
十月二十四日(金)。武蔵境の日赤病院へ行ってきた。ここは二十数年前に、右鼻腔内にできた腫瘍を摘出する手術を受けたことがある。古くから地域の中核医療機関として発展を続け、この頃では更に敷地、病棟を拡張するなど、抜きんでた勢いがある。
先ず紹介受付にて手続きを行った。ぐるり待合室を見回すと二十人前後の患者がいる。私と同じく開業医から匙を投げられた面々だ。しかも次から次へと受付に患者が現れ、世の中、病に苦しむ人たちはどれほどかと、呆気にとられる。特に車いすに乗せた老親を伴って来る方たちの疲労感滲み出る姿は、まさに数年前の自分を見ているようで、ため息が出そうになる。
「これ、新しい診察券と書類です。そこのエスカレーターで二階に上がっていただいて、消化器内科のカウンターに提出してください」
ほとんどの外来受付は二階に集中している。消化器内科、膠原病リウマチ科、呼吸器内科、呼吸器外科、循環器内科、心臓血管外科、腎臓内科、血液内科、腫瘍内科と並ぶ。広い待合室のベンチは九分ほど埋まっていて、人いきれが半端でない。きちっとマスクを装着していても不安が走る。日赤まで来て他の病気をもらったら洒落にならない。
三十分ほどで診察室前に移動、まもなくして診察室へ。
「よろしくお願いします」
担当医は三十代後半と思しき痩身の男性、ドクターYだ。
「K先生の紹介状を見ましたが、今はどんな感じですか」
朝昼晩と体温を記録した表を差し出し、現況を伝えた。
「これ、平熱ですね。あとは肝臓の状態かな。再三になりますがこれから採血をします。今回は慢性かどうかの検査も行います。少し先になりますが、十一月七日に超音波検査の予約を入れましたので、その日に総合的な判断ができると思います」
ドクターYの説明はとても分かりやすく、安心感を覚える。
それにしても笑ってしまう。自分の平熱は36.2℃と頑なに信じていたので、それより高いのは何かしらの異常があるのではと、毎度検温しながら一喜一憂していた。ところがドクターYの“これ、平熱ですね”のひとことで、途端に肩の力が抜け気分が楽になった。
“病は気から”とはよく言ったもんだ。