暑い。とにかく毎日暑い。
痛みすら感じる暴力的な直射日光は、容赦なく地上に差し込み、道を歩けばまるで熱せられたフライパンの上にいるかのようだ。そんなことでよほどの用事がない限り、昼間に外出することは少なくなった。リチャードの散歩だって朝は五時、夕方は六時過ぎでないと、犬、人、共に倒れかねない。
来る日も来る日もエアコンのきいた部屋にこもり、ひたすらMLBの観戦、読書、執筆に勤しむ毎日を送っていると、ふと生活に違和感を覚え始める。
夏であって夏ではない。そう、あまりに暑くなりすぎて情緒豊かな日本の夏が損なわれつつあるのでは……
蝉の鳴き声がしない、夕方に蜻蛉が飛ばない、夏特有の夕立が起きない、やぶ蚊が減った等々、自然の摂理にも確実に変化が起きている。これは怖いことだ。遠い未来どころか、来年の夏でさえいったいどうなるか不安だ。
と、その時、窓に何かが当たった。
「おっ、バッタだ」
こいつ頑張ってる。このクソ暑さの中、か細い体に鞭を打ち、日本の夏を守ろうとしているかのようだ。
この姿を眺めていたら、無性に切なくなった。