コロナ禍と井の頭公園

SIGMAの<24-105mm F4 DG OS HSM>は、ずばり言ってヘビー級。
それほど広くもない井の頭公園を歩いて一周すれば、装着したD600のストラップが肩に食い込み、お荷物感は満点である。シャキッとしない映り故、遂に見切りをつけたNikkor<AF 24-120/3.5-5.6 D>が懐かしく思われるほどだ。
それでもこれを持ち出さないと気が済まないのは、非常にシャープできりっとした画が切り取れることに他ならない。
解像度の高さは前述のNikkorとは比較にならないレベルにあり、レタッチへの耐性も極めて優秀である。
但、最テレ側にズーミングすると、たまにオートフォーカスが効かなくなるというトラブルがやや悔しいところ。
これからも末永く使っていきたいので、一度SIGMAのサービスへ出してみてもいいかなと考えている。

井の頭公園の紅葉はそろそろピークを迎える。
さっそく出掛けてみると、11月も半ばを過ぎたというのに異常とさえ感じる暖かさ。池を半周した辺りから一枚また一枚と上着を脱いでいく。カメラバッグはダウンベストと長袖Tシャツで満杯だ。
それにしてもコロナ禍が再拡大しているという状況下にもかかわらず、この公園には人を呼び寄せる力があるようだ。一時かなり目についた外国人こそ数は減ったものの、見渡せば老若男女問わず多くの人が訪れていて、公園内は活況溢れんばかり。殆どの人々はしっかりマスクを着けているが、その笑顔に危機感は感じられない。
但、コロナの猛威があろうと季節は間違いなく巡ってくるわけで、公園を散歩しながらこの鮮やかな秋色を愛でれば、誰だって心和むこと請け合いである。

紅葉・瑞牆の森

10月30日(金)。紅葉と渓流のコラボを見られればラッキーと、紅葉真っ盛りである、山梨は「瑞牆の森」へ行ってきた。 撮影の中心は本谷川沿いだ。
陽が昇り過ぎると撮影に難しさが出てくるので、今回も自宅を深夜3時過ぎに出発し、5時には双葉SAで朝飯を食するという超早出パターンを取った。

夜明け前の双葉SAは、さすがに凛とした空気感に包まれていたが、身震いするほどの寒さは感じられなかった。ところが中央道を降りてみずがき湖を過ぎる頃、POLOの外気温表示が急速に下がり始め、信州峠の手前からクリスタルラインに入ると、スリップ警告灯が点灯し、気温が4℃以下に落ちたことを示した。
フリースにウィンドブレーカーだけではちょっと不安になってきたが、撮影に集中すれば一時でも寒さは忘れた。但、過敏性鼻炎の鼻だけは正直で、津々とくる底冷えに鼻水が溢れ出して止まらない。汚い話だが、専用の柔らかい“鼻かみタオル”が15分もしないうちにしっとりと湿ってきた。

この界隈、紅葉の状態はややピークを過ぎた感じであり、黄色も赤も葉の荒れが出ている。特に赤系は顕著だ。元々黄色系が多くを占める瑞牆の森なので、きれいな赤を入れての構図を得ようとなると、探し出すのは一苦労。
ポイント探しは脇見運転の連続になり、目と神経はかなり疲れる。おまけに瑞牆山荘には登山者の為の無料駐車場があるので、これだけ早い時間帯でも結構な数の車が国道から入ってきて一瞬たりとも気が抜けない。

川沿いに格好の枝葉が目に留まれば、先ずは車を安全な場所に停めて川へと降りる。やれそうなポイントだったら車へ戻って機材一式を持ちだし、再び川へとんぼ返り。今回はこれの繰り返しに終始した。
因みに、本谷川沿いの道は舗装路だが、所々荒れていて運転には注意が必要だ。但、幅員は全体的に広く、長い時間でなければ路駐に問題はないだろう。この条件を利用して、川へ降りること7回。溢れる鼻水に負けじと頑張った。

撮影は楽しく進んでいったが、実は今回、準備不足によるアクシデントがあったのだ。

― あれ? どうした??

いきなりシャッターが下りなくなり、ファインダーの中でFul表示が点灯したのは、まだ二つ目の撮影ポイントでのことだった。

― えっえっえっ?

焦っていたので、電源のオンオフを繰り返したり、はたまたレンズをはずしてまた組み込んだりと、閃くままに原因を探ってみた。ところが落ち着いて考えれば“Ful”は“フル”のことであり、SDに空きがなくなったという至極単純なこと。

― でもまだ撮り始めたばかりだぜ?

嫌な予感がして再生ボタンを押してみると、先月の西伊豆での撮影データがびっしりと残っているではないか。
しかもこれまでにそこそこの枚数を撮影しているので、当然フォーマットはできない。となると一枚一枚削除して空き領域を作らなければならないということになる。
これはかなり手間のかかる作業だが、やらなければ撮影ができないので、一旦POLOに戻り、休憩を兼ねてこの単純作業に集中した。

間抜けなトラブルはあったものの、紅葉撮りとして瑞垣の森へ来たことは正解だった。
深い森と清流が織りなす大自然のアミューズメントパークは、写真好きに対して様々な心躍る被写体を与えてくれ、イマジネーションの広がりは正に無限大と言っていいものだった。
ガッチリとカメラを構え、納得できる画を模索する行為こそ、写道楽の真骨頂なのだ。

逗子海岸・なぎさ橋珈琲店

「リーちゃん、海へ連れてってみない」

車が苦手だったロックは一度も遠出をしたことがなかった。それとは対照的にリチャードは車が好きだ。動き出すときょろきょろしていかにも興味津々といった表情をする。

「だったら逗子へ行こうよ。元デニーズ逗子店だったところ」
「そういえばあったね、逗子店って。今は何になってるの」
「なぎさ珈琲逗子店。すぐ脇が海岸だから散歩するにはちょうどいいよ」
「リーちゃん、海初めてだから喜ぶかもね」

滑るように走る横横。何を想うリチャードは、ひたすら遠く前方を凝視している。
1時間半のドライブだったが、酔うことも、粗相もなく、実にいい子なのだ。

「あら~、満車みたいよ」

時刻は12時10分前。人気の店とは聞いていたが、既に入り口はウェイティング客で溢れかえっていた。
ここはとにかく立地が抜群なのだ。田越川が逗子海岸へと注ぐ渚に建てられた南仏ムード満点の店舗には、もちろんガーデン席が設けられ、潮風を感じながらの食事が楽しめる。

「気持ちいいね」
「これで富士山が見えたらいうことないな」

夫婦はまったりモードに入っていたが、テーブルに繋がれたリチャードは落ち着きがない。ロックもそうだったが、おとなしくじっとしていることは、あまり得意ではないようだ。
10分と待たないうちに「なぎさバーガー」と「ロコモコプレート」が運ばれたきた。リチャードがしきりにおねだりをしてきたので、特製バンズをちぎってあげると、もっともっととうるさい。しかしこれは納得。久々にバランスの取れた美味しいハンバーガーなのだ。特にたっぷりと盛りつけたフレンチフライがサクサクッという触感で、いくらでも口へ運べてしまう。
眼前に広がる海にはウィンドサーフィンやSUPがたくさん出ていて、湘南海岸とは異なる穏やかで静かな逗子を演出していた。

食事の後はさっそく海岸へと繰り出した。
砂浜の感覚が気に入ったのか、リチャードは積極的に歩きまわる。それではと、波打ち際まで引っ張っていくと、さすがにいつもの及び腰が出た。波の音が嫌なのだ。でも、初めてのものへの興味は少なからずありと見た。
抜けるような青空と、ほど良い海風が散歩を特上の時間に変えてくれ、気が付けば1時間が過ぎようとしていた。