レインボーブリッジ

 最近やたらに山づいていて、振り返ればここ二か月、隔週で出かけていた。体調は悪くないので、今週も未踏の山へトライしようかと、晩酌の際に地図を広げると、ウィスキーを舐めながら奥多摩を中心にルートを模索した。いつものことだが、これが始まると没頭し、それに伴いアルコールの量が増えていく。いつもはハイボールなのに、なぜか今回はオンザロックだったから、気がつくと結構な酔いが回っていた。

 ―たまにはゆっくりするかな。
 翌朝、目覚まし時計を引き寄せると八時を回っていた。山へ行くときはたいがい四時から四時半に起きるので、ずいぶん寝たものだ。普段は仕事がある時でも五時半に起床するから、やや寝すぎた感じもする。不思議なもので、寝れば疲れが取れるはずなのに、寝すぎると体がだるくなる。
 この日の午前中は散髪したり、知人へのお歳暮を手配したりと、いくつかの野暮用をこなし、午後からはカメラやレンズ等々、撮影機材を念入りに磨いた。カメラ本体が四台、レンズはよく使うものでも六本あるから、結構な時間を要する。
 ひととおり作業が完了して、コーヒーを飲みはじめると、無性にシャッターを押したくなった。これはよくあることで、そもそも写真を撮りたい欲求が膨らんでくると、機材の手入れをしたくなるのだ。

 ―これからだと、夜景か……
 そこでひらめいたのが“芝浦”。もう十六年前になるが、ニコンD100を片手に田町の東口からレインボーブリッジのたもとを通って浜松町まで、のんびりと夕刻のスナップを楽しんだことを思い出したのだ。
 ふと腕時計を見ると14時半。自宅からだと田町までは一時間を要する。冬至も近いこの頃では、日が落ちるのが早い。十六時を過ぎればとばりも落ち始める。

 ―いくか!
 磨き終えたばかりのα6000と予備バッテリー、そして小型三脚のS100をザックに入れ、家を飛び出した。

 田町までは、三鷹から東京行の中央線快速を利用し、神田乗り換えが一番早い。
 田町駅東口からは“なぎさ通り”をひたすら海へ向かって歩く。運河を三つ越え、国道一号を横断すればレインボーブリッジの芝浦側は目の前だ。
 それにしても気が焦る。暗くなるのがやけに早いのだ。のんびり歩いて撮影ポイントを探すなんてことは完全に無理なので、今回はレインボーブリッジに絞ることにし、とにかく南側遊歩道へ上がってみた。

 エレベーターから降りるとお馴染みの夜景が広がる。何度眺めても素晴らしいのひとこと。山で見る大自然の景観も感動するが、この人工光に彩られるビル群の眺めも心を揺さぶられる。北側遊歩道から見るビル群と東京タワーもいいが、私は夕日をバックにした品川ふ頭とお台場の眺めが好きだ。

 芝浦、台場、両アンカレイジで撮影を終え、最後に芝浦南ふ頭公園でレインボーブリッジそのものを狙ってみようと、フェンスまで歩を進め、S100を取り出した。このS100という小型三脚は、重量が1Kgを切り、折りたためば全長30㎝と群を行く携帯性を持つが、センターポールも含め、すべて伸ばし切っても1mと、使えるシーンは限られてくる。当然、目の前にあるフェンスより低いので、広角でこれぞと思うアングルで狙えば、手前にフェンスが写りこんでしまう。ベイエリアの運河沿いはどこへ行ってもフェンスがあるから、どうしても三脚を使わなければならない場合は、大型のベルボンを担いでくるしかないようだ。


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