














義母の最終回となる五度目の心臓血管カテーテル治療が無事終了し、毎度のように担当医師の説明を聞きに女房と沼津までドライブした。今回の手術はかなり頑強な石に阻まれたようで、太さの異なるワイヤーを替えつつの難工事になり、終了までになんと八時間を要したとのこと。もちろん担当医はぐったりだろうが、八十過ぎの義母はよく頑張ったと思う。これでひと通り心臓まわりの血管を貫通させたことになり、今後の服薬と食事療法、そして運動等々を続けていけば、きっと以前の元気を取り戻せるだろう。義母はいまだにパートで働く、いたってタフなお祖母ちゃんなのだ。
「沼津港でいいんじゃない」
二月二十七日(木)。春到来を思わせる穏やかな日で、港の駐車場からそのまま食堂へ行くのがちょっともったいない気分。
「ランチ前に散歩しない?」
「いいよ」
相変わらずだが、港の活況ぶりはすごい。平日なのに無料駐車場に向かって車の長蛇ができている。今回はラッキーなことに、とば口の出し入れしやすい場所へ突っ込めた。
「コートいらないね」
まったくだ。薄手のシャツにカーディガンでちょうどいい。前を行く若いカップルの彼氏なんかTシャツ一枚だ。ラグビーでもやっているのか、露出した二の腕が恐ろしく太い。
食堂街は活況の後押しだろう、新しい店がやたらと目につく。大昔は漁業関係者相手の店が二~三件のみと、寂しいエリアだった。深海水族館やみなと新鮮館周辺は、まさに今の沼津港を象徴するような明るさがあり、新たな客層をけん引しているかのようだ。
ぐるり一周し、魚市場INOの二階で食することにした。早朝ならば通路からセリを見下ろすことができる。
「なんだ、ここしかやってない」
三店舗ほどテナントが並ぶが、暖簾が出ているのは“沼津魚市場食堂”のみ。
入ってみると真ん中の大きな島はすべて予約席の札が置いてある。
「いらっしゃいませ」
小柄でちゃきちゃきしたおばさんが出てきて左手の六名席に案内された。
「大きな席ですいませんね~」
小さい席よりよっぽどいいが…..
旬は外れるが女房はしらす丼、私は好物のアジフライ定食を注文。十分少々で運ばれてくると、ん? 定食にご飯がついてない。
「ご飯はセルフになってますので、あちらからどうぞ。おかわりは自由です」
なかなか荒っぽいではないか。ただ、おかわり自由ってのは、若い人にはうけそうだ。アジフライは身の厚みが今一歩だったが、うまく揚っていて美味しゅうござんした。