カヤシマ・酷暑はまだまだこれから

「次回はさ、カヤシマって店行ってみよう」
 元常連客のHさんとは、定期的に一献くみあう仲である。互いの住まいが中央線沿線なので、飲み屋はいつも三鷹か吉祥寺界隈になる。
 ネットで見つけたカヤシマは、人気TVドラマシリーズ【孤独のグルメ】の舞台にもなった味自慢の店。昼はランチメニューがそろった食堂、夕方からは様々なアルコールを提供する居酒屋へと変身する。
 七月二十一日(火)。約束の十八時半に到着。今回は人気店ということで予約を入れていたが、見回すと埋まっているテーブルはおおよそ半分。壁や天井には昭和を匂わせるノスタルジックなポスターがいたるところに貼られ、窓際に立てかけられたギターはGibsonのES等々と、オーナーの嗜好と年代がわかりやすく伝わってくる。

「生中と朝日の炭酸割、それと牛筋大根にフライドポテト、かな」
「あっ、鶏皮ポン酢もおねがいします」
 少年サッカーの審判をやっているHさんは、あいかわらず陽に焼けて真っ黒。ショルダーバックのストラップが当たっていたところが汗で滲んでいる。「たまらない暑さですね」とビールグラスを傾けた。
 十分ほどで料理が運ばれてきた。順番に箸をつけていくと、どれもいい味付けだ。味自慢は頷ける。隣のテーブルでは、若いカップルが孤独のグルメで一躍有名になった“ナポリタン”をうまそうに頬張っているが、手に持つのはフォークではなく箸である。

 話が弾み、気がつくとすでに四杯目の炭酸割を飲んでいた。トイレに行くにも足元が怪しい。
「そろそろおひらきにしましょうか」
 Hさんは明日も仕事だ。
 会計を済ませ歩道へ出ると、一気に汗が噴き出る。腕時計を見れば二十一時半。こんな時刻なのに恐ろしい熱波だ。猛烈な酷暑はまだまだこれからだ。


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