














寒暖を繰り返しながら一歩一歩春は近づいてくる。ただ、一度でも暖かい日を味わってしまうと、心情的にはその時点で春到来。それまで培った寒さへの抵抗力はいとも簡単に消え去ってしまう。
三月八日(土)。井の頭公園の梅を撮りに出かけようと仕度を始めたが、部屋の空気がなにやら冷たく感じた。体調不良で熱があるわけではない、単純に気温が低いのだ。しようがないので、いったん押し入れにしまったヒートテックの極暖やUNIQLOの暖パンを再び引き出した。寒の戻りは気持ちへも体へもけっこうしんどいものだ。
電動アシスト自転車に乗った太ったおばさんに、すごい勢いで抜かれた。しかしこんな寒さじゃ自転車のスピードを上げる気分にはなれない。風が当たりが倍増し寒さが増すからだ。1Kmも走ってないのに、軟弱な指先が冷えて痛い。
こんな日に公園へ行くような酔狂な輩はそうはいないだろうとたかをくくっていたら、おいおい、いるいる。池のほとりに出ると、十数人の爺さん婆さんが白い息を吐きながら連なってノルディックウォーキングに励んでいる。まあ、年寄りが元気なのは何よりだ。その先の梅の木の周囲には、カメラを首から下げた人たちがこれまた十数人集っている。よく見るとこの集団はカメラサークルらしく、リーダと思しき人の話を聞いているようだ。アングルはこう、絞りはこう等々のレクチャーを受けている様子。その脇をすり抜けて、見事に開花した梅へレンズを向けた。白、赤、その背後にはサンシュユの可憐な黄色がファインダーいっぱいに広がった。一瞬だが寒さを忘れる。
十枚も撮ったころ、スロープの上方から賑やかな声が降ってきた。二十人ほどの中学生の団体である。野外授業ってやつか。
寒さは誰もが共通に感じているはずだが、やはり春が待ちきれないのだろう。