25年もの長い間愛用し続けてきたベッドマットがついに壊れてしまった。
壊れるまで使うというのも問題といえば問題だが、延時間で7年半も大切な睡眠を支えてくれた優しき相棒に対して、痛みが進んでいることはある程度分かってはいたものの、心情的に即廃棄とはいかなかったのだ。
そう、あの寝床感を二度と味わえないと思うと、もの悲しさも沸いてきたし…
「やだパパ、横が破れてスポンジが出てきちゃったわ」
「ほんとだ、ゴホッ」
ー これは酷い。
粗大ゴミ回収日の前日、女房に助っ人を頼み、セミダブルの大きなマットを二人掛かりで二階の寝室から一階まで下ろしたのだが、動かす度に破れは広がり、その度に埃や細かくなったスポンジが噴出、それはもう凄まじい断末魔を見せたのだ。
マットカバーは10年ほど前に交換したきり一度も外したことがなかったので、ここまで凄まじい状態になっていたとはつゆ知らず。
うりゃ==!と動かせば、スポンジがちぎれて横からスプリングも見えてきた。
「これで俺の鼻炎も治りそうだな」
「そうね」
この状態では寝返りを打つ度に微量な埃が立っていたに違いない。埃といってもその内容は、カビ、雑菌、ダニ、フケ、垢等々のおぞましい物質であり、それを毎夜吸い続けてきた事実が何とも怖い。況して“吸い込み累積量”を考えたらまじめに鳥肌が立ってくる。
特にダニはアレルギー性鼻炎の大敵であり、日頃よりの対策が必要なのは重々理解しているつもりだが、これだけ寝具が古くなると、どうせ何をやっても駄目だろうと、手を拱いていたのが現況だ。しかしこの荒れ果てたベッドマットを目の当たりにして、やるべきことの重要性をやっと理解できたところだ。
「新しいマットは買わないで、絢子のベッドを使ったら」
「シングルか、ちょっと狭そうだな…」
娘が使っていたベッドを寝室に持ち込むと、シングルというスリムさを利用して、掃除機を掛けやすいように両側へゆとりのスペースを持たせて配置した。
マットも軽いので、定期的に取りだして天日干しにすることも容易そうだ。
先ずは第一歩、ですかな。