豚みそ丼・ちんばた

 秩父の豚みそ丼がおいしいと、かなり前から人伝に聞いていたが、ちょっと食べに行こうかという気楽な距離ではない。ただ、一度は味わないと収まりがつかないので、前もって日を決め出かけることにした。

 十月十四日(金)。助手席に女房を乗せ出発。大泉から関越道に入り、先ずは花園ICを目指した。
 渋滞はなくいたってスムーズなクルージングだったが、大泉から花園までは50kmの距離があり、走ってみるとやはり遠い。更に一般道へ降りてからもカーナビはなかなか目的地を表示しないのだ。
「やだ、ここから有料よ。まだまだ先かな」
「あ~このトンネル長い。どんどん山奥へ行っちゃう」
 有料道路を降りてからも延々とナビの指示が続き、一体あとどれくらい走ればいいのか不安になってくる。関越道を下りたころから降り出した雨が徐々に強くなってきた。
 やっと到着まで600mと表示されたが、国道を左折すると、今度はくねくねの急坂が待っていた。
「また峠越えかよ」
 辟易してつぶやくと、
「あそこ! ほら、店の名前出てる」
 坂を上り切った急カーブの右側にロッジ風の店があり、なるほど、看板に“ちんばた”と書いてある。ウィンカーを出し駐車場へ入り込むと、ラッキーにも一台分の空きがあった。到着時刻十二時十分。
 店内に入るとほぼ満席と思しき人いきれ。
「どうぞこちらへ」
 入口からは見えなかったが、窓際の一番奥の席が空いていたようで案内された。座ってみると街並みが見渡せる特等席だ。あらかじめ決めていた豚みそ丼(並盛)を二つ注文した。
 間もなくしてサラダが運ばれてきて、その後十分ほどすると、小さな盆にのせられた豚みそ丼とみそ汁、そしてしゃくし菜の漬物が目の前に置かれた。いい香りが鼻をくすぐる。
「すっごく柔らかい!」
 女房の一声である。なるほど……
 肉は柔らかく、みそダレがなんともいい風味を出している。箸がどんどんと進み、あっという間の完食。
 ごちそうさんでした。

 山を一つ越えた小鹿野の町に、“バイク弁当の大滝食堂”なるものがあり、そのバイク弁当の器がガソリンタンクを模したユニークなものということで、晩酌の肴にでも買って帰ろうかと向かってみた。
 大滝食堂のある<小鹿野バイクの森>は、その名から想像するように、バイク関係のイベントを多く開催するところなのだ。ずいぶん昔の話だが、ここで大々的に『DUCATIラリー』なるDUCATIオーナーイベントを開催したことがある。DUCATIジャパンが主催する、いわば正規のイベントで、この時は数百人の参加者があり大盛況だったことを懐かしく思い出す。
「ねえ、やってないみたいよ」
 小雨そぼ降る駐車場にいるのは我々だけ。車から降りるとその静けさが怖いほど。車から降りて入口に近づくと、やはり残念なことに、“本日定休”との紙が貼ってあった。
「だめだこりゃ。ちょびっと調べときゃよかったな」
 しょうがないので再び車に乗りこむと、バイク二台が坂を上がってきた。ふふ、彼らも定休日は確認してなさそうである。

 たまにはこんなドライブもいい。女房と二人で出かけるのは殆ど近所での買い物程度なので、今回はなんだか新鮮な気分に浸れた。道の駅でお土産でも買っていこうと立ち寄ってみれば、地元特産のキノコだとかニンニクだとか、様々物が並べられていて、眺めるだけでも楽しいもの。

彼岸花

 自宅の門の前、歩道の生け垣の中から顔を出している彼岸花。どこから来たのか、はたまた誰が植えたのやら。発見したのは大凡二十年前。その後、毎年この時期になるとしっかりと咲き出し、その生命力は健気に思え、また神秘的だ。
 朝の散歩の際に暫し眺めていると、共に亡くなった親父とおふくろが、「お彼岸の墓参りには、きれいに墓を掃除してね」なんて、ふと訴えかけてきたような気がして目を見張る。なんだかこの彼岸花が、菩提寺である大仙寺とつながっているように思えてくるから面白い。

変わらぬもの

いせや公園店

 先日、吉祥寺のいせやで、旧職場の同僚とひと時を楽しんだ。互いに歳をとったので、どうしても健康の話題が出がちだったが、今のところ二人とも大きな病とは無縁の生活にあり、こうして度々焼き鳥を頬張り、酒を酌み交わしている。
 酒はNG、好物を食するにも制限あり、足腰に問題が出てきて山歩きもままならない、そして気がついたら病院通いに毎日の服薬……
 想像するだけで気分はどん底だ。
 いせやの焼き鳥はとてもジューシーで、舌に馴染んだタレの味はこの上ない。これに冷たい生ビールがくっつけば鬼に金棒。会話が弾めばまさに至極の時である。
 地元なので、いせやは学生時代からよく利用しているが、リニューアルを経ても変わらない雰囲気がとてもGoo。旧店舗は“THE昭和”といった趣に溢れていたが、新店舗はその雰囲気を残そうとした意図が見られて拍手拍手。大昔の話だが、元々いせやは精肉店としてスタートしており、今でも本店の西側には精肉工場を有している。だから肉は新鮮で美味しく、且つ安い。大ぶりな焼き鳥を四~五本食し、生ビールをグビグビッとやって千円とは泣かせるお値段。コロナが来ようと何が来ようと、リピーターが増えていくのは頷けるところだ。