体調不良 その1

 九月下旬のとある日、朝から鼻水が止まらない。もともとアレルギー性鼻炎もちなので、季節の変わり目で頻発することはよくある。なんの疑いもなく鼻炎の常備薬を手に取った。ところが夕方になると怠さと悪寒が出始め、念のために熱を測ってみると37.8℃もある。十月一日~二日は楽しみにしているデニーズOB会初の一泊旅行が控えているし、なにより幹事を買って出ていたので休むことなど到底できない。すぐに床に入り回復へ万全を期した。

 翌朝も熱は下がらず、大事を取って一日安静にして過ごす。ところが昼食前に検温すると36.9℃と下降傾向を示し、気のせいかなんとなく体も軽い。これは回復へ向かっているのだと自己判断、普段の生活に戻った。ただ、朝目覚めたときから酷い腰痛が起き、家の中を歩くにも一苦労。これには参った。

 OB会の一泊旅行は実に楽しく、おかげさんで腰痛以外はなんのトラブルも起きなかった。
 旅行から戻って十月三日。相変わらず腰痛は続いていた。
「ねえパパ、前に病院でもらった湿布があるんだけど、貼る?」
 風呂上がりにこれを貼ってもらうと、冷たさがスーッと広がってとても気持ちよく、その晩はぐっすり眠れ、おまけに翌朝目が覚めると、ずいぶん痛みが引いていた。

 回復へと向かっているのだと頑なに信じていたところ、十月五日の夕方に再び怠さを覚え、検温してみると37.4℃。
「なんだかぶり返したみたい」
「早く寝れば」
 翌朝目覚めると、体が重くなんとなく熱っぽい。ちょっとは下がったが、体温は依然と36.8℃あり、微熱でもこれほど長く熱が下がらないのはこれまでに経験がない。ちなみに平熱は36.4℃ほどだ。どこか深刻な状態にあるのではと不安になり、西久保三丁目にあるK医院で診てもらうことにした。

「なんでしょうね、とにかく血液検査をしてみましょう」
 解熱剤をもらうほどの高熱でもなく、微熱の原因もわからないので、薬は処方されなかった。
 怠い体に鞭を打つだけか…
 翌日午後三時。K医院へ検査結果を問い合わせた。
「肝機能の数値が軒並み悪いんですよね」
「考えられる病気は?」
「これだけじゃなんとも、雑多なウィルスが入っちゃったのかな」
 このドクター、なんとも歯切れの悪い男だ。どのような目星をつけているのかまったく伝わってこないし、詳細に説明した症状に対して、どのように考えているのかもわからない。
「この数値、たまたま上がってしまったかもしれないんで、念のためもう一度やりましょう」
「結果が変わらなかったら?」
「まあ、とにかく採血しましょう」
 熱は下がらないし、肝臓の異常値が変わらないのは気になるところ。ここは素直に指示に従った。実はこのドクター、次回来院までに熱は下がり、怠さも解消してるだろうと安易に予測していたのだ。

 十月十五日。血液監査の結果を聞きに来院すると、
「どうです、怠さは取れましたか?」
「まったく。熱も下がりませんね」
「えっー、そーなんだ… ぼくにはわからないな」
「それより血液検査は?」
「数値は悪いままですね」
 これには落胆。となると十中八九肝臓にトラブルが発生しているということだ。
 ついに来たか、年貢の納め時。断酒である。
 果たしてアルコール抜きで私は生きていけるのか…
「紹介状を書きますので、他の病院を当たってもらえますか」
 鼻っからそのつもりだ。このドクターを相手にしてたら、肝臓うんちくの前に精神がプッツンときそうだ。
「だったら紹介先を武蔵境の日赤にしてください」
 長い戦いが始まりそうである。


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