいるだけで旅ムード満点、電車に乗り込み走り出せば、子供の頃と同様、車窓を流れる景色に釘付けである。

鎌倉から四つ目の駅“極楽寺”で下車、“アジサイ坂から見下ろす由比ヶ浜”で有名な成就院へと向かった。
寺院へ通ずる石段が見え始めると、バッグからV2を取り出し、いつでもシャッターを切れるよう準備した。
その時、並んで歩いている年輩男性が、度々V2へ目をやっていることに気が付く。見返せば彼、キヤノンの1DナンチャラにLレンズを装着しているではないか。雰囲気から察するところ、結構な写真好きなのだろう。そんな趣味人だからこそ、軽量コンパクトな今時のミラーレスには自然と目が行ってしまうのだ。

石段を登り詰めると海が見えた。
なるほど、海を見下ろす坂の両脇にはこれでもかと紫陽花が咲き誇っている。これはなかなかゴージャスなロケーションだ。ややピークを過ぎた花も見られるが、まだまだ全体の色彩は華やか真っ盛りで、観光メッカに成りうることは十分頷ける。

早速、海も含めるベストアングルを探そうと色々試してみた。ところが単純にレンズを向けても、間違いなくファインダーに人が入り込んでしまうので、ここはちょっとひと工夫講じてみた。
足元を固定してからフェンスに体を預け、上体をできるだけ外側に反らせて人波を回避したのだ。
この作戦は意外とうまくいき、何とか思い通りの一枚をゲットできたのである。

しかしこの撮影でV2の欠点も見えてきた。
恐らくバッファが足りないのだろう。撮影画像の読み込みに結構な時間を要するのだ。画質を補う為に全てRAWで撮っているので、カメラからすれば重たくて厳しい作業状況に違いないが、リズムに乗って撮り進めるシーンなどでは、かなりなストレスを感じてしまうレベルであり、この点は是非改善を期待したい。

アジサイ坂を下り、陽光が燦々と降りそそぐ由比ヶ浜へと出てみた。
何度見ても浜から広がる海原はすばらしい。これだけで海の近くに住む人達が羨ましく思えてくる。サーフィンに興じる人、のんびりと日光浴をする人、公園でランチを楽しんでいる人、周囲の光景は正に平和の縮図なのだ。

若干の薄雲は出ていたものの、海特有の強い紫外線の一斉攻撃はきつい。
急に喉が渇いてきた。
地図を広げて現在位置を確認すると、次の目的地“長谷寺”は目と鼻の先だ。
海岸通りを横断して、江ノ電の“長谷”へ向かった。

斜面に咲き誇る2500株もの紫陽花は、掛け値無しに見事であり、北鎌倉の名月院と並んで鎌倉・紫陽花人気スポットであることは十分に理解できる。
但、散策路には入場制限を設けており、整理券を提示しないと前へ進めないのが難点。私も20分ほど待たされたが、その間、暑いのなんのって、半端じゃない。直射日光と人いきれで流れる汗が止まらない。
長谷寺では落ち着いてアングルを模索することなど到底無理だったので、大方のポイントだけ押さえておき、早々に次の目的地へ向かうことにした。

ー 腹へった~

12時はとうに回っているが、昼食はまだである。
本日最後の撮影地は、竹林で有名な報国寺なので、ここからだと江ノ電で一旦鎌倉まで戻り、そこから朝比奈方面行のバスに乗らなければならない。
時間は押している。結論、メシなど食っている暇はないのだ。
食事のことは全て撮り終えたら考えることにした。

ー 失敗した、あと一時間早く家を出ればよかった…

「すみません、報国寺へ行きたいんですけど」
「ちょうどいい、今あそこに停車しているバスです」

休憩中の運転手と思しき若い男性が、降車のバス停まで丁寧に教えてくれた。
旅先での親切な対応ほどありがたいものはない。
感謝感謝。

すぐに乗り込むと車内は意外や空席が目立つ。今は紫陽花のシーズンだから、竹林は穴場かもしれない。適度な冷房が汗を引いてくれ、ほんと天国のようだ。
それでも出発までの5分間で乗客はどんどん増えていき、結局は立つ人まで含めて満車となった。
鎌倉、恐るべし!

ものの7~8分で浄明寺バス停へ到着。報国寺はここから歩いて3分ほどだ。
それまでの寺院にあった喧騒はまるでなく、山門を潜ると静けさとひんやりとした空気に包まれほっとする。
拝観料を払って裏手に回ると、そこは更に冷え冷えとした空気感が支配する、見事な竹林が広がっていたのだ。

「なんか急に写真撮りたくなっちゃった」

前を歩いていた二人連れの若い女性が、徐にスマートフォンを取りだしパチリとやった。
この気持ちはよく分かる。この竹林はそんな気分にさせる圧倒的な荘厳さを放っているのだ。
小道を歩き進むと様々な角度から日光が入り込み、辺りはそれに合わせて影が微妙に変化し興味は尽きない。
そして足利氏一族の墓である“やぐら”は、古都鎌倉の歴史を彷彿するに相応しい佇まいをみせ、紫陽花越しにレンズを向ければ、時間を忘れること屡々なのだ。

ここ報国寺ではV2の機能についても色々と試してみた。
竹林はコントラストが強く、良く使っている中央部重点測光でのAEロックだけでは、露出決定に難しい場面が多く、それではと、ライブビューでの露出補正機能を使ってみることにした。
モニターで見ながらの補正は直感的で使い易く、とても便利な機能であるが、帰宅してPCに取り込み確認すると、全体的にややアンダーに出てしまう傾向があった。但、全てRAWで記録しているので十二分な補正範囲にあり、今後これは面白い武器になるのではと、ついついほくそ笑んでしまう。
しかしEVFを使いながらのダイヤル操作は、相当な慣れが必要で、何度もファインダーから目を離さなければならないのには閉口した。

鎌倉は訪れる度に新発見があり、興味は尽きない。
湘南新宿ラインに江ノ電をプラスさせ、行動範囲をもっと広げてみるつもりだ。
当分のお供はV2で決まり!

安心して眠れるかな?!

bed25年もの長い間愛用し続けてきたベッドマットがついに壊れてしまった。
壊れるまで使うというのも問題といえば問題だが、延時間で7年半も大切な睡眠を支えてくれた優しき相棒に対して、痛みが進んでいることはある程度分かってはいたものの、心情的に即廃棄とはいかなかったのだ。
そう、あの寝床感を二度と味わえないと思うと、もの悲しさも沸いてきたし…

 

「やだパパ、横が破れてスポンジが出てきちゃったわ」
「ほんとだ、ゴホッ」

ー これは酷い。

粗大ゴミ回収日の前日、女房に助っ人を頼み、セミダブルの大きなマットを二人掛かりで二階の寝室から一階まで下ろしたのだが、動かす度に破れは広がり、その度に埃や細かくなったスポンジが噴出、それはもう凄まじい断末魔を見せたのだ。
マットカバーは10年ほど前に交換したきり一度も外したことがなかったので、ここまで凄まじい状態になっていたとはつゆ知らず。
うりゃ==!と動かせば、スポンジがちぎれて横からスプリングも見えてきた。

「これで俺の鼻炎も治りそうだな」
「そうね」

この状態では寝返りを打つ度に微量な埃が立っていたに違いない。埃といってもその内容は、カビ、雑菌、ダニ、フケ、垢等々のおぞましい物質であり、それを毎夜吸い続けてきた事実が何とも怖い。況して“吸い込み累積量”を考えたらまじめに鳥肌が立ってくる。
特にダニはアレルギー性鼻炎の大敵であり、日頃よりの対策が必要なのは重々理解しているつもりだが、これだけ寝具が古くなると、どうせ何をやっても駄目だろうと、手を拱いていたのが現況だ。しかしこの荒れ果てたベッドマットを目の当たりにして、やるべきことの重要性をやっと理解できたところだ。

「新しいマットは買わないで、絢子のベッドを使ったら」
「シングルか、ちょっと狭そうだな…」

娘が使っていたベッドを寝室に持ち込むと、シングルというスリムさを利用して、掃除機を掛けやすいように両側へゆとりのスペースを持たせて配置した。
マットも軽いので、定期的に取りだして天日干しにすることも容易そうだ。

先ずは第一歩、ですかな。

俺の休日を返せぇー

shinjuku-shonan全く冗談じゃない。
せっかくの休日が台無しだ。

6月13日(金)。
“梅雨・紫陽花・鎌倉”のフレーズに誘発されると、使い慣れたNikonD100+SIGMA17-70のコンビを肩に掛け、意気揚々と湘南新宿ラインに乗り込んだ。

ところがである。
ここまでは良かったのだが、その先に待ち構えていた“まさかの展開”に、楽しみにしていた撮影行はいとも簡単におじゃんとなってしまったのだ。

目的の駅“北鎌倉”へあと3駅と迫った東戸塚で停車の後、待てど暮らせど電車は動かない。
妙だなと感じていたら、

「この先の大船駅で信号故障の為、暫く停車いたします」

こんなアナウンスが流れた。
信号故障ならそのうち動き出すだろうと、これをタイミングに持参した文庫本を取りだした。
東野圭吾の【探偵ガリレオ】だ。短編だからこんな場合にぴったりである。
ちらっと車窓へ目をやると、雲ひとつない青空が眩しくも恨めしかった。

15分が経過。

「どうなってんのかしらね」
「どのくらいで動くのかはっきりして欲しいわよ」

車内を見回すと、周りには年輩ご婦人達の観光グループがざっと3組ほどいた。
耳に入ってくる会話によると、やはり目指すは鎌倉のようだ。お昼時間近であり、そろそろ空腹も感じる頃、イライラしてもおかしくはない。

30分経過。

撮影時間が刻々と蝕まれていく焦りが、色々な憶測を生んだ。

「今駅員の人に聞いてきたのよ」
「あら、それで」
「詳しい情報が入ってこないから、待っている方がいいらしいわ」

わけの分からない会話だ。

「駅員に怒鳴りつけている人がいたのよ」
「嫌ね~」
「怒ったってしょうがないのにね」

45分が経過する頃になると、観光客を除き、改札へ向かうか、上りに乗り換える人達が目立ち始める。仕事中であれば、このまま黙って待機などはしていられない。
私もこの頃になると撮影意欲がだいぶ減退してしまい、これ以上無駄な時間の増えることに苛立ちを覚え始めてきた。

1時間が経過しようとした時、再びアナウンスが流れる。

「大変ご迷惑をおかけしています。未だに復旧の見通しが付かず、暫く時間が掛かる模様です」

「なにそれ」
「どうするのよ」

車内はざわついた。
その時、ちょうどホームへ入ってきた横須賀線の上りに駆け込む人が数名出た。
しかし優柔不断な私は、この期に及んで更に15分待ってみることにした。

ー もし動いたら、まだ時間的に回れそうだ。

そうはならないことを感じつつも、何気に立ち上がることを拒んだ。
しかし状況は更に悪化していき、何と上り電車までも大幅にダイヤが狂い始めたのだ。
向かいの上り線ホームを見れば、知らぬ間にずいぶんと人が並んでいて、電光時刻表は空しくも全く用を足さない状況となっていた。

ー くそっ、さっきの電車に乗っておけば良かった。

いまさら後悔しても時既に遅し。
暗澹とした気持ちを誰かに聞いて欲しくなり、これまでの顛末をうちの女房へLINEで伝えてみると、すぐに返信が来た。

「タクシーで戸塚まで行って、そこから東海道線で戻ってくれば」

なるほど、その手があったか。
横須賀線と東海道線が乗り入れている戸塚は、隣駅だから距離もそれほどないはずだ。
最悪歩いても行けない距離ではない。

ー 早いとこ脱出するか。

最後の15分間を待つことなく、それではと、長らく座り込んだシートから立ち上がり、足早に改札へと向かう。
案の定、改札周辺は多くの利用客でごった返していた。

「どうなってんだ」
「振替え輸送はどこよ」
「払い戻しだ」

熱くなっている客、バス乗り場やタクシー乗り場へ急行する客、憮然とした表情で払い戻しの列に並ぶ客。既にいつもの駅の光景はない。

そして改札を出ようとしたその時だ、

「一本だけですが、東海道線が臨時で乗り入れることになりました」

メガホン片手に駅員が叫んでいる。

「あと10分少々で到着します」

ー おっ、これはラッキー!

再度ホームへ戻ると、少しでも空いていればと、先頭車両が入る停車位置に並んだ。
これで一安心と回りに目をやれば、何と乗ってきた湘南新宿ラインの車両にまだ座っている人達がいるではないか。
再運転の可能性はかなり低いとは言え、その気持ちは分からないでもないが…
よく見るとその中には遠く関西から訪れている4~5名のご婦人グループがいた。長らく車内で待っている時、話し声の大きい彼女達の会話は、嫌でも耳に飛び込んできたのだ。
彼女達にとってこのアクシデントは憤慨以外の何ものでもなく、予定している観光スケジュールも見直さなければならないだろう。
交通トラブルは様々な人達に様々な影響を及ぼすものだ。

臨時便は無事に発車。その後二度ほど時間調整という理由で5~10分ほどの停車があったが、ほぼ予定通りに新宿へと到着した。
中央線に乗り換えた後、アンドロイドで横須賀線の運行状況を検索すると、未だに運転再開はしておらず、それどころか翌日のダイヤにも影響を及ぼす最悪な状況になっていたのだ。

三鷹駅に到着。駅事務所へ行って今回の顛末を述べた後、一度も下車していないパスモの処理をお願いすると、一言の「すみません」もなく、

「そちらからどうぞ」

と、出口へ誘導された。
あまり言いたくはないが、これがJRのレベルであり、そのレベルが“しょっちゅう止まるJR”という、誠に情けないキャッチフレーズを生み出しているのだ。

どうでもいいけど、
俺の休日を返せぇー