久々の山歩き

古里の丹三郎登山口

 やはり山の空気は旨い。実に五か月半ぶりとなる山歩きを楽しんできた。
 これほど間が開いたのは、年々酷くなる鼻の調子と、今一歩完調に届かない右膝がストップをかけていたからだ。それでも膝は毎日のジョギングでだいぶ鍛えられたようで、痛みの出方は確実に小さくなった。
 歩いてきたのは馴染みのコースで、古里にある丹三郎登山口から、大塚山、御岳集落、日の出山、吉野梅郷と周るもの。距離は15km近くあり、休憩も含めてスタートからゴールまで六時間半を要する行程だ。久々の山歩きにはちょっときつめだが、熟知したコースなので安心感がある。

大塚山へ至る尾根は新緑が眩しい

 五月二日(土)。JR青梅線古里駅前のセブンイレブンを午前八時ジャストに出発。万世橋を渡るとき、空を見上げれば雲一つない青空が広がっていた。この日を選んだのは、ウェザーニューズで降雨率「0」、快晴を確認したからだ。相変わらず吉野街道には多くのダンプカーが行きかい、咳き込むほど埃っぽい。

大塚山山頂

 登山口脇にあるトイレで用足しを済ませ、森に分け入ると、空気感がガラッと変わった。国道からまだそれほど離れてないのに、静けさに包まれる。日射がないので気温も低い。すでに汗を吸っていた下着があっという間に冷たくなる。

おにぎりを食したら、うとうとと…

 マイナーなコースはGW中でもハイカーが少なく、森を独り占めである。一時間ほどで尾根に出ると風が強い。風速は7mを越えているだろう。山道には多くの落枝が散乱し歩き辛い。と、その時、左側にザザッと大きな音がし、見れば幹が5㎝、長さ4mほどの枝が落ちてきた。この先は頭上にも注意を払う必要がありそうだ。
 大塚山に到着すると、風は大分弱まっていたので、最初の休憩を取ることにした。チョコレートパンと鮭のおにぎりを食したが、体調がいいせいか全然足りた感じがしない。しかし残りは牛肉のおにぎり一個のみ。ポカリをがぶ飲みしてごまかした。食後、ややうとうとしてくる。

御岳集落より東を望む

 御岳集落へ出ると、それまでの静けさが一変。高尾山に次ぐ人気の山域とあって、人、人、人と物凄い賑やかさ。ここも外国人観光客は多い。御岳神社と日の出山方面を分ける分岐手前の坂は、舗装路だが傾斜がきつく、これまでの疲れが足にきたのか、お喋り花盛りの若い女の子のグループに、いとも簡単に抜かれてしまう。やはり若さは強い。東京都心方面がくっきりと見渡せ、しばしカメラを構える。

道端の花

 日の出山へ向かう尾根道に入ると、再び静寂がもどってきた。ずいぶんと前から宿坊が飼っている可愛らしいヤギ。今日も元気そうでなによりだ。
 整備された山道はとても歩きやすく、適度な風が体を冷やしてくれ、なんとも気持ちがいい。後方から賑やかな喋り声が近づいてきたので振り向くと、高校生と思しき女の子三人組である。皆、似たようなキャップをかぶり、小さなリュックにスエットパンツといういで立ち。GWに仲良し同士でハイキングを楽しもうというところか。笑顔が弾けている。

宿坊のヤギ

 日の出山へ到着するころには気温もだいぶ上がってきた。案の定、山頂は人で溢れかえっている。ここは見晴らしが抜群なので、平日でもハイカーが多い。ざっと数えても三十名に迫る勢いだ。残った最後のおにぎりを食しながら、暫しの休憩にした。
 隣に座った若い男性二人組。その言葉からチャイニーズ系だと思うが、新しいGOPROやらニコンの高級ミラーレスやら、なにかといいものを持っていて、いでたちにも品がある。間違いなく富裕層のインバウンドだ。そんなことを考えながらも、「おにぎり、あと一つ多く買っときゃよかった~」と、情けない溜息が出た。
 南方面には丹沢山系が見渡せ、今年こそはは歩いてみたいと強く思った。

日の出山山頂

 急坂を下り終え、梅野木峠までの道のりは、それこそ人影は皆無。多くのハイカーは御岳のケーブルカーを利用しているので、日の出山から戻るか、もしくは人気スポット“つるつる温泉”へ寄るため南へ降りる。東へ降りる人たちは、間違いなく梅郷経由で日向和田へ向かうはずなので、距離がかなり長くなってしまい、登山好きな人たち以外はほとんど見なくなる。

愛宕尾根入口の崩落個所

 梅郷と愛宕尾根を分ける分岐まで来ると、ずいぶんと山の様相が変わっていた。愛宕尾根方面は数年前に起きた大規模な崩落で、山道は通行止めとなっていたが、その崩落周囲を広範囲に伐採したようで、山肌がよく見える。山道は跡形もなく、単なる斜面と化していた。再びここに山道を通したとしても、その頃はさすがに山歩きを卒業しているだろう。

日向和田側の御岳山登山口

 日向和田駅のホームに上がると、どっと疲れが出てきた。久しぶりだったので脚がすでに筋肉痛を起こしている。帰宅したらすぐに風呂に浸かり、さっぱりしたところでギンギンに冷やしたビールで止めを刺す。考えただけで身震いが起きる。
 暫くすると青梅行の電車が滑り込んできた。流れる車窓を見てびっくり。まるで通勤ラッシュ時のようだ。それもほとんどがハイカー。これがGWなのか。


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