Bluetooth Receiver

 早いもので、悠々自適な生活も四ヶ月目を迎えた。
再三だが、時間を自由に使える快適さは一度味わったら抜け出せない。何をやるにも時間的制約がほとんどないので、やりたいことをやりたいだけ行える自由はこの上ないのだ。この環境になってから、読書量は飛躍的に増大した。
 朝は六時に起床。リチャードの散歩から一日が始まる。朝食後は新聞に目を通し、二杯目のコーヒーを入れたらノートPCを開いて、西久保日記関連の執筆を昼食の準備にかかるまで続ける。今に始まったことではないが、朝食と昼食はすべて自分で作る。趣味とまではいかないが、クッキングは大好きで、美味しくできあがった時はすなおに嬉しい。
 午後は読書が中心。買い物などはその合間に済ますようにしている。午後四時からはリチャードの二度目の散歩だ。続いて5.2kmのジョグ&ウォーク。雨天以外欠かしとことはなく、完全なRoutineとなっている。真冬なのに毎度いい汗をかくことができ、心身ともに最良のリフレッシュを与えてくれる。そして入浴。さっぱりしたら日々最大の楽しみである晩酌を一時間ほど続け、自然な眠気が出てくれば寝室へと向かう。
 と、まあ、こんな毎日であるが、日々の間に、山歩き、スナップ写真、小旅行等々を挟み、自分なりに彩りを加味しているつもりだ。

 話は飛ぶ。
 つい最近、Bluetooth Receiverを手に入れた。スマホにインストールしてある“myTuner Radio”というアプリを居間のオーディオで聴きたかったからだ。このアプリは珍しいラジオ局や特定音楽を無料で流してくれるので、執筆やデジタル絵画を行っている時などには、BGMとして重宝する。面白いチャンネルでは“FMいしがき”とか、フラで使えそうなハワイアンミュージックを延々と流す“Hawaiian Music Live”などがある。特にFMいしがきはローカル色が濃く、ほぼ毎日、地元で行われる葬儀のアナウンスがあり、これには驚いた。いずれにしても、南国石垣の空気が流れ込んでくるようなBGMってのは、なんとも心地がいいものだ。
 スマホの陳腐な音からオーディオアンプを通した重厚な音にグレードアップすると、これまで以上に筆の進み具合がよくなり、イメージの世界へも没入しやすくなったと感じている。

Photoshopでお絵かき

  小川のある公園の紅葉

 朝から雨降りでしかも寒い。
 これと言って出かける用事もなく、リチャードは雨が嫌いだから、散歩もなし。それなら歌とギターの練習をしようと思ったが、今日は丸一日女房が家にいるらしく諦めた。
 てなことで、しばらく放っておいた描画の続きをすることにした。
 絵は習ったことも勉強したこともないが、子供のころから好きだった。たまだが無性に描きたくなり、一旦描き始めると時間を忘れるほど没頭する。
 描き方はデジタル。日頃から写真編集で使っている、アドビ社のPhotoshopというソフトを立ち上げ、ペンタブレットを筆替わりにするのだ。手は汚れないし、失敗してもやり直しがきく。それに費用が一銭もかからないところがいい。

東大楼・女房とランチ

 地元ってのは、意外や知ってるようで、実は知らないことの方が多い。
「いつも行ってる眼科の前に、行列ができるラーメン屋があるのよ」
「その眼科って、おれも行ってるとこ?」
「そうよ。いつも眼科健診受けてるじゃない」
 てな感じで、時々女房が聞いてくるが、いくら頭をひねっても分からないことがほとんど。
「えっ、あったかな……」
「行ってみる?」

 女房とはちょくちょくランチへ行く。どうせなら地元の店がいいと、互いに情報を出し合っているが、情報提供量は圧倒的に女房の方が上だ。
 それでもたまには、
「スイングホールの真ん前にある中華屋、知ってる?」
「ロータリーのとこでしょ、なんかあったね」
「東大楼っていうんだけど、評判いいみたいよ」

 距離にもよるが、店へ向かう際はたいがい徒歩だ。夫婦共々ウォーキングを日課にしているから、それほど苦にはならないが、まあ、往復5Kmをひとつの目安にしている。

「すみません、ただいま満席なので少々お待ちください」
 フロアで孤軍奮闘しているのは、小柄な若い娘さんだ。恐らくアルバイトだろう。
 待つこと十分。一番奥のテーブルへ案内されると、私は回鍋肉定食、女房は炒飯、それと餃子を一皿注文した。厨房ではオーナーと思しき年配ご夫婦が忙しく動き回っている。
 料理が運ばれてくると、先ずはその香りにニンマリ。甜面醤のコクのある甘さが想像できてしまう。女房がいきなり餃子を口に放り込んだので、私も箸をのばす。野菜のうま味が広がる、餃子の王道的味わいだ。回鍋肉もキャベツの火のとおりがちょうどよく、御飯が進んだ。
「おいしかった。つぎは天津飯定食かな」
「おれは麺だな」
 またひとついい店を見つけたようだ。
「ごちそうさん」
「ありがとうございました、またよろしくお願いします!」

東大楼
東京都武蔵野市境2-2-3

写真好きな中年男の独り言